「感謝」を意識すると“ポジティブ脳”に 人生を劇的に変える秘訣とは?
- オトナンサー |
仕事や私生活がうまくいかず、日々悩んでいる人は多いと思います。今回は、精神科医の樺沢紫苑さんと感謝研究家として活動する田代政貴さんの共著「感謝脳」(樺沢紫苑、田代政貴/飛鳥新社)の中から、感謝が心と体にもたらす効果について解説します。この本には、人生を好転させる上で大切なヒントが詰まっています。
睡眠とストレスを改善
人生をより良くするためには、健康を維持することが不可欠です。樺沢さんは、健康になるためには「睡眠、運動、朝散歩」の3つがポイントだと言い、感謝の気持ちを持つことで睡眠の質が改善すると主張します。
「3つの中で、最も重要な健康習慣が『睡眠』です。感謝の気持ちは、睡眠の質、時間、寝付きなど睡眠を全般的に改善します。英国マンチェスター大学の研究によると、感謝の気持ちを抱きやすい人ほど、主観的な睡眠の質(ぐっすり眠れたという感覚)が良く、寝付きが良く、睡眠時間が長く、日中の眠気やパフォーマンスの低下が少ないことが分かりました」(樺沢さん)
「感謝によって、睡眠前のポジティブな認知が増え、ネガティブな認知が減ることも観察されました。寝る前に『不安』や『心配』などのネガティブな感情が強いと、寝付きが悪くなります。寝る前の不安で脳が過剰に興奮し、交感神経(昼の神経)が優位になるからです。感謝の気持ちはリラックスをもたらすため、睡眠の改善に役立ちます」(同)
さらに、ロンドン大学の研究によると、2週間の感謝日記を書くことで、ポジティブ感情の増加と、睡眠の質の改善が相関して見られたそうです。
「1日1回、感謝の課題を記録してもらう。感謝のジャーナリングを1週間実践したところ、睡眠が改善するとともに、他者への寛容度が増し、経験への満足度が高まり、人生の問題をひとつ以上手放すことができたのです。質の良い十分な時間の睡眠は、当然ながらメンタル疾患、身体疾患の予防や、回復に大いに役立ちます」(樺沢さん)
「香港教育大学による、医療従事者を対象とした研究では、感謝日記を2回、4週間書いたグループでは、ストレスとうつ症状の改善が認められました。アイルランド国立大学コーク校の女性を対象とした研究では、感謝の介入(感謝の日記と感謝の振り返り)を3週間行ったところ、ストレスとうつ症状の改善が認められ、幸福度も高まりました」(同)
自己肯定感を高める
樺沢さんは、感謝を意識することで、脳がポジティブに変化していくと指摘します。日々、感謝の気持ちを持つことで、周囲の人の支えや良い面に気付きやすくなるのです。これが「感謝脳」と呼ばれる状態です。感謝脳になると、困難に直面しても「経験から学ぶことがある」と捉えられるようになり、自然と前向きな思考が増えていきます。
筆者は、この「感謝脳」の状態は「自己肯定感」と密接に関連していると理解しました。自己肯定感とは、自分の現在の状態をそのまま受け入れ、肯定できる感情のことです。周囲の人への感謝を意識することで周囲の人の支援や自分の成長に気付きやすくなるため、自己肯定感が育まれるようになります。
反対に、自己肯定感が低い状態では、他人と自分を比較する傾向が強くなります。劣等感が強くなり、「自分はダメだ」と卑下しがちです。そのため、ネガティブな感情を持ちやすくなり、「毎日の生活が閉塞(へいそく)感に包まれている」「何をするにも気乗りしない」といった状態が続いてしまいます。
「ありのまま」を取り入れることができれば、周囲の人からどう見られているか、どう思われるかを判断する必要はなくなります。大切なことは「自分のあり方」であり、自分の価値は他人の評価によって規定されるものではないのを理解することです。他人の評価を気にせず、自分の選択を大切にすることで、自己肯定感は徐々に高まっていきます。
コラムニスト、著述家 尾藤克之
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