患者の徘徊は“薬”が原因? 「認知症」医療の課題とは
- オトナンサー |

厚生労働省の公表資料によると、65歳以上の高齢者のうち、認知症の患者数は2022年時点で443万人、認知症の有病率は12.3%とそれぞれ推計されています。多くの高齢者にとって、認知症は避けられない病気の一つと言えます。
そこで、今回は「告白します、僕は多くの認知症患者を殺しました。まちがいだらけの日本の認知症医療」(石黒伸著/現代書林)を紹介します。著者の石黒伸さんは認知症の治療に携わってきた現役の医師で、「患者を殺している犯人は、医師ではなく『日本の認知症医療』のあり方そのもの」だと主張しています。
医師が認知症を正しく診断できない?
石黒さんは、「開業医はもちろん、大学病院の認知症外来の中にも、殺しに加担している医師が少なからず存在します」と告白。さらに「患者さんやそのご家族は、医師の治療を『改善への切符』と思っているかもしれません。しかし、実際には『再起不能への直行切符』や『死への片道切符』になっている場合もあるのです」と説明します。
なぜそのようなことが起きるのでしょうか。石黒さんは、多くの医師が認知症の正しい診断ができないという現実があるからだと述べます。認知症にはさまざまなタイプや混合型がありますが、それらに対する知識も関心もない医師たちの間で、いいかげんな診断が日常化しており、その結果、患者さんが苦しむことになるのだそうです。
本書では、ある認知症患者の病例について、次のように紹介しています。物忘れがひどくなった女性が、かかりつけ医の指示に従い、認知症の治療に使われる「アリセプト」という薬を服用したところ、ある変化が生じたということです。
■症例A:薬を飲んだら徘徊(はいかい)が始まった
Aさん(仮名・86歳)は、ご自宅の一軒家で60代の息子さんと二人暮らしです。数カ月前、息子さんが「母の物忘れがひどくなった」と近所のかかりつけ医に相談したところ、アリセプト5mgが処方されました。息子さんは、言われた通りにアリセプトを毎日服用させていました。Aさんは全身的にはとても健康で、ほかに血圧の薬を飲んでいるだけでした。
しかし、アリセプトの服用を開始すると、Aさんに変化が現れました。妙にそわそわして家の中を歩き回るようになったのです。そのうち、外に出て迷子になってしまうようになりました。最近になってそれがひどくなったということで、地域包括支援センターの担当ケアマネジャーから、認知症を在宅で診ている私に相談がありました。
最終的に、「これは環境を整えれば問題はなくなる、いわゆる普通のアルツハイマー病だな」とすぐに確信しました。アリセプトの服用で興奮してしまっているだけなのです。私はアリセプトの服用を中止し、リバスタッチパッチ(皮膚に貼る認知症中核薬)4.5mgと、グラマリール25mgを朝食後1錠・夕食後1錠で処方しました。1週間で落ち着き、それからは徘徊もピタッと止まりました。
3カ月ほど経過したとき、私が訪問診療すると、Aさんは玄関前に出て植木の手入れをされていました。ふと通りかかった近所の人に「こんにちは」と声をかけています。認知症には見えません。息子さんも心を開き、訪問診療に一度だけ顔を出してくれました。
薬物に頼らない治療法も重要に
本来、認知症患者に対する薬物療法の目的は、症状の進行を遅らせたり、行動の問題を緩和したりすることだといわれています。しかし、これらの薬には副作用があり、患者の生活の質を低下させる可能性も指摘されています。例えば、抗精神病薬は、過度な鎮静作用を引き起こし、患者が日常生活を送る上で自立性を失うことがあるといいます。
先述の石黒さんによると、薬物療法に頼り過ぎると、患者の健康にも悪影響を及ぼすことがあるということです。長期的な薬物使用は、心臓や肝臓に負担をかけることがあり、患者の寿命を縮める可能性があります。また、薬物の副作用として、転倒や骨折のリスクが増加することも報告されています。
薬物療法のもう一つの問題は、患者やそのご家族が十分な説明を受けていないことです。石黒さんが著書で触れていますが、多くの場合、医師は薬の効果や副作用について、患者に十分に説明せず、患者やその家族が薬の使用に対する理解を深める機会が少ないのです。これにより、患者さんやご家族は薬の使用に対して不安や疑問を抱くことが多くなります。
では、薬物療法以外の選択肢はないのでしょうか。
近年、非薬物療法も有効な治療法として注目されています。非薬物療法とは、薬を使わない治療法のことで、回想法や音楽療法、運動療法、アロマテラピーなどがあります。これらの療法は、認知機能の維持やBPSD(行動・心理症状)の改善に効果があるだけでなく、副作用のリスクも少ないとされており、積極的に取り入れることが推奨されています。
また、患者の家族や介護者が患者とのコミュニケーションを深めることで、患者の精神的な安定を図ることも認知症の治療にとって重要だといわれています。
認知症治療においては、薬物療法だけに頼るのではなく、非薬物療法を組み合わせることが大切だと言えます。医療従事者、患者、そして患者の家族が互いに協力して、認知症の最適な治療法を見つけることが求められているのではないでしょうか。
コラムニスト、著述家 尾藤克之
実は損している?
ニュースを読んでポイントが貯まるサービスがあるのを知っていますか?ポイントサイトのECナビでは好きなニュースを読んでポイントを貯めることができるのです。(※ECナビはPeXの姉妹サイトです。)今日読んだニュースが実はお小遣いになるとしたら、ちょっと嬉しいですよね。
ポイントの貯め方はニュースを読む以外にも、アンケート回答や日々のネットショッピングなど多数あるので、好きな貯め方でOK!無料で登録できてすぐに利用できます。貯まったポイントはPeXを通じて現金やAmazonギフトカードなどに交換できます。
運営実績も15年以上!700万人以上の方がポイントを貯めています。毎日好きなニュースを読んでお小遣いを貯めてみませんか?
簡単無料登録はこちらYOUの気持ち聞かせてよ!
いいね | ![]() |
|
---|---|---|
ムカムカ | ![]() |
|
悲しい | ![]() |
|
ふ〜ん | ![]() |
