「名前通りマジで“平成”極めちゃった」な遊覧船、廃止なぜ? 「需要ない」とは全く異なる“切実な事情”
- 乗りものニュース |

下北半島の遊覧船「夢の平成号」の運航終了が迫っています。どのような船で、なぜ廃止となるのでしょうか。今回は実際に乗ってみました。
もうすぐ廃止の下北半島の遊覧船
「夢の平成号」は、下北半島の西南端にあるむつ市脇野沢から運行されている遊覧船です。脇野沢港から出発し、陸奥湾から平舘海峡に出て、佐井村の名勝・天然記念物に指定された仏ケ浦までのコースを往復。4月から10月までの期間中は、1日2便が運行され、下北半島の雄大な地形と自然を海の上から見学することができます。
仏ケ浦の船着き場に停泊する「夢の平成号」(布留川 司撮影)。
しかし、この「夢の平成号」は2025年の10月13日をもって廃止が決まっており、1989年の運行開始から36年目にしてその歴史を閉じようとしています。どういった理由からなのでしょうか。
筆者は今年の夏にこの遊覧船に乗ってみました。
船上から見る下北半島の雄大な地形と自然は素晴らしいものでした。脇野沢から仏ケ浦までの約20kmの海岸線は焼山崎地区と呼ばれ、海岸線は最大落差500mもある断崖絶壁になっています。人の気配や人工物が一切無い雄大なその景色は、日本国内では貴重な大自然の姿といえるでしょう。
45分ほど乗って到着する中間地点の仏ケ浦は、海食によって不思議な形の凝灰岩海が並ぶ場所で、奇岩とも言われるその奇妙な光景は名勝、天然記念物、日本の地質百選にそれぞれ指定された場所です。下北半島の観光名所として有名で、車でも訪れることはできますが、駐車場から海岸までは百段以上の階段を上り下りする必要があり、遊覧船での来訪がもっとも手軽だといえます。
今回乗船したのは「仏ケ浦コース」でしたが、それ以外にも、脇野沢港近隣の貝崎周遊・鯛島上陸コースを1日1便で行い、4月から6月までは脇野沢港周辺に来るイルカを観察する、イルカウォッチングクルーズも行っていました。
内部はサロンバス風のソファー席も 船も形式も大満足なクルーズ
「夢の平成号」はその名前のとおり平成に作られており、遊覧船として就航したのは今から36年前の1989年のことです。船やその内装にはややくたびれた印象がありますが、逆にそれが味となり、照明やシートのカバーのデザインに目が引かれます。座席も一般的な一人用シートの他に、後方にはサロンバス風のテーブル付きのソファー席がありました。
ただ、設計が古いゆえに冷房施設がなく、航行中の船内は意外と気温が高くて蒸す感じでした。熱中症対策のためか、各座席には団扇が置かれ、乗船前には各人にオリジナルラベルのペットボトル水も配られます。
クルーズの座席で筆者がオススメするのは、船の後方にある開放デッキで、ここには若干ですがシートもあります。船内のように蒸すことはありませんが、逆に吹き曝し状態のために常に風が当たり、場所によっては水飛沫が軽く掛かることもありました。
乗り心地については「結構揺れる」という感じで、これは「夢の平成号」が遊覧船として比較的小さいのと、平舘海峡の海が天候によっては荒れるからのようです。船の揺れを「楽しい」か「不快」と受け取るのは人それぞれですが、久しぶりに観光船に乗った筆者は、退屈せずにそれを楽しむことができました。
「夢の平成号」はクラシックな観光船と、下北半島の大自然を同時に楽しむことができ、遊覧船として非常に楽しめるものだといえるでしょう。しかし、そんな魅力的な船がなぜ廃止になるのでしょうか。
廃止の理由は北海道のあの事故
廃止の理由のひとつは、2022年に北海道で発生した知床遊覧船沈没事故です。
脇野沢港に停泊中の「夢の平成号」。乗船の際には左端に映るタラップを利用した(布留川 司撮影)。
この事故では、運行会社による船舶設備の不備と、安全を軽視した運行体制によって乗客乗員計26名が死亡・行方不明となりました。この事件をきっかけに国土交通省は「旅客船の総合的な安全・安心対策」を実施。そこでは運行体制の見直しだけでなく、運行される船舶に無線設備や救命いかだなど装備品の搭載が義務付けられました。
「夢の平成号」は古い船ですが、定期メンテナンスはしっかりと行われ、最近もエンジンを新品に交換したばかりだといいます。しかし、古い設計の船体に新しい法令に基づいた救命関連設備を搭載するのは簡単ではなく、船体の小ささ故に設置には船体に開口部を作るなどして大規模な改修工事が必要となり、船の老朽化や採算性を考えるとその対応は難しいそうです。
また、新しい安全対策は運行面でも求められています。事故後に決められた新しい運行規則には航路の気象条件が厳密に決まっており、「夢の平成号」では風速が毎秒8m以上、波高が0.8mを超えると運行停止となります。内海の陸奥湾の海面は穏やかですが、津軽海峡に隣接した平舘海峡は波風が比較的高く、天候の変化も激しいため、この運行基準を満たさずに運休となることが多いそうです。
昨年の実績では、約6か月間の期間中で4割程度が運休。今回の筆者の場合も、最初の3日間は気象条件を理由に運休となり、4日目にしてようやくクルーズが実施され乗ることができました(運航判断は当日早朝に決められるため、電話で乗船券販売所である「むつ市脇野沢流通センター」に確認)。このような不安定な運行状況は、利用者数の減少と採算性に影響します。
新しい運行規則や規正対応、気象条件の影響を受けやすい運行状況とそれによる採算性の悪化。加えて船自体の老朽化と船員の高齢化の問題もあり、この「夢の平成号」は2025年の廃止が決定されました。
遊覧船の運航が見直されるきっかけとなった知床遊覧船沈没事故は、その被害と世間への影響を見れば、関連した法改正や規制強化は当然な流れだといえます。しかし、船や運航会社の規模によっては、新しい規制に対応が難しく、事業や船そのものを廃止する場合もあり、中小規模の船が現実的に対応できるような工夫も必要だったのかもしれません。
下北半島を訪れる機会がある方は、ぜひ「夢の平成号」に乗り納めしてみるのもいいかもしれません。
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