欧州の「巨大無人機」開発プロジェクトが日本に急接近のナゼ ドイツの思惑×日本の知見で“化ける”のか?
- 乗りものニュース |

ドイツ大使が川重を見学したワケ
ドイツのペトラ・ジグムント駐日大使は2026年8月4日、自身のSNSアカウントで、川崎重工業の岐阜工場を訪問し、工場を見学したことを明らかにしました。
2019年のパリエアショーで展示されたMALE RPAS(ユーロドローン)の実大モックアップ(竹内 修撮影)
一国の特命全権大使が友好関係や防衛協力を進めるという儀礼的な目的で、駐在国の航空・防衛企業を訪問することは、世界的には珍しい話ではありませんが、日本ではあまり例がありません。今回の訪問も儀礼的な意味合いもあるかもしれませんが、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は、より具体的なドイツと日本との防衛協力について話し合われたものと考えています。
というのも、川崎重工業はエアバスと2026年6月26日に、エアバスが開発に関与しているUAS(無人航空機システム)「ユーロドローン」を対潜水艦戦に活用するための適用可能性について、共同で検討を進めるための覚書(MOU)を締結したと発表しているからです。
エアバスはフランスやスペインも参加している多国籍企業ですし、ユーロドローンの開発はドイツ、フランス、イタリア、スペインから複数の企業が参加して行われていますが、なかでも主導的立場にあるのはドイツに本拠を置くエアバスです。このタイミングでジグムント大使が川崎重工業を訪問するからには、ユーロドローンについてなんらかの話し合いを行ったと見るほうが自然でしょう。
まだ覚書を締結した段階ですが、川崎重工業とエアバスによるユーロドローンの対潜水艦戦への活用は、両社、さらに言えば日独双方にとってWin-Winになり得ると筆者は思います。
フランスが“一歩後退” 日本に好機か
ドイツ、スペイン、イタリアの3か国はユーロドローンの主用途を国内の都市部監視としており、エンジンの故障によって生じる墜落のリスクを低減するために双発機としたのですが、結果として機体は大きく、コストも高額になりました。
一方フランスは紛争地帯でユーロドローンを用いることを想定しており、重量が大きく、コストも高くなる双発機であることを望んでいなかったとも伝えられています。
またユーロドローンのエンジンにはフランスが提案した「3TP」ではなく、エアバスの主導でアメリカ製の「カタリスト」が選定されていました。フランスはこれも面白く思っておらず、フランスはユーロドローンの開発計画から離脱するのではないかとも報じられていました。
エアバスの防衛部門エアバス・ディフェンス・アンド・スペース(以下D&S)の航空戦力担当責任者ジャン=ブリス・デュモン氏は、2026年6月にドイツのベルリンで開催されたILAベルリンの会場でユーロドローンについて、「発注時期を後ろ倒しにする可能性はあるもの、フランスは依然、当事国として開発計画に関与し続けている」と述べています。プロジェクトがグラついているのは確かでしょう。
そして日本は2023年11月から、ユーロドローンの開発にオブザーバーとして参加しています。オブザーバーという立場は仕様要求を決定する際の議決権を持っていませんが、主要開発国のフランスが一歩後退している間隙を突くことで、日本の意見を通しやすくなったとも言えます。
“有人機だけ”はもう限界? 海自の切実な事情
川崎重工業はライセンス生産したP-3C哨戒機を、派生型を含めて98機、海上自衛隊に納入しています。防衛省(庁)・海上自衛隊はこれを70機程度のP-1哨戒機で後継する計画でした。
川崎重工の岐阜工場を見学したペトラ・ジグムント駐日大使(右中央、公式SNSより)
P-3Cを大量調達できた時代に比べて、日本が警戒監視をしなければならない海域が狭くなったわけではありません。性能の向上分を考慮しても、やはり防衛省・海上自衛隊が計画していたように70機程度が必要なのではないかと筆者は思います。しかし、2026年8月の時点では48機が予算化されるにとどまっています。
P-1の調達数が伸びないのは、会計検査院から不具合を指摘されたことや、円安と物価高で価格が高騰したことに加えて、少子化で1機あたり11名という搭乗員を揃える目途が立ちにくくなっているからなのではないかと思います。
現在P-3CとP-1が行っている洋上・対潜哨戒の能力を維持しようと考えれば、P-1を補佐するUASの導入が必須なのではないでしょうか。この場合、海上自衛隊が導入する「シーガーディアン」が最有力候補となりますが、海上自衛隊の中には洋上哨戒はともかく、対潜水艦戦に使用するには、シーガーディアンより大型のUASの方が望ましいという声も根強く存在します。
筆者は2025年5月に、来日したエアバス・ディフェンス・アンド・スペースのマイケル・ショホローン最高経営責任者(CEO)から、日本のオブザーバー参加に期待する役割について話を聞く機会を得ました。
同氏は、ユーロドローンの開発に参加している4か国は半島国家と大陸国家なのに対し、日本は島国であり、航空機の洋上長時間飛行のノウハウを豊富に保有していることから、日本の意見はMALE RPAS(ユーロドローン)の洋上運用の実用性を高める上で有益であるとの見解を示しました。
このノウハウを用いれば、海上自衛隊のみならず、諸外国にも有益な提案ができるのではないかと思いますし、エアバスと川崎重工業はその点まで視野に入れて、ユーロドローンを対潜水艦戦に活用するための共同研究を行う可能性もあります。
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