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90年前の「皇室用車両」内部がスゴかった! 一・二・三等車を乗り比べ 世界的にも希少な“ロイヤル・トレイン”150年の進化

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起源は英国

 名古屋市中区のFUJIなごや科学館に新設された「FUJI鉄道ひろば」で、供奉車344号のほかB6形蒸気機関車、旧型客車オハ35形、名古屋市電1401号の保存・展示が2026年3月に始まり、話題となっています。

Large figure1 gallery14FUJIなごや科学館で展示されている供奉車344号(安藤昌季撮影)

 特に供奉車344号は、平日に1日3回の車内見学も行われています。皇室用車両はその大半が非公開であるなか、極めて珍しいケースです。この貴重な車両を紹介しつつ、お召列車のこれまでと今を取り上げていきます。

 供奉車は、お召列車に連結される随伴者用の車両です。1932(昭和7)年製造の344号は、2号編成と呼ばれる、当時皇太子だった明仁上皇がお乗りになった特別列車に連結されていました。一等座席と二等座席の合造車で、ベニヤ板の凝った内装です。

 デッキから中へ進むと片側通路で、控室があります。現役時はここで簡単な食事を作れる設備があったようです。そのままさらに進むと一等室です。同時期の一等展望車と同じく、1人用の回転椅子が17脚、1+1列配置で並んでいます。取材なので許可を得て座らせていただきました。座席は京都鉄道博物館で保存されている一等展望車・マイテ49形の一等室に配置された回転椅子と同じく、クッションが効いており心地良くフィットします。

 和式トイレと洗面所の区画で区切られた向こうは、ボックスシートが4組並ぶ定員16人の二等室です。座席間隔は2080mmと広めで、一部座席には大きめのテーブルもあります。座席は柔らかく深い座面で、重厚な座り心地。占有面積以外は一等座席にも劣らぬ座り心地でした。

 なお、同館では1939(昭和14)年製の三等車オハ35形客車が休憩スペースとして開放されているため、平日に訪問すると約90年前の一等車、二等車、三等車を見られます。ちなみに名古屋市電1401号も、同年代の1936(昭和11)年製です。

 では、お召列車について振り返りましょう。王室用列車の起源は1840年のイギリスです。アデレード王太后が王族として初めて鉄道を利用。翌年には一等客車が初の王室用客車として改造され、以降、欧州君主国で王室専用列車が普及していきました。

 日本でも、鉄道が初めて開業した1872(明治5)年、早くも明治天皇がお召列車に乗車されています。

 そして1876(明治9)年、初の皇室用車両である1号御料車(初代)が製造されます。全長7.34m、幅2.16mの2軸車でした。天皇陛下が乗車される御座所は、当時の美術工芸の粋を尽くした造りでした。中央部にソファが置かれ、四隅に小型円形の椅子が置かれていました。御座所の両側には、出入口を兼ねた次室(侍従の部屋)が設けられました。厠(トイレ)は車端部にあり、漆塗りの和式便器があったようです。

 なお、御料車に番号が付くようになったのは1911(明治44)年で、それまでは「玉車」あるいは「鳳車」と呼ばれていました。この1号御料車は、さいたま市大宮区の鉄道博物館に保存されています。

 2号御料車は1891(明治24)年に九州鉄道がドイツから輸入した貴賓車で、1902(明治35)年に明治天皇の御乗用に改造されました。両端がオープンデッキで、デッキと隣接する妻面には当時としては珍しい曲面ガラスが使われていました。これも鉄道博物館に保存されています。

 なお、順番は前後しますが、1898(明治31)年に3号御料車が製造されます。御料車として初めてのボギー台車で、全長16.1m、車体幅2.65mと大型化しています。客車は順に大膳室(調理室)、大臣扈従室、御座所、大臣扈従室、御寝室、厠の構成でした。なお、当時はまだ、営業列車に食堂車も寝台車も存在しない時期でした。

特別な「お召仕様」の機関車も製造

 博物館明治村(愛知県犬山市)には5号御料車と6号御料車が保存されています。5号は1902(明治35)年、昭憲皇太后(明治天皇の皇后)の御乗用に造られた車両です。6号御料車は、明治天皇の御乗用として1910(明治43)年に製造。全長20.7m、最大幅2.64mと、大きさは当時の最大級でした。なお、御料車で最も壮麗な内装といわれています。

 1914(大正3)年製造の7号・9号御料車は鉄道博物館で保存されています。1916(大正5)年製造の8号御料車は太平洋戦争で荒廃しましたが、女官室の一部が鉄道博物館で展示されています。

 異色なのは、1922(大正11)年のイギリス皇太子来日に合わせて製造された国賓用の10号・11号御料車です。うち10号はオープンデッキの展望車で、当時のイギリスのグロスター公、シャム(現・タイ)の国王夫妻、満洲国皇帝らが使用した後、太平洋戦争後に進駐軍専用列車にも連結されました。1924(大正13)年製造の12号とともに鉄道博物館で保存されています。

 1932(昭和7)年には1号御料車(2代目)が製造されました。番号が1に戻ったのは、車体が木製から鋼製に変わったからです。折しも、昭和天皇の馬車に爆弾が投げられた桜田門事件(1932年1月)の直後であり、1号はほぼ完成していた状態から防弾を強化して完成しました。なお、この車両は現在も車籍を有していますが、展示などはされていません。

 14号御料車は明仁上皇が皇太子だった時の御乗用として、1952(昭和27)年に改造された車両です。国賓用とされ、当時のイラン皇帝も乗車しています。なお、京都鉄道博物館(京都市下京区)に保存されているマロネフ59形と同型です。

 戦後に造られた皇室用車両で有名なのは、EF58形電気機関車のお召仕様機です。それまで機関車は、完成車の中から出来の良い車両が選ばれて、お召仕様機に改造されていましたが(EF53形16・18号機、EF56形6・7号機など)、EF58形は60・61号機が特別仕様機として製造されました。ステンレスの飾り帯など、外見も他のEF58形と異なります。現在は61号機が鉄道博物館で保存されています。

 1960(昭和35)年製造の1号御料車(3代目)は、20系客車をベースとした客車です。供奉車460号にディーゼル発電機を搭載して冷房装置を稼働させていました。2002(平成14)年まで42年にわたり使われました。

 なお、御料車とは呼ばれていませんが、皇室の小旅行用の電車もありました。1931(昭和6)年に造られたクロ49形2両と、1960(昭和35)年のクロ157形です。

 クロ49形は運転台直後に定員10人の特別室を備えていました。クロ157形は当時の157系電車をベースに製造され、併結相手を157系から183系、185系に変えながら1993(平成5)年まで使われました。現在も車籍はあります。

 最新の皇室用車両が2007(平成19)年に製造されたE655系電車です。特別車両「E655-1」を除く5両は、団体専用のジョイフルトレイン「なごみ」として、ハイグレードな設備を生かしたツアー旅行の顔として活躍しています。

 特別扱いを嫌う天皇陛下のご意向もあり、E655系特別車両を連結したお召列車はほとんど運行されていません。今後も国賓への対応時など、ごく一部の運行になると考えられます。なお、お召列車発祥国のイギリスは2027年までに専用列車「ロイヤル・トレイン」を廃止する方針で、日本のお召列車は世界的にも希少な文化になりそうです。

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