「乗客を下等とは何事か」で改称? 100年以上続く車両の「イロハ」 最新の新幹線は再び“三等級”に
- 乗りものニュース |

「上等・中等・下等」でスタート
日本の鉄道の歴史は1872(明治5)年に始まりましたが、この時、旅客車は「上等・中等・下等」の三等級制でスタートしました。これが今日のグリーン車・普通車になるまでの歴史を振り返ります。
1938(昭和13)年に製造された一等展望車のスイテ37040形(現・マイテ49形)客車(安藤昌季撮影)
鉄道における等級制の早い例として、1830年のリヴァプール・アンド・マンチェスター鉄道があります。一等は屋根と窓のある馬車に近い客車、二等は側面や屋根が簡素な開放式客車でした。同鉄道は1844年、新しい密閉客車を導入して新「二等」とし、従来の開放式客車を三等に格下げして三等級制としています。
日本では、新橋~横浜間が開業した当時の運賃は、下等37銭5厘、中等75銭、上等1円12銭5厘。つまり「下等1、中等2、上等3」とする運賃体系でした。客車は、輸入時に上等車と中等車だけでしたが、開業前に中等車26両を下等車に改造したようです。定員は上等車18人、中等車22人、下等車36人とする資料があります。
鉄道博物館(さいたま市大宮区)に「創業期の客車」のレプリカが展示されています。これは区分室ごとに車体側面の扉があり、各区分室に車幅方向の木製クロスシートが配置された構造の下等車で、1874(明治7)年開業の大阪~神戸間で使われたタイプと考えられています。
なお、中等車は桜木町駅に近い商業施設「CIAL桜木町」にレプリカが展示されていますが、両端がオープンデッキのロングシート構造です。上等車の詳細は不明ですが、やはりロングシート構造だったようです。
1880(明治13)年に開業した、北海道最初の鉄道である官営幌内鉄道で使われた最上級客車「開拓使号客車」が鉄道博物館で保存されています。アメリカ製で転換式クロスシートと洋式便所、飲料水タンク、ストーブを備えた客車であり、明治天皇のお召列車としても使われました。
1897(明治30)年、上等・中等・下等は「一等・二等・三等」に改称されます。「乗客を下等とは何事か」という反応があったから、という説もあるようです。なお、1900(明治33)年に「客貨車検査及修理心得」で等級記号が定められ、一等車が「イ」、二等車が「ロ」、三等車が「ハ」とされました。この記号は現在も踏襲されており、グリーン車は「ロ」、普通車は「ハ」が付きます。クルーズトレイン「ななつ星in九州」で「イ」が復活したことも話題になりました。
1900(明治33)年、山陽鉄道は日本初の営業用寝台車を導入します。一等寝台と食堂を一両にまとめた合造車です。車両中央の通路の両側に2段寝台をレール方向に並べた構造ですが、昼間はロングシートとして使われていました。
一等・二等はロングシートだった
1906(明治39)年製造のD400形客車は、ゆったりとしたロングシートの二等車です。ただし車端部は貫通路がないためクロスシートとなっています。ロ481号車は四国の佐川町で保存されています。
1912(明治45)年に運行を始めた初めての特別急行(特急)1・2列車用のステン9020形は、開放展望デッキ、安楽椅子を備えた展望室、座席8人分と寝台2人分を備えた特別区分室(個室)、レール方向の2段寝台を備えた開放型寝台室を備えた特別車でした。特別急行用二等座席車はロングシートで、客室と喫煙室を仕切った構造でした。
この頃の鉄道院基本形客車というと、一等はサロンのような肘掛け付きロングシート、二等は肘掛けのないクッション張りロングシート、三等はボックスシートのようです。
現在は通勤列車がロングシート、特急列車がクロスシートですが、当時は必ずしもそうではなかったわけです。なお、現在の特急列車で主流の2+2列の進行方向向けクロスシートは、1925(大正14)年のスハ28400形で採用されました。編成ごと方向転換するため座席の向きこそ固定ですが、2+2列配置や座席背面のテーブル、灰皿はこの時にすでに誕生しています。
なお、FUJIなごや科学館(名古屋市中区)に保存されているお召列車用の供奉車344号は、1932(昭和7)年製の一等・二等座席車です。この車両は一等室が一人掛けの回転椅子、二等室はボックスシートとなっています。許可を得て座りましたが、一等座席は非常にゆったりとした、クッション性に優れた座り心地でした。二等座席も座面に奥行きがある重厚な座り心地で、上級座席にふさわしい座席でした。
同館には1936(昭和11)年製の名古屋市電1401号、1939(昭和14)年製の三等座席車オハ35形2001号も保存されています。名古屋市電はロングシート、オハ35形はボックスシートです。近距離通勤用は当時もロングシート、中・長距離用はボックスシートが多く見られました。
京都鉄道博物館(京都市下京区)に1938(昭和13)年製の一等展望車スイテ37040形(現・マイテ49形)と、皇族用寝台車マイロネフ37290形(現・マロネフ59形)が保存されています。
マイテ49形は展望室にロングシート型ソファ、一等室に1人掛けソファとグループ客向けボックスシートを備えています。ソファは非常に座り心地に優れたものですが、ボックスシートはやや硬めです。マロネフ59形は旧一等個室寝台と、ボックスシートを二段寝台に転換する二等寝台が備えられています。
戦後の1949(昭和24)年、特急用一等展望車マイテ39形に1+2列リクライニングシートが採用。翌年には2+2列リクライニングシートを採用した特別二等車も登場しました。この構成は現在の特急列車に受け継がれています。
1960(昭和35)年、一等車を廃止し、二等車を一等車に、三等車を二等車に変更。そして1969(昭和44)年、一等車をグリーン車、二等車を普通車に改称しました。グリーン車の名称は、一等車の車体に巻かれていた淡緑色の帯に由来するとされています。等級ごとに分かれていた運賃は、現行の「運賃+料金」の2階建てに変わりました。
現在、東北・北海道・北陸新幹線には、グリーン車よりも上の「グランクラス」が設けられています。東海道・山陽新幹線も2026年10月1日に個室の「Supreme Class(シュプリームクラス)」を追加する予定です。設備面では、かつての三等級制を思わせる三層化が進んでいます。
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