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撃った時点で世界が終わるかも!? 潜水艦から発射可能な“恐怖のミサイル”開発から70年 いまだに脅威な理由とは

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垂直発射型のSLBMの開発が始まって70年…

 アメリカの防衛企業ロッキード・マーチンは2025年12月7日、原子力潜水艦用艦隊弾道ミサイル(FBM)「ポラリス」の開発支援を始めてから70年が経過したと発表しました。FBMという呼称は馴染みがないかもしれませんが、2025年現在、この種のミサイルは報道機関などで一般に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と呼ばれています。

Large figure1 gallery13ジョージ・ワシントン級原子力潜水艦「ジョージ・ワシントン」(画像:アメリカ海軍)

 潜水艦が弾道ミサイルを搭載するようになったのは1950年代後半で、最初の例は旧ソビエト連邦がズールー級潜水艦の一部を改造し、地上発射型弾道ミサイルR-11(スカッド)の派生型を収容するランチャーを設置したことに始まります。現在のように水中から垂直にミサイルを発射できる方式が確立したのは、約65年前の1960年7月、ジョージ・ワシントン級原子力潜水艦「ジョージ・ワシントン」が「ポラリス」の発射に成功してからです。SLBMの登場以降、ミサイル発射能力を持つ潜水艦は、あらゆる兵器の中でも最も脅威的な存在となりました。それはなぜでしょうか。

 第一に、SLBMは水中から発射でき、核弾頭を搭載し得る戦略兵器である点が極めて重要です。核爆弾や地上発射型の弾道ミサイル以上の脅威となり得ます。その理由は、今日の探知技術をもってしても、海中に潜む潜水艦を発見することが非常に困難なためです。

 1隻だけであれば偶然発見される可能性もありますが、数隻から数十隻が広範囲に分散して行動した場合、そのすべてを漏れなく撃沈することは、現代の兵器をもってしてもほぼ不可能といえるでしょう。

 さらに問題となるのが射程です。2025年現在、SLBMと呼ばれるミサイルは射程600km以上のものを指します。アメリカやイギリスの潜水艦に搭載されている「トライデントII」は射程が約1万2000kmに達し、アメリカ沿岸付近からでもロシアや中国全域など、世界の大半を攻撃可能です。つまり、SLBMを発射するために攻撃対象国の近海へ接近する必要はありません。

 思いもよらない方向から突如として発射され、相手国の地上基地や都市部を攻撃することができます。しかも、同じく長射程を持つ大陸間弾道ミサイル(ICBM)とは異なり、SLBMは「どこから撃たれるかわからない」という特有の恐怖を伴っています。

核弾頭の場合は一発でも撃ち漏らしたら壊滅的な被害となる…

 SLBMという長射程の核兵器と原子力潜水艦が組み合わさることで、破滅的な威力を持つミサイルを搭載したまま、燃料補給なしに長期間水中で活動できる体制が確立されました。前述のとおり潜水艦の発見は困難ですが、「発射された後であれば迎撃ミサイルで撃ち落とせるのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、それも実際には極めて困難です。

Large figure2 gallery13アメリカのオハイオ級原子力潜水艦がミサイルハッチを開いた状態(画像:アメリカ海軍)

 例えば「トライデントII」の場合、ミサイルは時速約2万1600km(約マッハ17.6)という桁外れの速度で飛翔します。さらに、1発のSLBMには最大14発の弾頭を搭載することができ(現在、アメリカ海軍では最大8発に制限)、それらすべてを核弾頭にすることも可能です。

 多弾頭(MIRV)型の場合、ミサイルは大気圏外に達した後、わずかに速度や方向を変えながら弾頭を順次切り離し、それぞれが独立して大気圏に再突入します。そのため迎撃がより困難となるだけでなく、広範囲に被害を与えることができます。こうしたミサイルが複数の潜水艦から一斉に発射された場合、すべてを撃ち落とすことはもはや不可能で、甚大な被害が避けられない状況に陥ります。

 もちろん、他のSLBM保有国が必ずしも「トライデントII」と同等の性能を持つミサイルを保有しているわけではありません。しかし、SLBMを備えた潜水艦が生存している限り、たとえ核戦争で世界各国が壊滅的な状態に陥ったとしても、潜水艦の位置が発見されないかぎり、無傷で報復攻撃を実行できます。常に報復可能という性質を持つこと自体が、大きな脅威となっているのです。

 2025年現在、SLBMを搭載可能な原子力潜水艦を運用している国は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、インドの6か国です。加えて、通常動力型の潜水艦でSLBM発射能力を持つ国として、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)があり、通常弾頭のみの発射能力がある潜水艦を韓国が保有しています。ただ幸いにもこの65年間、一度たりとも核弾頭を搭載したSLBMが都市や戦略目標に向かって発射されたことはありません。

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