JR最古参の特急車両「まだまだ使います」幹部が明言! もうすぐ39歳 往年の看板特急を「走らせ続けなければならない」ワケ
- 乗りものニュース |

来年で39年になるけれども…
2027年は、国鉄の分割民営化に伴うJR発足から40年の節目となります。そのJR発足後初めての特急形車両として1988年3月に華々しく登場したのが、JR九州の交流電車783系、愛称「ハイパーサルーン」です。
JR九州鹿児島本線を走る783系。特急「ハウステンボス」用リニューアル編成(大塚圭一郎撮影)
先頭が流線形になったスマートなデザインで、最高速度は130km/h、さらに車内の居住性も高めたデビュー当時としては革新的な車両でした。九州の都市間輸送は西日本鉄道などの高速バスとの競争が激しいものの、国鉄時代の常識を打ち破った783系は巻き返しに一役買いました。鉄道友の会の1989年のローレル賞にも輝いています。
しかしながらデビューから38年半が経過し、783系はJRグループの特急形として新造された電車としては最古参になりました。同じJRグループの“後輩”でも、JR東日本が1989年3月に常磐線の特急「スーパーひたち」で運用を始めた651系は2023年に全廃となりました。
90両が製造された783系も廃車が進み、現在残っているのは半分弱の44両です。博多~佐世保(長崎県佐世保市)間の特急「みどり」と、博多~ハウステンボス(同市)間の「ハウステンボス」で使われているものの、利用者からは「老朽化が進んでいる」との声も漏れます。
そこで、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が福岡支社在任中から存じ上げているJR九州幹部に783系の先行きを尋ねると、「まだまだ使い続けますよ!」という返答でした。その理由には、JR九州の「悲願」達成に向けたしたたかな戦略が隠されていました。
ユニークな「1両2室」
今や旧型車となってしまった783系ですが、軽量ステンレスを採用したユニークな車両は歳月がたっても決して色あせていません。先頭には50度の傾斜角をつけた大型窓を設け、乗務員室と後ろの客室をガラスで仕切ることで前面展望を楽しめるように工夫しています。この客室の座席は通路より約20cmかさ上げしており、側面の窓も縦方向に広げているため、高い視点から車窓を満喫できます。
また、各車両の中央に乗降扉とデッキを設けており、半分ずつを「A室」と「B室」に分けた「1両2室」なのも面白いところです。グリーン車の座席は通路を挟んで2列と1列の計3列、前後間隔(シートピッチ)は120cmとしました。
座席数は置き換えた国鉄時代製造の485系(通路を挟んで2列ずつの計4列)より1列減らし、シートピッチを4cm広げることで、乗客がよりゆったりと過ごせるようにしました。普通車のシートピッチは96cmとし、485系より5cm広げています。
車体を軽くして省エネルギー化したことも特色で、1両当たりの消費電力の理論値は国鉄時代製造の近郊形電車415系より約37%低減しました。
悲願達成までは「走らせないといけない」
1988年3月の導入当初、783系は主に博多(福岡市)~熊本・西鹿児島(現・鹿児島中央)間の特急「有明」や、博多と西鹿児島を結ぶ速達タイプの「スーパー有明」に投入。当時は九州新幹線がなかったため「有明」は看板特急で、軽食や飲み物を提供するカフェテリアも一時営業していました。
シルバーの783系一般色(大塚圭一郎撮影)
2027年にはデビューから39年を迎えようとしており、製造車両数の半分弱になってしまった783系ですが、JR九州幹部は「まだまだ使い続ける」理由をこう明かしました。
「西九州新幹線の全線開業までは走らせないといけない」
783系の運用を続ける背景には、西九州新幹線のうち未開通となっている武雄温泉(佐賀県武雄市)~新鳥栖(同県鳥栖市)がフル規格で建設されるというJR九州の「悲願」があったのです。この区間が建設されれば新鳥栖~博多間は九州新幹線に乗り入れ、長崎市と九州最大都市の福岡市が一本の列車で結ばれます。
武雄温泉~新鳥栖間には車輪間の幅を変えて新幹線の標準軌(1435mm)と在来線の狭軌(1067mm)の両方に乗り入れられるフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)を導入する計画でしたが、技術的な理由で頓挫しました。このため、国と長崎県、JR九州はフル規格での建設を支持する姿勢に転じましたが、佐賀県の山口祥義知事は「フル規格新幹線については手も挙げていない状態だ」と反発してきました。
ただ、ルートを定めず環境影響評価(アセスメント)を実施することには山口氏も2026年7月に合意しました。JR九州の古宮洋二社長は6月の記者会見で「佐賀駅を通るルートが望ましい」とし、その理由として「佐賀駅に来れば在来線もあるし、市内はバスもあるし、いろいろな広がりが出てくる」と強調しました。
そんな中で2026年12月20日投開票の佐賀県知事選が控えており、山口氏は4期目を目指して立候補すると表明しています。これに対し、新人で元航空自衛隊幹部の吉田ゆかり氏は「私は早期に佐賀駅ルートで通すべきだという風にしっかり考えを持っています」と明言しており、吉田氏が勝った場合にはフル規格での建設へと一気に近づく可能性があります。
「50年選手」になるのが確実か!?
西九州新幹線の全線開業はどんなに早くても2040年代以降になるのは確実な情勢ですが、その際には現在の区間を走る「みどり」と「ハウステンボス」は消えます。西九州新幹線と接続する武雄温泉発着のリレー特急が佐世保、ハウステンボスと結ぶことが想定されます。
このため、「みどり」と「ハウステンボス」に用いるために車両を新造しても、西九州新幹線の全線開業後は大部分が余剰車両になってしまうのです。これこそが、JR幹部が783系を西九州新幹線の完成まで温存させたいと考えている大きな理由です。
さらに、古くなってきた783系の“現状維持”が続くことに対し、佐世保市や佐賀県有田町などの佐世保線沿線では不満も漏れます。このような声が“外圧”となり、博多までの所要時間短縮につながる西九州新幹線の早期着工を求める機運が高まる可能性もあります。
JR九州幹部は「西九州新幹線が全線開業する時には、佐賀県内に(観光列車)D&S列車を走らせることになるのではないか」とも指摘し、佐賀県でのフル規格支持派の拡大にも躍起です。深謀遠慮が透けて見える西九州新幹線の完成までの道のりは視界不良の一方で、JRの第1世代である783系の先行きが当分安泰なのは間違いありません。
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