「乗り心地の悪さ」魅力 日本唯一の乗りもの「カーレーター」とは …ベルトコンベア?
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神戸市のレジャー施設に「カーレーター」なる乗りものがあります。山頂への急勾配を登るものですが、その特徴は乗り心地の「悪さ」といいます。どのようなものか、実際に乗ってきました。またその50年以上にわたる来歴を追います。
もはやアトラクション?「荷物になったかのような乗り心地」
「カーレーター」なる乗りものが、神戸市須磨区にある「須磨浦山上遊園(すまうらさんじょうゆうえん)」にあります。
同園は標高246mの鉢伏山頂上周辺に広がっており、アクセスは最寄駅である山陽電鉄本線の須磨浦公園駅からロープウェイと、上述の日本でここにしかない乗りもの「カーレーター」を乗り継ぎ、急斜面を登っていくことになります。
須磨浦山上遊園のカーレーター。コースは建屋に覆われている。出発して最初の15秒ほどの「揺れ」が特徴のひとつ(宮武和多哉撮影)。
「カーレーター」とは、「カー(車)」と「エスカレーター」をあわせた造語です。大人ふたりが座って搭乗できるかごのような搬器(乗りもの)で、全長91mの急勾配を2分少々で登ります。カーレーターのコース全体が屋根で覆われていることもあり、設備の見かけや走行音はまさに工場のベルトコンベアのようです。
そして、最大の特徴はその「乗り心地」です。発進してすぐ25度もの急勾配にさしかかった瞬間、搬器は大きく縦に揺さぶられます。その後も、しっかり腰かけていても尻の下から体が浮くような揺れが続きます。発進から15秒ほどで安定走行に入るため全体としては快適ですが、それまでの揺れはまさに、自分がまるで荷物か何かになったような気分です。
実は、カーレーターの“現在の”セールスポイントは「乗り心地の『悪さ』」です。乗り場の張り紙や公式サイトにも、はっきりと「乗り心地の悪さをお楽しみください」とあるほどです。カーレーターは移動手段であるとともに、もはや一種のアトラクションなのかもしれません。
「独特の乗り心地」「日本唯一」というふたつのセールスポイントがあるこの乗りものは、どのような経緯で設置され、またなぜ50年以上もこの地で営業を続けてこられたのでしょうか。
かつてはスキー場にもあったカーレーター
須磨浦山上遊園は1959(昭和34)年、山陽電気鉄道によって開設されました。戦後しばらくは鉄道線の設備投資が負担となり、人員整理を強いられるほどの苦境が続いた同社ですが、この須磨浦山上遊園には開業当時、予想の倍以上の行楽客が詰めかけ、ロープウェイは乗客数日本一を記録するほどのにぎわいを見せたそうです。
来園者数の増加とともに、園内には回転レストランや隣の旗振山に向かうリフトなどが矢継ぎ早に建設されていきましたが、ここで問題が発生します。ロープウェイの「山上駅」を降りてからリフト乗り場に向かうには、かなり急な坂道を100mほど登らなければたどり着けなかったのです。
いまでこそ「短距離で勾配を登る」乗りものは、モノレールにゴンドラがぶら下がったような「スカイレール」や、エレベーターの一種で、モノレールのような形状の「スロープカー」などがありますが、当時これらはまだ開発されていませんでした。そこで1966(昭和41)年、この勾配に設置されたのが「カーレーター」だったのです。
須磨浦山上遊園のカーレーターのコース外観(宮武和多哉撮影)。
ベルトコンベア製造の大手メーカー「日本コンベヤ」が開発したカーレーターは、滋賀県のスキー場「サンケイバレイ」(現在の「びわ湖バレイ」)でしか導入例がないという、きわめて珍しい乗りものでした。
須磨浦山上遊園は、コース全面が建屋で覆われているカーレーターのおかげで、急勾配はもちろん雨や風も気にせず鉢伏山上エリアへ向かうことができるようになります。そして設置から4年後の1970(昭和45)年には「大阪万博」が開催され、その来訪者の「第2の目的地」となるべく施設の充実を図った同園は、巨大噴水(現在は閉鎖)など当時としては大掛かりな設備を導入し、さらに多くの人々を集めることになるのです。
人々のウケは良いものの、維持費がかさむカーレーター
しかし、カーレーターには「維持費用」と「乗り心地」という難点がありました。
先にこれを導入したサンケイバレイは近畿有数の豪雪地帯にあり、カーレーターのコースを覆う建物の維持費用は莫大なものでした。さらに全長2kmのコースは搭乗時間が20分以上に及ぶこともあり、設置10年にしてゴンドラリフトへ置き換えられてしまいます。なお2020年2月現在は、そのゴンドラリフトからさらに置き換えられたロープウェイが稼働中です。
びわ湖バレイ(旧・サンケイバレイ)の展望台「びわ湖テラス」。かつてはこの左下に向けてカーレーターの設備があった(宮武和多哉撮影)。
カーレーターは建設費や維持費、乗り心地だけでなく、輸送力もリフトと大きく変わらないこともあり、サンケイバレイと須磨浦山上遊園の2か所以外で導入されることはありませんでした。メーカーの日本コンベアも現在は新規製造を行っておらず、また短距離登坂向きの乗りものはほかにも選択肢が多いため、須磨浦山上遊園のカーレーターは今後も「唯一」でありつづけるでしょう。
カーレーターが「日本唯一」であるがゆえの今後の悩みも
須磨浦山上遊園は、神戸市や明石市の人々にとって、遠足や行楽の定番コースでもあります。カーレーターは「子どものころの、遠足の思い出」「初デートの思い出」などと結びつき、個性あふれる乗り心地とともに、ことさら人々の記憶に残っているのではないでしょうか。
開園から50年が経過した須磨浦山上遊園ですが、昭和40年代から50年代に数多く導入した遊具やゲーム機、ジュークボックスなどが健在で、かつて遠足で訪れた人々にとっての、「大人の遠足」の場所という役割も果たしているようです。
山頂側のカーレーター乗り場。回転展望閣と鉢伏山頂はいずれも100m以内にある(宮武和多哉撮影)。
実はカーレーターの乗り心地は、機器の調整の甲斐あって、10年、20年前より格段に改善されています。ただ、現在は「乗り心地の悪さ」に喜ぶ人々も多いため、丁寧な整備により、絶妙の乗り心地を保っているそうです。
近年では年間10万人以上の搭乗があるカーレーターですが、その維持には並々ならぬ労力がかかっています。部品などは特注せざるを得ない場合も多く、2016年の設備リニューアルでは、コンベアの部品をヘリコプターで山上に運ぶなど、大掛かりで困難なものだったそうです。また、開業時には44台あったゴンドラを18台に減らすなど、経費を削減しつつ、何とか現役を保っているという状況です。
唯一、須磨浦山上遊園でしか味わえないレアな「乗り心地」を経験するなら、設備が健在ないまのうちかもしれません。
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