鉄道ファンざわめき「見たことある光景!」「いいのコレ…?」 “2度目の引退”京王の名車5000系に“粋な花道”
- 乗りものニュース |
京王電鉄の名車といわれる初代5000系電車が、各地で相次ぎ「2度めの引退」を迎えています。その一つ、富士急行線のラストランに用意されたアイテムに、鉄道ファンから「見覚えがある」との声が。舞台裏を取材しました。
再就職先の富士急からも引退「京王5000系」
スマートな外観で「京王のイメージを変えた」と言われる車両が、初代の5000系電車です。登場から「還暦」を過ぎ、“再就職先”となった地方鉄道からも引退が相次いでいます。富士急行の子会社、富士山麓電気鉄道の富士急行線(山梨県)では2024年12月15日に定期運用から引退し、担当役員が「おくりびと」のように別れを見守りました。
もと京王5000系の1000形1001号編成を撮影する愛好家ら。2024年12月15日、河口湖駅(大塚圭一郎撮影)。
京王帝都電鉄(現・京王電鉄)の初代5000系は1963(昭和38)年8月に登場。同年10月から新宿~東八王子(後に移転して京王八王子に)間をスピードアップして40分で結ぶようになった特急電車などに使いました。緑一色の電車が走っていた京王線で、クリーム色に赤色の帯を入れた塗装の5000系の外観は斬新で、京王のイメージを飛躍的に高めました。
車両は全長18mで、客室の側面に3つの片開き扉を備えています。うち1968年に新造された編成は、オールロングシートの通勤電車としては日本で初めて冷房装置を搭載しました。
先頭部の両端には、当時としては珍しかった曲線ガラスを採用。京王が1964年2月に発行した冊子「新製高性能電車5000系」には、「乗務員の視野を広げ、美観と保安の向上を図っています」と記されています。30年以上使われ、京王線では1996年12月1日に旅客運用のラストランを迎えました。
京王から譲渡を受けた富士急行線では2両編成となり、1000形の型式名で1994年に営業運転を開始。「5000形」は、1975年に登場した富士急行線の自社発注車両に名付けられていました。
その1000形が、登場から約30年後の2024年12月15日に定期運用を終了。当日は京王時代の塗装を再現した1001号編成が、下吉田駅から河口湖駅へのラストランで締めくくりました。
先頭部中央の貫通扉には、「花道」を飾るのにふさわしく花の絵を左右に描いた楕円形のヘッドマークを装着。上部にピンク色の文字で「さようなら」と記し、赤いリボンのイラストには白文字で「長い間ありがとう」と書かれていました。
これを見た鉄道愛好家からは、「見覚えがある」との声が相次ぎました。京王から初代5000系が引退する際に取り付けられたものとデザインがうり二つだったのです。異なるのは「さようなら」の下に書かれていたのが編成名の「1001F」だったのと、下部に記された社名が「富士山麓電鐵」になっていた点です。京王はそれぞれ5000系、KEIOと表記していました。
「そっくり」ヘッドマーク でもセーフ?
ラストランの車内は混雑し、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は、ラッシュ時の京王5000系を思い出しました。スピーカーに装飾された京王帝都電鉄の英語名の略称「KTR」も、郷愁をかき立ててくれました。
最終日には「富士登山電車」と1001号編成の連結運行も(大塚圭一郎撮影)。
河口湖駅に到着後、1000形を撮影しながら「京王はそっくりのヘッドマークにすることを了承しているのだろうか」との疑問が頭をもたげていました。すると、筆者が知っている方が、1000形と利用者らの様子を見守っているのに気づきました。
その方とは、富士山麓電気鉄道の奥田壮一・取締役鉄道部長です。奥田さんにヘッドマークのことをうかがうと「京王さんに協力していただきました」と明言。
「京王さんから初代5000系(の引退時)のヘッドマークを作ったデザイナーさんを紹介してもらい、その方に盤面を作ってもらいました」と奥田さん。なお、編成の反対側に装着するヘッドマークは「『さようなら』の代わりに、お疲れ様でしたとの思いを込めて『おつかれさま』にした」そうです。
京王との“異色コラボ”も
この日は鉄道好きで知られるお笑いタレント「ななめ45度」のメンバー、岡安章介さんが参加する事前申し込み制のイベントが開かれました。撮影会では、京王5000系を改造した観光列車「富士登山電車」に、京王から借りた5000系引退時のヘッドマークを取り付ける“異色コラボ”も披露されました。
奥田さんは「1000形の定期運用終了を発表してから反響が大きく、多くの方々に愛されてきた名車だと改めて実感しました」としながらも、定期運転を終えるのは「(交換用の)部品がだんだんなくなってきてしまったとか、輸送力とかに鑑みて」だと説明します。
富士急行線は最高速度を70km/hに設定していますが「1000形は最高60km/hまでしか出していません」と打ち明けました。また、2両編成の1000形の定期運転終了後は、原則として3両編成で統一されます。これによって「沿線住民だけではなく、訪日客を含めた旅行者も各駅停車にけっこう乗る中で、輸送力が向上する」と説明しました。
京王の初代5000系の譲渡車両では、一畑電車(島根県)の5010・5110号車も2025年1月13日で運転を終えて引退。伊予鉄道(愛媛県)に渡った電車も、2025年2月に導入が始まる新型車両7000系に順次置き換えられて廃車になります。
一方、岳南電車(静岡県)と銚子電気鉄道(千葉県)の車両などは、引き続き主役級の活躍を見せています。「頑丈にできている」(導入企業幹部)とされる京王の初代5000系の“ご長寿”が続くことを願ってやみません。
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