空母に載せる航空機「地上用でよくね?」が到底ムリな理由 その衝撃は「制御された墜落」!?
- 乗りものニュース |
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航空母艦(空母)に乗せる航空機のうちヘリコプターをのぞく固定翼機に関しては、地上で運用している戦闘機をそのまま艦載機にも使えるという訳ではありません。なぜなのでしょうか。
限られたスペースで飛ばすには?
航空母艦(空母)に乗せる航空機のことを艦上機または艦載機と呼びます。このうちヘリコプターをのぞく固定翼機に関しては、地上で運用している戦闘機をそのまま空母用にも使えるという訳ではありません。なぜ、空母に普通の戦闘機を乗せるのは不都合なのでしょうか。
発艦するF/A-18E/F「スーパーホーネット」(画像:アメリカ海軍)。
まず空母の飛行甲板のスペースは限られているため、離陸(発艦)距離には限りがあります。一般的に航空機の離陸には複数通路機では最低2000m、飛距離の長い機種では3000m必要と言われていますので、スペースに問題がなければ3000m以上の滑走路を備えるのが一般的です。
対して空母の飛行甲板は現状最大の空母である、アメリカのフォード級であっても332.9mと10分1の長さしかありません。さらに発艦時にこの距離全てを使えるわけではなく、駐機している機体や着艦機を考慮すると、約半分程度のスペースしか使えません。
この限られたスペースで無理やり飛ばす方法のひとつが「カタパルト(射出装置)」です。この「カタパルト」は2024年現在、蒸気圧で打ち出す「スチームカタパルト」と磁力で打ち出す「リニアカタパルト」が存在していますが、どっちにしろわずか80m程度の距離から半ば無理やり機体に勢いをつけて飛ばすことになります。もうひとつスキージャンプ方式というものがありますが、こちらはジャンプ台を通過する際に、勢いを付け、水平に飛行したときよりも高い揚力を得ることで機体を発艦させます。
いずれにせよ、地上では不要な荒っぽい方法で空母艦載機を飛ばします。ほかにも、海上であるため塩害も考慮しなければいけないので、地上機体よりは全体的に強度の高さが求められます。
さらにスペースの問題もあります。狭い艦内で運用しやすいように、多くの機体が主翼や胴体の一部が折りたためるようになっており、艦内の格納庫で搭載している際は翼を畳んだ状態にして、空母甲板での発艦時に翼を広げます。
一番大変な着艦は「制御された墜落」
そして最大の問題なのが着艦時です。通常の着陸ならば、適性速度で着陸してゆっくり減速すればいいですが、そういうわけにはいきません。空母は100mに満たない僅かなスペースに着艦する必要があります。そのため、着艦時には甲板から飛び出さないように急速に減速する必要があります。
そこで考え出されたのが、飛行甲板上にワイヤーを張り、それにひっかけて止めるという方法です。ワイヤーの方を「レスティング・ワイヤー」、艦載機に取り付けられた着艦フックを「アレスティング・フック」と呼びます。
アレスティング・フックに関しては実は艦載機以外も搭載していますが、あくまで事故などの緊急時に地上の滑走路上で使用する陸上機のそれに対し、艦載機のものは250km/h前後の速度で着艦してくる機体を短距離で常時止めるためのものであり、陸上機のものに比べて非常に頑丈に作られています。さらに揺れ動く飛行甲板に降りるため、主脚は「アシンメトリカル・ランディング」と呼ばれる片側だけでの着艦も可能な強度が求められることがあります。
ちなみにアメリカ海軍の空母の場合は、アレスティング・ワイヤーは3本もしくは4本あり、おおむね2本目か3本目にフックが引っ掛かるように着艦します。着艦フックが故障などをしている場合は、最終手段として「エマージェンシー・バリケード・ネット」というバリケード・ネットを張って止めるケースもあります。
空母への着艦は「制御された墜落」と呼ばれることもあり、機体に陸上機では考えられないほどの負荷がかかります。一説によると、陸上機に比べて約6倍もの衝撃に対する強度が求められるとか。
ただ、「シーハリアー」「ハリアー II」などの垂直離発着機を使って、垂直着艦などを行うケースも存在します。2024年現在は、海上自衛隊のいずも型護衛艦に搭載される予定のF-35Bの場合は垂直/短距離離着陸機で「ハリアー II」などに近く、既に運用されているイギリスのクイーン・エリザベス級空母のように垂直着艦を採用すると予想されています。
垂直着艦を行う「クイーン・エリザベス」艦載機のF-35B(画像:イギリス海軍)。
しかしアメリカ空母では、迅速な発着艦や搭載機を増やすなどの目的のために、F-35シリーズの艦載機タイプであるF-35Cの配備を開始しており、こちらのタイプは折りたたみ式の主翼と、アレスティング・フックを搭載しています。
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