「ゆりかもめ」と自国の地下鉄を区別できない!? 米運輸長官の“取り違え”動画に批判 失礼千万な動画の「狙い」とは
- 乗りものニュース |

アメリカの運輸長官がニューヨーク地下鉄を舌鋒鋭く批判する動画に、東京の新交通システム「ゆりかもめ」が登場し、物議を醸しています。動画で発したメッセージには、背景にある政党対立が潜んでいました。
「公共交通機関への無理解を露呈」
アメリカのショーン・ダフィー運輸長官が2025年3月19日、ニューヨーク地下鉄について「地元住民も安心して乗れていない」「危険で汚い」などと批判する一人語りの1分余りの動画を短文投稿サイト「X」(旧ツイッター)で公開しました。その中に東京の新交通システム「ゆりかもめ」がレインボーブリッジを渡る映像が登場し、「東京とニューヨークの違いが分からない運輸長官」「ゆりかもめに謝って」などと嘲笑するコメントが相次ぎました。
ダフィー長官の動画でNY地下鉄のイメージで使われた「ゆりかもめ」(大塚圭一郎撮影)。
動画の通りゆりかもめは左側通行で、原則として右側通行のニューヨーク地下鉄とは反対です。しかも軌道を見れば線路が敷かれていないため、鉄輪で走るニューヨークの「地下鉄」ではないことは一目瞭然です。にもかかわらず、ミスを見つけられずに垂れ流してしまうところに「トランプ政権の公共交通機関に対する無理解を露呈した」(民主党支持のアメリカ人)との見方が出ています。
「小さな政府」を志向する共和党はもともと公共交通機関への補助金支給に消極的なうえ、ドナルド・トランプ大統領は気候変動を「でっち上げだ」と主張して復帰初日に地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名しました。脱炭素化で公共交通機関が果たす役割を評価し、補助金の支給などを通じて支えてきた民主党とは対照的で、今回の動画はそんな【政党対立】が浮き彫りになっています。
黒ずんだ壁やホーム、歩き回るネズミ…
勤務先のニューヨーク支局とワシントン支局に駐在していた筆者(大塚圭一郎・共同通信社経済部次長)は、ニューヨークの地下鉄を多く利用してきました。ダフィー氏が「汚い」と批判していることは否定できず、全体的に清潔感のある日本の地下鉄とは対照的です。
駅の壁やプラットホームは積年の汚れがこびりついて黒ずんでおり、ネズミが線路上を歩き回っている姿をしばしば目撃しました。マナーが悪い利用者がいるのも事実で、車両の座席がいずれも野球場のような繊維強化プラスチック(FRP)製なのは「表面がビニールや生地の座席だと、刃物で損傷するようなマナーの悪い利用者もいるためだ」(鉄道車両メーカー幹部)という事情があります。
それでも、ニューヨークに長年住む人は「落書きだらけでよく故障し、治安も悪かった1970~80年代に比べると良くなった」と強調します。
地下鉄関係者を驚かせた「日本の車両」
確かにエディ・マーフィ氏が主演し、ニューヨークを舞台にした1988年公開のコメディー映画「星の王子 ニューヨークに行く」には落書きだらけの車両が登場します。そんなニューヨーク地下鉄のイメージ改善に大きく貢献した立役者が、日本の川崎重工業(川重)グループでした。
川崎重工業グループが製造したニューヨーク地下鉄の車両「R160」(大塚圭一郎撮影)。
川重が1982年に初めて受注したステンレス製車両「R62」は「故障が起きるまでの走行距離がそれまでの車両より格段に長くなり、(地下鉄を抱える)都市圏交通公社(MTA)が目を丸くした」(元川重役員)と言います。
高品質に加えて納期を守ろうとする姿勢も評価された川重は受注を重ね、累計2200両を超える車両を納入してメーカー別シェアは約3分の1と首位です。サービス改善に向けて導入した最新型車両「R211」は2025年の追加受注後の受注車両数が1610両、総額約45億ドル(1ドル=150円で約6750億円)となり、川重の鉄道車両で過去最大規模となりました。
MTAによると、地下鉄車両が修理を受けるまでに走った平均距離は2025年2月で18万キロと、川重が納入する以前、1982年(約1万1500キロ)の16倍弱に延びました。
また、24時間運行している地下鉄の治安強化に向けてニューヨーク州のキャシー・ホークル知事(民主党)は2025年1月、21時~翌5時に全ての地下鉄で警官を乗務させると発表しました。
ダフィー氏は動画で「暴力犯罪が増加した」と放言しましたが、MTAの政策・渉外担当責任者のジョン・マッカーシー氏は、警官の乗務の効果もあって「2025年に入ってからの犯罪件数は、新型コロナウイルス禍が本格化した前の2020年の同時期に比べて40%減り、重大犯罪はコロナ禍以外の年では最少件数になっている」と反論しました。
動画公開の狙いとは
それでは、ダフィー氏はなぜ自国の代表的な都市の地下鉄をこき下ろす動画を公開したのでしょうか。
それは、トランプ政権が10万人を超える連邦政府職員の解雇を打ち出すなど支出削減を進めている中、難題を突き付けることで連邦政府に140億ドルの補助金を求めているMTAを“兵糧攻め”にする作戦だとみられます。ニューヨークは民主党の“牙城”なので、トランプ政権にとっては政敵の攻撃もできる「一石二鳥」となります。
実際、ダフィー氏は動画で「連邦政府はニューヨーク地下鉄に年間数百万ドルも(補助金を)支出しており、その交換条件が安全性の維持だ」と主張。安全性向上とともに「ホームレスの住居となっている地下鉄を改めないと支出を取りやめる」と脅しました。
ダフィー氏はさらに、治安を改善しなければ鉄道などを運行する運輸当局への補助金支出を取りやめる対象は「ニューヨークだけではなくシカゴ、ワシントンDCも同じだ」ともけん制しました。これらの首長も民主党に所属しており、政党間の路線対立もあって補助金を巡る激しい攻防劇が繰り広げられそうです。
【動画】これが問題の「NY地下鉄とゆりかもめを間違えた」動画です(当該シーンは0:35頃)
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