実は放置しがちな「不妊のサイン」とは? 産婦人科医が伝えたい 速やかに受診すべき“段階”
- マイナビウーマン |
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子供を妊娠・出産しても、第二子以降に不妊治療が必要になることもあります。
今回は、妊娠・出産にまつわる
・無月経のサインって?
・卵子凍結は万能?
などの疑問について、産婦人科専門医の遠藤周一郎先生の著書(『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心』KADOKAWA刊)より解説をお届けします。
無月経になる前のサインを見逃すな!
毎月起こる痛みをともなう出血、女性にとっては迷惑このうえない「あの日」、いっそ「生理なんてなかったらいいのになあ……」なんて、女性なら誰でも一度は思ったことがあるでしょう。しかしそんな皆さんは、そもそも生理について、中学の保健体育の授業以外で考えたことがありますか?
生理とは子宮内膜が毎月はがれ落ちる現象をいうのですが、この子宮内膜は妊娠する時に、赤ちゃんの体のもとである胚がくっつく場所で、言い換えると「赤ちゃんのベッド」となります。
つまり生理とは、赤ちゃんのベッドを作り直すために、毎月古いベッドを交換することなんです。皆さんの子宮は、赤ちゃんを迎えるために毎月フカフカのベッドをせっせと作っていると考えると、本当にすごいなあと思いませんか? そして、この作業がうまくいかなくなるのが無月経という状況です。
無月経には、生まれた時から一度も生理が来ない原発性無月経と、一度は生理を経験したのに、その後何らかの不調で生理が来なくなる続発性無月経の2つがあり、無月経で悩む女性の多くは続発性無月経です。
生理が終わってから次の生理までには、
①排卵する
②ベッドの組み立て
という2つのイベントが起こります。特に重要なのは排卵するしくみで、排卵が成功すると、ベッドの組み立てから捨てるまで(次の生理まで)自動的に進行します。
この期間にはかなり複雑なホルモンのやりとりが起こるのですが、卵巣で排卵させるしくみを「工場」と見立てて、それぞれの命令を出す部位をいろいろな人物としてイメージすると理解しやすくなります。
例えば会社の社長がストレスにやられて疲れていたり、社員が虫の居所が悪く命令をちゃんと聞けなかったりすると、工場内で何かしらの不具合が表面化するように、女性の体もさまざまな“不具合”で、排卵させる・ベッドを作るという本来の目的が果たせなくなってしまいます。
つまり無月経は、現実社会でいうと、人間関係が悪くなり、意思の疎通ができなくなって、だんだんと歯車が合わなくなりトラブルが生じた状態なのです。
そして、無月経になってから病院にかかるというのは、前述した、人間関係がすでにかなり悪くなった状況のため、元の状態に戻すのが大変なわけです。無月経は放置する期間が長くなればなるほど、元のサイクルに戻すのが困難になり、月経を戻すのに半年、1年と経ってしまうことも。
1人目の子育てが一段落つき、「そろそろ次の子どもが欲しいなぁ」と考えた時、無月経になってしまっているとおのずと次の子どもを授かるまでに時間がかかってしまいます。場合によっては不妊治療などをすることになる場合もあるので、無月経まで進行する前に不調を感じたら、早めに受診をしてくださいね。
遠藤先生の伝えたいこと>>>
✅ 無月経は、工場内の人間関係がすでに悪化した状態と同じ
✅ 生理不順や不正出血の段階で、早めに病院を受診して!
卵子凍結は夢の不妊治療?
2023年、東京都が卵子凍結にかかる費用への助成を開始したことが話題となりました。実は東京都に先駆けて、2015年に千葉県浦安市が日本で初めて公費による卵子凍結に対する助成に取り組んだ歴史があり、当時私が働いていた施設が深く関わっていたので、このニュースは感慨深いものがあります。
年齢による妊娠率の低下は避けられない事実であり、その大きな原因は卵子の老化によるものです。だから若い時に卵子を凍結しておくことで、もしも将来高齢で妊娠に臨む状況になったとしても、若い卵子に望みを託すことができますよ、というのが卵子凍結です(妊娠率は、採卵した年齢に依存します)。
世間では不妊治療の一環として捉えられている印象がありますが、個人的には女性のライフスタイルの選択肢を広げるための技術という意味合いが強いと思います。
というのも、卵子凍結を有効活用するためには、まだ将来のパートナーも決まっていないような若い年齢の時に、採卵による痛みやリスクを伴いつつ、それなりの数の卵子を保存しておかなければならないからです。凍結した卵子が全て妊娠につながるわけじゃないので、1人の子どもを得るためにはおおよそ10〜20個の卵子を保存する必要があります(採卵時の年齢に大きく影響を受けます)。
卵子の数の移り変わり
お母さんのおなかの中にいる時から閉経までの卵子の数の移り変わりを表したグラフです。生まれた時にすでに500万個も減ってしまうんですね。
だからこの技術は夢の治療ではなく、あくまで将来のための保険のひとつという位置付けなのです。なぜそこまで卵子凍結の必要性が議論されているの? と思うかもしれませんが、女性の人生において、妊娠・出産に有利な年齢と、社会人として脂が乗ってくる年齢が重なるからなんです。多くの女性たちがどちらかを選択しなければならないという岐路に立たされる現状があるからこそ、卵子を凍結しておくことに意義があるんですね。
実際アメリカなどでは、皆さんが当たり前のように知っている大企業が、卵子凍結への補助を福利厚生の一環としてこぞって提供しています。「当社は性差のないフェアなライフスタイルを選択できる環境を担保しますよ」という姿勢を見せるための取り組みです。
凍結した卵子があることにより、だったらキャリアを優先しようと思う女性は増えるかもしれません。ただその際、卵子凍結でできることとその限界をきちんと理解しておくことが重要です。まだまだ日本での認知は低いので、いろいろな情報が錯綜している状況。卵子凍結はあくまで自分のライフスタイルを決定していくための選択肢、オプションのひとつと考えてください。
少し私見は入りますが、現状、日本では他人から卵子を譲り受ける「提供卵子」が原則的には認められていないので、そういった意味でも自身の卵子を若いうちに凍結保存しておくことは、高齢妊娠に臨むうえでの大きな武器のひとつであると、個人的には考えています。
遠藤先生の伝えたいこと>>>
✅ 卵子凍結は夢の治療ではなく、ライフスタイルを決定するための選択肢のひとつ
✅ 有効利用するためには、若いうちに、それなりの数の卵子を保存する必要がある
『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』(遠藤周一郎 著、KADOKAWA刊)より一部抜粋・再編集
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