度胸試しなのか…? 世界でやってたロシア戦闘機の危険飛行 根底には「ならでは」の文化?
- 乗りものニュース |
1年に何百回と行われる航空自衛隊のスクランブル(緊急発進)。他国も同じように行っていますが、ロシア軍機が実施しているスクランブルはかなり危なっかしいものです。なぜ、ロシア軍機は危険な飛び方をするのでしょうか。
アメリカ機を直接落としたことも
近年、自衛隊機によるスクランブル(緊急発進)がたびたび報道されるようになっています。直近で最も多かったのは2021年度の1004回、2023年度も669回行われています。なお、2023年度を1日当たりで換算してみると、1.8回以上行われている計算になります。
航空自衛隊のF-15J「イーグル」戦闘機。画像はイメージ(画像:航空自衛隊)。
スクランブルとは、防空識別圏に進入した所属不明機を監視するなどといった理由から即時に戦闘機が出撃することであり、航空自衛隊戦闘機がこのような任務を遂行することで、日本の空の安全が守られているのです。
では、他国においても同様のスクランブル発進は行われているのでしょうか。当然ながら、日本の周辺国を含む多くの国が、自国の領空を守るために戦闘機による監視や警告を行っています。例えばロシアの戦闘機もまた、他国の軍用機や民間機に対するスクランブル発進を繰り返し行っており、このような対応は国際的にも一般的な軍事行動の一環と認識されています。
しかし、ロシアによるスクランブル発進は、他国の軍用機に対して衝突寸前まで接近し、妨害行動を行うことがあり、その方法が非常に乱暴であるという問題が指摘されています。2023年3月にはアメリカ軍のMQ-9「リーパー」無人機に対してロシア空軍のSu-27戦闘機が衝突し前者が墜落する事故も発生しました。MQ-9は機動性に欠けるプロペラ偵察機ですからロシア側が意図的に接近したことは間違いないでしょう。
最近においても2024年9月23日にアラスカの防空識別圏に接近したロシア爆撃機を護衛するSu-35戦闘機が、スクランブル発進したアメリカ空軍のF-16に対して異常接近。アメリカ側はその映像を公開するとともに、プロ意識に欠けた行為として非難しました。
このような行為は空の上だけでなく海上でも行われているようで、2016年4月にはロシア空軍のSu-24戦闘機がアメリカ海軍の駆逐艦「ドナルド・クック」に10回以上、異常接近を繰り返したとか。これもまた、戦闘機が超低空飛行で軍艦をかすめるように飛行したとして非難されています。
危険な飛行やめればメリット大!
これらはロシア空軍による危険な行動の一部で、実際はさらに多数存在することは間違いないでしょう。このようなロシアの戦闘機による危険な飛行は、意図的に度胸試しを行っているのではないかという疑念をも抱いてしまいます。「度胸試し」とは、極限状態で危険な行動をあえて試みることで、自分の勇気や技術を証明しようとする行為です。これがロシア国内で、もっといえばロシア軍内部で文化として根付いている可能性があるのです。
2023年度の空自機によるスクランブルの対象となったロシア機・中国機の飛行パターン例(画像:統合幕僚監部)。
ロシア空軍において度胸試しの文化が存在するとの見方は、その背景にある訓練や教育方法、さらには組織全体の意識に起因していると考えられます。危険を顧みずに接近飛行を行うことで、自らの勇気を示し、さらには同僚や上官からの評価を得ようとする意識が働くこともあるでしょう。
しかし、このような行動は極めてリスクが高く、万一にも衝突事故が発生すれば、その被害は甚大です。実際に墜落した「リーパー」は無人機であるからまだしも、自身さえ墜落するリスクを負うことは明白です。ロシア軍ではなく中国の事例ではありますが、2001年4月1日にはJ-8II戦闘機がアメリカ軍のEP-3偵察機に危険な接近飛行を行い衝突。J-8IIは墜落しパイロットは殉職、EP-3は不時着するという事故も発生しています。
ロシア戦闘機による度胸試しのような危険な飛行は、その背景にある安全への意識の低さから発生している可能性があります。戦闘機に限らず航空機の運航は高度なプロフェッショナリズムが要求されます。このような考え方を「エアマンシップ」と呼びます。各国は自国のパイロットに対して厳格な訓練と教育を施し、手順を順守させ、安全な飛行を徹底させる必要があります。
ロシアもまた、エアマンシップの観点から、自己の行動を見直す必要があると言えるでしょう。それは、外交上の問題や安全だけではなく、練度を高めるという点にも直結することから、巡り巡って最終的には自分たちの利益にもつながるはずです。
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