是が非でも性能アップだ!「心臓」変えて名機になった日独の戦闘機たち
- 乗りものニュース |

戦闘機の性能向上を図る際によく見られるのが、新型エンジンへの換装です。そのようななか、第2次世界大戦では空冷エンジンと液冷エンジンという全く異なる形状で付け替えた日独の戦闘機を紹介します。
ドイツのFw 190戦闘機が空冷エンジン搭載だったワケ
航空機にとって、エンジンはまさに「心臓」です。そして、第2次世界大戦で主に用いられた「心臓」たるレシプロ・エンジンは、空冷と液冷の2種類に大別できます。この両者、それぞれに長所と短所があるので比較は難しいのですが、当初は空冷エンジン搭載で設計された機体を液冷エンジンに、あるいは逆に、液冷エンジン搭載で設計された機体を空冷エンジンへと「心臓移植」した結果、名機となった機体がそれぞれ存在します。
イギリス空軍博物館が所有する五式戦闘機(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。
その代表格といえるのが、フォッケウルフFw190Dと五式戦闘機でしょう。
フォッケウルフFw190Dはドイツで生まれました。その原型といえるのがFw190A型です。第2次世界大戦前の1936年、ドイツ空軍はダイムラーベンツDB601液冷エンジンを搭載したメッサーシュミットBf109を主力戦闘機に採用しました。
しかし、もし戦争が始まったらDB601エンジンや機体の生産が追いつかず、Bf109が不足する事態が懸念されました。そこで同空軍は、Bf109を補助する戦闘機を選定します。これを受けて、フォッケウルフ社が開発したのがFw190になります。
設計に際しては、DB601以外のエンジンの搭載を求められていたため、タンクはBMW社の801系空冷星型エンジンをチョイス。なお、制空戦闘機としての性格が強いBf109に対して、Fw190は地上攻撃などもできる汎用戦闘機として設計されていたことから、採用の時点で既にBf109の補助という位置づけではなく、Bf109と肩を並べる将棋に例えるなら「金角と銀角」というべき存在になっていました。そしてこの関係は、第2次世界大戦が始まると、いっそう明確化していきます。
そうしたなか、フォッケウルフ社はFw190の性能向上を企画します。そこで考え出されたのが、BMW801系空冷エンジンをユンカースJumo213系液冷エンジンに換装するというものでした。ただ、これはエンジン形状が大幅に異なるため、機体側にも相応の改良が必要でした。
まずエンジンが大型化したため機首を延長。それに合わせて胴体も延長し、垂直尾翼も増積されます。結果、一見すると同じ機種とは思えないほど外観が変化しました。
三式戦闘機「飛燕」は液冷エンジン搭載がネックに
しかし、これによりFw190D型は、性能面で米製のノースアメリカンP-51「マスタング」や英製のスーパーマリン「スピットファイア」後期型などと互角に戦えるようになっています。ただ、本機の実戦配備が始まった1944年後半になると、米英のパイロットに比べてドイツ軍パイロットの練度の低下が著しく、生き残っていた一部のベテラン・パイロットは別として、せっかくの高性能を生かして存分に戦うことができませんでした。
空冷エンジン搭載のFw 190A型戦闘機(画像:アメリカ空軍博物館)。
ところで液冷エンジンは、空冷星型エンジンのように航空機の前面から入って来る空気でエンジンを冷却するのではなく、ラジエーターで冷やされた液体を循環させてエンジンを冷却します。そのため空気抵抗が大きく速度低下の原因となるエンジン周りのデザインを細く滑らかにでき、それによって航空機の速度を向上させることができます。さらに機首が細くなるので、コックピットからの前方視界が向上し、エンジン周りに機関銃を装備するスペースが広めに得られるなどの長所もあります。
液冷エンジンにはこうしたメリットがあるため、航空機用の開発が1920年代頃からイギリスやドイツで活発に行われるようになります。両国はその先進国でした。そこで日本陸軍も1939年にドイツのダイムラーベンツDB601液冷エンジンのライセンス生産権を川崎航空機に購入させて、同エンジンの国産モデルを搭載する重戦闘機「キ60」と軽戦闘機「キ61」の開発をスタートさせます。
その結果、後者を元に採用が決まったのが、三式戦闘機「飛燕」でした。
「飛燕」は第2次世界大戦中の1943年8月に採用されますが、同機は機体設計こそ優良だったものの、DB601の国産型であるハ40エンジンに問題がありました。当時の日本の基礎工業技術力と低品質の素材ではDB601を完璧にコピーするのが困難だったうえ、それまで空冷星型エンジンしか扱ってこなかった整備兵たちは液冷エンジンの取り扱いに不慣れで、調整や整備がうまくできないという面が重なり、本来の性能を発揮させられず、結果、稼働率の低さまで招いてしまったのです。
「首なし飛燕」を転用して誕生した戦闘機
とはいえ、ハ40が快調に動いてくれれば「飛燕」は優秀でした。そのため日本陸軍はハ40の性能向上型であるハ140の開発を進め、これを搭載した三式戦闘機二型の生産に踏み切ります。
アメリカ空軍博物館に収蔵・保管されているFw 190D型。こちらは液冷エンジン搭載(画像:アメリカ空軍博物館)。
確かに三式戦闘機二型は、ハ140さえ快調ならハ40搭載型よりも高い性能を発揮します。ところがハ40の生産すら満足に行えないのに、ハ140が生産できるはずがありません。結局、このエンジンも生産遅延が著しく、不良品が続出する事態となりました。
このため、エンジン未装備の三式戦闘機二型の胴体だけが多数放置されることになったのです。それならと、これら「首無し飛燕」に、空冷エンジンを組み合わせることが企図されます。
選ばれたのは、三菱重工業製のハ112II空冷星型エンジンでした。液冷のDB601に比べて前面投影面積がはるかに大きなハ112IIなので、胴体を整形する必要がありましたが、飛行機としての素性は優れていたため、ハ112IIとは比較的すんなりとマッチングしています。
こうして、エンジン信頼性の低い優秀機「飛燕」は、エンジン信頼性の高い優秀機「五式戦闘機」へと生まれ変わりました。実戦では、アメリカの優秀機ノースアメリカンP-51「マスタング」やヴォートF4U「コルセア」を相手に互角の戦いぶりを示し、苦戦続きの大戦末期にもかかわらず敵味方の双方から高評価を受けたのです。
空冷から液冷にエンジンを換装したフォッケウルフFw190D。その逆で液冷から空冷に替えた五式戦闘機。両者とも本来想定されていたエンジンの変更、すなわち航空機にとっての「心臓移植」を施した結果、見事に性能向上をはたした機体として、歴史に名を留めています。
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