実はワクチンなし…「リンゴ病」流行　妊婦が感染すると“流産”の恐れ　特徴的な症状とは？

　主に子どもがかかる感染症の一つである「リンゴ病」が流行しています。そもそも、リンゴ病とはどのような病気なのでしょうか。大人が感染した場合、どのような危険性があるのでしょうか。リンゴ病の特徴的な症状や予防法などについて、豊洲内科・糖尿病／形成・美容外科クリニック（東京都江東区）院長で認定内科医、糖尿病専門医の澤口達也さんに聞きました。

子どもが感染すると両頬が赤くなる

Q.そもそも、リンゴ病とはどのような病気なのでしょうか。感染経路や主な症状、再感染の可能性などについて、教えてください。

澤口さん「リンゴ病の正式名は『伝染性紅斑』であり、これは、『ヒトパルボウイルスB19』によって引き起こされる発疹性の感染症です。

感染すると微熱やせき、たん、咽頭痛、倦怠（けんたい）感などの感冒様症状が現れた後、両頬がリンゴのように真っ赤になります。これが『リンゴ病』といわれている理由です。両頬が真っ赤になった後は腕や脚にレース状の薄い発疹が現れます。現時点でワクチンや特効薬はなく、対症療法で経過を見ます。

ウイルスはせきやくしゃみの飛沫（ひまつ）感染、感染者との接触感染でうつり、潜伏期は10～20日ほどとされています。発疹が出る前の感冒様症状の時期にウイルス量が最も多く、発疹が出るころには感染力はほぼ失われます。

ヒトパルボウイルスB19に感染すると体内に抗体が長期にわたって残り、通常は免疫が生涯持続するため、再感染することはないとされています。これを『終生免疫』と言います。ただし、リンゴ病にかかると、数週間以内に再びリンゴ病の症状が出ることがあるため、注意が必要です。

主に5～9歳の子どもが感染しますが、0～4歳の子どもの感染も多く報告されています。また、子どもの頃にかかったことがない人が大人になって感染することもあります」

Q.2025年はリンゴ病が流行しています。どのような要因が考えられるのでしょうか。

澤口さん「流行の背景として、次の3つの要因が考えられます」

（1）4～5年周期で流行
リンゴ病は過去も4～5年周期で大流行を繰り返しており、2025年はその周期に当たります。

（2）“免疫ギャップ”
コロナ禍のマスク着用、行動制限で他の呼吸器感染症と同様、ヒトパルボウイルスB19への自然感染機会が減少し、免疫を持たない子どもが増えている可能性があります。

（3）季節、行事
例年1～7月に症例が増える上、春の進学や進級、大型連休後の集団生活の再開がウイルス拡散を促したとみられます。

Q.子どもの頃にリンゴ病にかかったことがない人が大人になってから感染した場合、どのような症状が出るのでしょうか。発症のリスクも含めて、教えてください。

澤口さん「大人が感染すると頬の紅斑は目立たず、先述の特徴的な発疹が出るケースは少ないです。主に発熱や強い倦怠感のほか、手首や膝などの関節痛が出るため、風邪やリウマチと間違えられることがあります。

妊婦が感染すると、20％の確率で胎児に感染するほか、約10％の確率で胎児の全身にむくみが生じる『胎児水腫』のほか、流産や死産を引き起こす恐れがあるため、妊娠中は特に感染に注意が必要です。

また、溶血性貧血の人や免疫不全の人が感染すると、赤血球をつくる骨髄の働きが一時的に抑制され、重い貧血になる『一過性骨髄無形成発作』や慢性貧血の悪化を引き起こすことがあります」

Q.リンゴ病の感染を防ぐにはどのような対策が有効なのでしょうか。

澤口さん「先述のように、リンゴ病にはワクチンや特効薬がないため、手洗いや手指の消毒、せきエチケットといった基本的な対策の徹底が有効です。ウイルスは発疹が出る前の感冒様症状の時期に多く排出されるため、症状がある場合はマスクの着用と外出自粛が望ましいです。また、家庭内では十分な換気と適度な湿度を保ち、家族でタオルや食器を共用しないようにしてください。

発疹が出た後は感染力がほぼ消失するため、登園、登校停止の必要は原則としてありません。妊婦や基礎疾患のある人は流行期に乳幼児との濃厚接触を避け、抗体保有の有無を医療機関で確認すると安心です」

オトナンサー編集部

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