鉄道バスは「何人乗っていればエコ」なのか? “あなたが乗らなきゃ”CO2垂れ流し「国家目標」達成不可能という現実
- 乗りものニュース |

運輸部門のCO2排出削減、待ったなしの状況
世界的な地球温暖化対策の動きに対し、日本では2013年比で2030年に46%のCO2(二酸化炭素)排出削減、2050年にカーボンニュートラルの達成を目標としています。自動車や公共交通機関を含む運輸部門も例外ではなく、2030年には35%の排出削減、2050年のカーボンニュートラル達成のためにはCO2吸収分を差し引いても90%程度の排出削減が求められます。
運輸部門におけるCO2排出削減の目標達成には、「乗合」を推進する必要がある(画像:PIXTA)
運輸部門におけるCO2排出削減は2000年代においては非常に進んでいました。国土交通省の公表値によれば、2000年からの20年で30%のCO2排出削減が達成されています。輸送手段別の排出量を見ると自動車に由来する排出が8割以上を占め、この期間におけるハイブリッド車の普及などによる燃費改善が大きく寄与したと考えられます。
しかし、2020年に前年比で大きく減少したにも関わらず、2021年は一転して増加しています。
これは、コロナ禍により2020年は燃費改善に加えて、移動すること自体が抑制されたためです。その後の移動需要の回復に合わせて徐々に増加し、2023年になりようやく減少傾向に戻りました。この結果、このままの推移では2030年の削減目標や2050年のカーボンニュートラルの達成は困難な状況です。
どんなに燃費の良いクルマでも走行量が増えればその分CO2排出は増加します。運輸部門のCO2排出を削減するためには、極端に言えば移動そのものを止めればよいのですが、現代社会において移動することなく生活することは不可能です。そこで、現状の移動を維持しつつ運輸部門のカーボンニュートラルを達成するために様々な取り組みを組み合わせて行っていくことが重要です。
「クルマの乗り換えはあと2回」 車両の電動化だけでは不十分
目標達成に向けた取り組みとして、クルマ単体では、既存車両の燃費改善に加えて、これから導入される車両の「電動化」が進められています。しかし、走行時だけでなく、走行に使用する電力の発電時から評価するWell to Wheel(WtW)の指標を適用すると、車両の電動化だけで目標達成できるほどの削減量とはなりません。
また、一般的な乗り換え年数を考えると乗用車では8年から9年、貨物車では12年となり、2050年までの乗り換えの機会は、あと2回しかないことになります。
そこで必要となるのが、公共交通機関などを活用した「乗合」の推進です。
「乗らなきゃ」バスも環境にやさしくない
一般的に公共交通機関は環境にやさしい乗り物といわれています。しかし、車両1台単位で考えると鉄道やバスは乗用車より大きいため必要なエネルギーも大きくなります。乗用車との違いは、この大きな車両に多くの人が乗り合うため、一人あたりのCO2排出量が少なくなるところです。
同じく2023年の国土交通省の公表値を見ると、乗用車と比べてバスの一人当たりのCO2排出量は半分、鉄道では1/8程度であるとされています。
しかし、この効果は乗り合わなければ発揮されません。実際に、コロナ禍で輸送量が大きく落ち込んだ2020年では、逆転はしないものの削減率はバスでは17%、鉄道では78%となりました。
公共交通機関の利用が減少し、地方都市ではほとんど利用者のいないバスがあると、「空気を運んでいるようなものだ」と言われることがあります。そのような場合には、必ずしもバスは環境にやさしい乗り物とはいえなくなります。
それでは、実際にどれぐらい乗っていれば公共交通機関が環境にやさしい乗り物といえるか考えてみましょう。
結局「何人乗ればエコ」なのか?
現状の乗用車の燃費を燃料消費調査から推計すると10.8km/L程度となります。これに対してバスは3.1km/L程度です。バスは車格により大きく燃費が異なりますが、ここではその平均値を使用することにします。
電車も「空気輸送」では乗用車より燃費が悪い(画像:PIXTA)
同様に鉄道では、鉄道統計年報の運転用電力・燃料消費額表から推計すると電車は1両あたり0.4km/kWh、ディーゼル気動車1.5km/L程度となります。
これを燃料ごとに(ガソリン、軽油、電気)のWtWを踏まえて評価すると、乗用車に比べて、バスは4倍、電車は5倍、ディーゼル気動車は8倍のCO2排出量となります。
つまり、バスの場合は4人、電車・ディーゼル気動車はそれぞれ1両あたり5人、8人乗車していないと、一人当たりのCO2排出量は乗用車より悪くなることになります。
さらに、気を付けなければならないのは、バスや鉄道は利用者がいなくても走行しているというところです。バス停や駅で乗り降りがあるため、全ての利用者が終点まで乗り通すわけではありません。全線を通した平均的な乗車人数で考える必要があります。
このように、全ての車両を電動化しても目標は達成できず、公共交通機関も乗り合う人が少なければ逆効果となります。運輸部門のカーボンニュートラル達成のためにこれらを組み合わせて取り組んでいくことが大切です。
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