クルマだと普通ない「RF車(リアエンジン フロントドライブ)」 「戦車」にはある謎
- 乗りものニュース |

戦車のエンジンは、大きく重いため、どこに積むかは重要です。また出力を起動輪(駆動輪)に伝えるトランスミッションも重要です。これらをバランス良く配置し、なおかつコンパクトにするために戦車開発者たちは知恵を絞りました。
戦車のエンジンは前? それとも後ろ?
自動車には、エンジンと駆動輪の配置によって、FF(フロントエンジン、フロントドライブ)やFR(フロントエンジン、リアドライブ)、さらにはMR(ミッドシップエンジン、リアドライブ)、RR(リアエンジン、リアドライブ)と様々な駆動方式があります。
戦車も誕生当初は様々な駆動方式が考えられました。MRやFFの車体もありましたが、1960年代以降はRRが主流になっています。
車体前方にエンジンを配置し、車体後部に起動輪があるヴィッカース中戦車Mk.II(柘植優介撮影)。
しかし、第2次世界大戦ごろまでは、自動車の世界ではあまり見ない構造のRF(リアエンジン、フロントドライブ)が戦車では主流でした。なぜこの構造が主流となり、そして廃れたのか、そこには自動車にはない戦車特有の理由がありました。
そもそも戦車は、車体及び砲塔の前方が最も被弾しやすいため、前方の装甲を厚くするものですが、そこに大きく重いエンジンがあると、装甲強化の阻害要因となります。
さらに被弾しやすいところに、エンジンがあれば破壊されやすいのは言うまでもありません。エンジンが被弾し壊れれば、走行不能に陥ります。またエンジンを冷却するためには車体に空気取り入れ口を開ける必要がありますが、車体前部にエンジンがある場合、被弾しやすいところに、防御上のウイークポイントを設けるようなものです。
そのためFFやFRの戦車というのは、1920年代後半を最後にほとんどなくなります。2019年現在では、イギリス製のスコーピオン軽戦車のような、機関銃弾を防ぐ程度に防御力を割り切った軽戦車や、もしくはイスラエル製のメルカバ戦車のような、エンジンブロックすら防御に用いようという独特な戦車ぐらいしかありません。
このように、戦車はエンジンを車体後方に設置した方が、防御力強化の面でメリットがあります。
ドライブシャフトって実は邪魔
とはいえ、エンジンと操向装置の両方を車体後部にまとめて配置するには、別の問題がありました。「操向装置」とは、エンジンで発生したパワーを左右の起動輪に伝達するための変速機を含む装置のことです。戦車用のエンジンや操向装置は、サイズが大きく重たいものです。そのため、両方を車体後部に配置すると、リアヘビーとなって車体の重量バランスが悪くなります。
そのため、昔の戦車はリアにエンジン、フロントに操向装置を置き、両者をドライブシャフトでつなぐ構造としました。大重量のふたつのものが車体の前後に配置されれば、重量バランスはよくなります。
RF構造のアメリカ製M4「シャーマン」戦車。車体前方下部にあるボルト止めの三分割式カバーの部分が操向装置(柘植優介撮影)。
このほかに操向装置が前に置かれたもうひとつの理由として、操縦手がレバー操作するのにそれらが前にあった方が構造の簡易化などで都合がよかったからというのもあります。
操向装置が車体前部にあるため、起動輪(駆動輪)も前にあった方が合理的で、戦車はRF(リアエンジン、フロントドライブ)となりました。このRF構造は日本をはじめとしてアメリカやドイツ、イタリアなどの戦車が用いていました。
一方イギリスやソ連(当時)は、エンジンと変速機の両方を車体後部に配置するRR構造を広く採用しており、フランスはメーカーによってRFとRRの両方ありました。ただし車内容積の問題や、前述したような重量バランスの問題などから、この頃のRR構造の戦車は砲塔が前に寄っていました。
RF構造のデメリットとしては、車体前部に操向装置があるため、外部ハッチや外装式の取り外し可能なカバーが車体前部にあり、FFやFRと同じく防御上の弱点になることが挙げられます。しかも変速機が前にあるということは、仮にエンジンが被弾しなくとも、変速機が敵弾で破壊されれば走行不能になります。
また前述の車体中央にドライブシャフトがあるため、これにより車内は狭くなり、車両によってはそれゆえに車高を低くできない弊害もありました。戦車は車高が低い方がシルエットが小さくなり、被弾しにくくなります。
RR方式に大きく貢献 エンジンと変速機の一体化
エンジンと操向装置を小型化でき、さらに一体化(パワーパック化)できれば、戦車にとってメリットは大きく、またRR化しやすくなります。第2次世界大戦末期に登場したアメリカ製M26「パーシング」重戦車などが比較的早い段階でパワーパック化されたもので、実際、これ以降のアメリカ戦車はすべてRRとなりました。
リアエンジン、フロントドライブの61式戦車。車体前面にボルト止めの大きなハッチが設けられている(柘植優介撮影)。
その後、1960年前後になると、ヨーロッパ各国でもパワーパック化に次々と成功し、フランスやドイツの戦車もRRになりました。こうして、世界の戦車の主流はRR構造になっていきました。
他方で、ソ連戦車はパワーパック化こそできませんでしたが、前述したように早くからRR化されていました。そのため、ソ連の友好国であった東ヨーロッパ諸国や中国などは早い段階でRR戦車を装備していました。
日本については、戦後初の戦車である61式戦車ではエンジンと操向装置のコンパクト化ができず、第2次世界大戦中の旧日本軍戦車やアメリカ製戦車と同じ、RF構造でした。日本戦車でパワーパック化を達成しRR構造になったのは、61式戦車の次に登場した74式戦車です。
そして、そのあとの90式戦車や10式戦車では、パワーパックの高出力化、コンパクト化が進められ、いまや日本戦車も現役で使われているのはすべてRRです。
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