船の通航料「あってはならない」世界が断固反対のワケ ただ中東から戻ってくるタンカーは「再び現地へ行ける」のか?
- 乗りものニュース |

「あってはならない」 ホルムズ海峡の通航料徴収に船主協会が反対表明
「国際法に基づいて定められた国際海峡で、通航料が徴収されることはあってはならない。断固反対だ」――日本船主協会の長澤仁志会長(日本郵船会長)は強く述べます。
ホルムズ海峡をいち早く4月に通過した石油タンカー「出光丸」(画像:出光興産)
米国とイスラエルが2026年2月28日にイランへの大規模な軍事攻撃を始めて以来、原油を中心としたエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥り、5か月が経とうとする今も混乱が続いています。
原油の9割を中東諸国から輸入している日本にとってホルムズ海峡の封鎖が長引けば長引くほど、経済に大きなダメージを受けることにつながります。実際、瀬戸内海汽船の広島・呉―松山航路では燃料高騰を理由にフェリーが減便となり、大手菓子メーカーのカルビーは原材料の調達不安定化を受けて「ポテトチップス」などのパッケージに使う色を減らすといった、具体的な影響も出ていました。
一時は日本関係船舶45隻と船員約1200人もペルシャ湾内に閉じ込められましたが、出光タンカーの「出光丸」(30万433重量トン)を最初に順次脱出に成功。7月7日から9日にかけて22隻がホルムズ海峡を通峡したことで、残る日本関係船舶の隻数は4隻(7月14日現在)にまで減りました。日本関連の原油タンカーは全て通過しており、8月には国内の製油所などに到着すると見られます。
長澤会長は「日本政府をはじめとする関係方面の皆さまの多大なご尽力により、ホルムズ海峡の通過準備が整った日本関係船舶は、全てペルシャ湾を出ることができた。心よりお礼申し上げます」とコメントしています。
船舶と船員の状況については6月に開かれた記者会見で「幸いにして、船員の命を守る食料や水については担保ができている。通信手段も確保されており、海運各社との連携・連絡はもちろん、家族などとの交信も届いているため、船員の精神状態は落ち着いている」と説明。ドバイやドーハ、アブダビの各空港を経由した船員交代も行うことができており、「大きな混乱は発生していない」と述べていました。
しかし、問題は解決に向かっていると言い難いのが現状です。
戻ってくるタンカー「また行ける」のか?
アメリカとイラン両国は戦闘終結に向けて6月17日に和平覚書(イスラマバード覚書)を締結したものの、攻撃の応酬が激化。アメリカは7月13日にイランの海上封鎖を再開することを発表しました。
ホルムズ海峡の「通航料」について述べる日本船主協会の長澤会長(深水千翔撮影)
イスラマバード覚書を受けて国際海事機関(IMO)は6月23日に、船舶と船員をペルシャ湾から脱出させるための海上回廊をオマーン政府と連携して設置し、日本関係船9隻を含む複数の船舶が脱出しましたが、イランの軍事組織IRGC(イスラム革命防衛隊)は大きく反発。イラン側が指定した航路以外を通る場合は対抗措置を行うことを表明します。
6月25日にはシンガポール船籍のコンテナ船「Ever Lovely」がイラン側のものと見られる飛翔体による攻撃を受けて船体を損傷し、IMOは船舶の安全を確保するため、26日に湾外への避難計画を一時的に停止しました。攻撃は現在も続いており、7月14日にはホルムズ海峡を航行していたアラブ首長国連邦(UAE)のタンカー2隻がイランのミサイル攻撃を受け、インド人船員1人が犠牲になっています。
こうした中で、日本にエネルギーを運んで来た船が、再びホルムズ海峡を通りペルシャ湾へ向かえるかについて長澤会長は「なかなか厳しいものがある」との見解を示します。
「戦闘状態が完全に終わって、本船の航行の安全が担保されない限り、我々の関係船に対して、ペルシャ湾に入っていけということは難しい。いろいろな要望があるのは理解しているが、やはり安全の重さ。そこをしっかり考えたうえで行動している」
さらに問題となっているのがホルムズ海峡の通航料です。イランはホルムズ海峡の管理権を主張し、通航する船舶に対して「サービス料」の支払いを迫っています。アメリカのトランプ大統領も一時、対イラン海上封鎖の再開と合わせて、海峡を通過する船舶に対して貨物の20%に相当する額を「安全を提供する対価」として徴収すると発表し、直後に撤回しています。
7月6日から10日かけてロンドンで開かれたIMO理事会では「ホルムズ海峡の通航は、国際法に従い、いかなる通航料も手数料も課されないまま」であることが確認されており、イランの対岸のオマーンも通航料の徴収を支持しないことを表明しています。
「国際法に基づいて定められた国際海峡において、通航料みたいなものが徴収されるというのは、あってはならないという立場は変わらない。それがもし許されるのであれば、世界に広がった場合、国際貿易に悪影響を及ぼすことは必至だと思う。我々の立場としては、断固反対という立場を貫いていく」(長澤会長)
日本船主協会は「ホルムズ海峡の従前の通航帯に存在するとされる機雷の早期・確実な除去」「通航料が課されることのない、自由で、そして安全なホルムズ海峡への復元」を日本政府などに求めています。
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