「痩せる漢方」で下痢や腹痛に? SNSの口コミで選ぶ人が陥る“危険な悪循環”とは【薬剤師が解説】
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漢方薬の材料
近年、自然由来のもので安全という理由で漢方を手に取る人が増えています。では、漢方薬の服用時にはどのようなことに注意すべきなのでしょうか。SNSの口コミで選んで失敗する具体例や、自分に合うか見極めるポイントなども含めて、薬剤師の真部眞澄さんに聞きました。
薬の成分の重複に注意
Q.「漢方は自然由来だから副作用がない」と信じている人が多いですが、危険な使い方はありますか。
真部さん「近年、冷え性やストレス、肌荒れ、生理痛の悩みなどが理由で、安心だからと漢方を手に取る人が増えています。しかし、自然由来だから副作用がゼロという認識はとても危険な誤解です。漢方薬も薬である以上、体質に合わなかったり、飲み方を間違えて副作用が起きたりすることがあります。特に注意が必要なケースを3つ挙げさせていただきます」
■甘草
まず、甘草という抗炎症やせき止め、胃の不調などによく効く漢方の成分(生薬)についてですが、漢方薬の約7割に含まれているため、重複や併用薬による偽アルドステロン症に注意が必要です。偽アルドステロン症とは血圧が上がったり、体がひどくむくんだり、手足の力が入らなくなったりする重篤な副作用を指します。
甘草は胃腸薬や市販の風邪薬に含まれていることがあるため、漢方の成分が入っていると思わずにそれらと漢方薬を併用してしまうと、成分が重複します。また、処方された一部の利尿薬やグリチルリチン酸などを含む製剤も、甘草が含まれる漢方薬を一緒に飲むことで偽アルドステロン症になる可能性が高まるでしょう。漢方の服用時には十分に気を付けてください。
■麻黄
次に、麻黄に注意していただきたいです。麻黄は葛根湯などに含まれており、交感神経を刺激するエフェドリンが含まれていますが、エフェドリンはせき止めや鼻炎薬にも含まれているため、両方飲むとエフェドリンが重複して、心臓への負担が大きくなってしまいます。動悸(どうき)や不眠、血圧上昇、イライラ感などが強く出ることがあり、心臓の弱い人や高血圧の人は特に気を付けていただきたい組み合わせです。
最後に、西洋薬と漢方薬の意外な飲み合わせに注意してください。小柴胡湯という気管支炎などに使われる漢方薬と、インターフェロンという肝炎の治療薬を併用したことで、間質性肺炎という重い肺炎になった事例があります。
添付文書を読んでも併用薬については分からないため、すでに飲んでいる薬がある人は漢方薬を自己判断で併用せず、医師や薬剤師に併用しても問題ないか確認しましょう。
漢方薬選びの失敗例とは?
Q.コンビニやドラッグストアで手軽に買える漢方薬、SNSの口コミだけで選んで失敗する典型例を教えてください。
真部さん「SNSで評判の漢方薬を試したら逆に体調が悪くなった、全然効かなかったという話をよく聞きますが、漢方は体質に合わせることが重要で、効き目の感じ方や副作用にも個人差があります。
漢方では体力があって声が大きく、便秘しやすい実証というタイプと、疲れやすくて胃腸が弱く、冷えやすい虚証というタイプで分けられがちですが、SNSの口コミは効いたというだけでその人の体質までは書かれていないことが多いです。体質と逆の薬を選んでしまうことが大きな失敗の原因となるので、SNSの口コミで良いと思っても、購入前にパッケージをよく読んでください。
なお、20代がはまりやすい漢方薬の典型的な失敗例は3つあります。まず、防風通聖散です。『おなかの脂肪が落ちる』という痩せる漢方として拡散されていますが、選び方を間違えると下痢や腹痛を引き起こします。
この薬は体内の熱を逃がして排せつを促す強い薬で、体力があって便秘しやすい固太りタイプの人に向いているのですが、胃腸が弱く、冷え性で水太りタイプの人が服用してしまうのが失敗例です。激しい腹痛や下痢が起こって体力の消耗を招き、脂肪が燃えるどころか代謝が落ちて逆効果になってしまいます。体重が減ったと思って喜んでいたら脱水だったというケースもあるので注意しましょう。
次に、五苓散(ごれいさん)です。飲み会後のむくみ解消や二日酔いに効き、さらに雨の日の頭痛といった気象病の症状にも効く人気の漢方です。五苓散は体内の水分の巡りを整える薬なので、喉の渇きのないタイプのむくみや肩こりからくる頭痛など、原因が水ではない頭痛には効果が期待できません。血行不良やストレスなど、頭痛の原因が違うのに、効かないまま飲み続けて症状を長引かせてしまうのが典型的な失敗例です。
漢方はすぐ効かないもの、長く飲めば効くだろうと思って飲み続けてしまう人がいますが、本来であれば別の漢方の方が適している可能性を見落とさないように注意してください。
最後に、加味逍遙散(かみしょうようさん)です。自律神経を整えてのぼせを抑える薬で、メンタルの安定や月経前症候群(PMS)に効き目があり、更年期にもよく使われる婦人科三大処方の一つとなっています。
しかし、人によっては成分のサンシシなどで胃腸に負担がかかり、胃が重くなったり食欲がなくなったりすることがあるかもしれません。それでもこれを飲めば穏やかになれると思って飲み続けることで胃腸が弱った結果、血が不足して余計にイライラする悪循環に陥ってしまうのが失敗例です。
また、サンシシには長期服用で腸間膜静脈硬化症という重大な副作用も報告されています。合わないものを自分の判断で飲み続けることは大変危険です。
ちなみに、医師が婦人科三大処方の漢方薬を選ぶ際には、体力がなくて色白の人や、中肉中背の体格で不安感や更年期症状がある人、がっちりタイプでホットフラッシュやイライラがある人など、見た目も加味して処方します。漢方薬を選ぶ際には体質と症状で選ぶことが重要ということです。『みんなに効くから自分に効くとは限らない』ことを踏まえた上で、自分に合った漢方を選んでください」
漢方薬の服用中止を判断する目安は?
Q.飲み始めてから「自分に合っている」か「やめるべき」かを判断する期間やサインはありますか。
真部さん「体質に合わない、アレルギー反応の可能性があるなどで、服用を即中止すべきサインは数日で分かります。まず、激しい下痢や腹痛、胃もたれ、食欲不振といった消化器系の異変が起きた場合です。
例えば、防風通聖散で下痢が止まらなくなった場合は薬が強過ぎます。次に、皮膚にかゆみが出たり、発疹やじんましんが出た場合です。他にも階段で息切れや動悸がしたり、のぼせがあったり、イライラがひどくなったり、まぶたや手足がむくんだり、尿の量が減ったりした場合は服用を中止してください。
よく漢方は最初に不調が起きてからだんだん落ち着いて、慣れてきて良くなっていくものだと勘違いする人がいらっしゃいます。しかし、現代医学ではそれは副作用として扱いますので、合わないと思ったら無理に続けずに中止して、他の漢方に変えてください。
一方で合っていると判断できるのは、数日から2週間くらい経った頃です。漢方には即効性があるものと体質改善を狙うものがあり、判断時期が異なります。即効性がある漢方は、風邪や頭痛、こむら返りなどに効くもので、判断基準は1回から3日間です。飲んで数時間から1日以内に症状が和らぐ感覚が出てきます。
例えば、葛根湯を飲んで体が温まって汗が出たら、効いているから数日続けようと思うでしょう。反対に、風邪がひどくて葛根湯を飲んでも効かないと感じた時は飲むのを中止してください。また、足のつりによく効く芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)も即効性があります。足がつったときには即効性が重要ですし、飲んで効かなければ飲み続ける必要はありません。
体質改善を狙うものだと冷え性や肌荒れ、生理不順に効くものがあります。劇的な変化というよりも、朝の目覚めの良さやお通じのスムーズさ、イライラしにくいといった主目的以外の全体の調子も小さく底上げする効果があるのが特徴です。
2週間から1カ月くらい続けて症状が緩和したかを見ますが、1カ月飲んで全く変化を感じない場合はやめるサインだと思います。漢方は組み合わせや生薬のバランスで劇的に効果が変わるため、変化がない場合は医師や薬剤師に相談して処方を変えてもらいましょう」
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漢方薬は自然由来とはいえど、薬である以上副作用がゼロではないと分かりました。漢方薬は自分の体質に合わせて選ぶのが重要なので、SNSの口コミだけで安易に服用しないようにしましょう。
オトナンサー編集部
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