核戦争には対応無理!?「新エアフォースワン」見た目は豪華でも中身まったく違うワケ “数年で退役”ってナゼ?
- 乗りものニュース |

次期大統領専用機と同じ名前だけど“違う機体”
アメリカ空軍で、異例とも言える航空機改造計画が進められました。その機体の名称はVC-25B「ブリッジ(Bridge)」です。将来の大統領専用機と同じ「VC-25B」の名を冠していますが、その正体は通常の後継機とは大きく異なります。
現在、エアフォースワンとして使用されているVC-25A。ボーイング747-200Bをベースにしている(画像:アメリカ空軍)
この機体のベースとなったのは、カタール政府がアメリカへ寄贈したボーイング747-8です。当初はVIP輸送機として運用されていた豪華仕様の機体ですが、これをドナルド・トランプ大統領の専用機、すなわち「エアフォースワン」として使用できるよう急ピッチで改修する計画が進められ、2026年7月4日のアメリカ独立記念日に就役しました。
もっとも、この機体は「次世代エアフォースワン」そのものではありません。その名称に付けられた「ブリッジ」という言葉こそ、この航空機の存在意義を端的に表しています。
本命「747-8」は大統領専用機への改修が難航
2026年現在、大統領専用機として運用されているVC-25Aは2機体制ですが、いずれも1990年の就役から30年以上が経過しています。もともと2機が交互に任務へ投入される体制でしたが、老朽化によって1機は2026年6月に実質的に第一線から退き、残る機体は1機のみとなっています。
本命のVC-25BのイメージCG。ボーイング747-8をベースとする。現在のVC-25Aに近い塗装となっている(画像:アメリカ空軍)
その後継として開発されているのが、新造747-8をベースとした本来のVC-25Bです。しかし、この計画は度重なる遅延に見舞われています。理由は単純に機体を製造するだけでは済まないからです。
一般的な旅客機であれば完成した時点で運航できます。しかし大統領専用機は「空飛ぶ執務室」であるだけではなく、有事には国家中枢そのものとなる存在です。そのため完成した機体には、世界中の軍や政府機関と安全に通信するための高度な暗号通信装置、核戦争下でも指揮命令を維持する通信ネットワーク、ミサイルから機体を守る自己防御システムなど、多数の特殊装備を組み込まなければなりません。
こうした「国家機能」を航空機へ組み込む作業は極めて複雑であり、VC-25B計画が長期間にわたって遅延している最大の要因となっています。
「ブリッジ」=次期専用機までの「橋渡し」
そこで浮上したのが、「つなぎ役」として747-8を活用する構想であり、それがVC-25B「ブリッジ」です。ブリッジとは英語で「橋渡し」を意味します。つまり本来のVC-25Bが完成するまでの数年間だけ運用される暫定的な大統領専用機という位置付けです。
VC-25A機内の大統領執務室。大統領専用機には大統領が職務を遂行できる機能が求められている(画像:ホワイトハウス)
この機体は短期間しか使用しないことが前提であるため、改造方針も本来のVC-25Bとは大きく異なります。通常のVC-25Bでは数年単位を要する改造を、この機体では約10か月という異例の短期間で完了させました。そのため、カタール時代から備わっていた豪華なVIP用内装は大部分がそのまま活用され、大規模な内部改装は行われていないと考えられます。
つまり「新しいエアフォースワン」を一から造るのではなく、既存のVIP機を必要最小限の改修でアメリカ大統領が利用できるレベルまで引き上げようという考え方です。
しかし、その代償として本来のエアフォースワンが備える能力の多くは搭載されません。高度な軍事通信システムは限定的なものとなり、有事に国家中枢として機能する能力は持ちません。また自己防御システムも搭載されないとみられています。
言い換えれば、この機体は見た目こそエアフォースワンであっても、その中身は「世界最高の指揮統制機」ではなく、「大統領を安全かつ快適に輸送するVIP専用機」に近い存在なのです。国家存亡に関わる危機管理任務まで担う機体ではないという点が、本来のVC-25Bとの決定的な違いと言えるでしょう。
このようにVC-25B「ブリッジ」は、航空機として見れば決して完成形ではありません。しかし、その役割は極めて明確です。老朽化したVC-25Aと完成が遅れる本命VC-25Bとの間を埋める「橋」として、数年間だけアメリカ大統領の空の移動を支えることにあります。
そして、その任務は永続的なものではありません。本来のVC-25Bが2機とも就役すれば、その役目は終わります。計画では退役後、VC-25Bブリッジはトランプ大統領図書館へ寄贈され、歴史的航空機として展示される予定です。
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