国内初「実質“寝台”バス」で横になる! 法令だいじょうぶ? 開発の秘話を聞いた
- 乗りものニュース |
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高知駅前観光がモニター運行を開始する、日本で初めてのフルフラットシート「ソメイユ・プロフォン」を備えた高速夜行バス。その試作車に、座席鉄である筆者が寝転んでみました。開発まで、試行錯誤の連続だったようです。
開発に8年「フルフラットシート」
日本の夜行バスは法令上、シートベルト装着が義務付けられているため、中国など外国で見られるような「寝台バス」は存在しませんでした。
高知駅前観光の高速夜行バス。「ソメイユ・プロフォン」と名付けられたフルフラットシートを備える(安藤昌季撮影)
そのようななか、フルフラットシート「ソメイユ・プロフォン」を装備した高知駅前観光の高速夜行バスが、2025年3月4日(火)高知発よりモニター運行されます(東京発は3月5日が最初)。当面は週1日のモニター運行とはいえ、夜行バスの歴史を変える画期的施策です。なぜ、これまでフルフラットシートは実現せず、そして今回実現できたのでしょうか。
「ソメイユ・プロフォン」の始まりは2016(平成28)年。高知駅前観光が国土交通省に「フルフラットシートは法令上認められないのか」と問い合わせたのです。国交省の答えは「フルフラット自体は法令違反ではない」でした。安全性が担保できるなら実現可能というのは、大きな前進でした。
高知駅前観光の前社長・梅原國利氏は「座席から寝台に変換する構造」の座席を思いつき、模型で試作品を製作します。座席からの変換機能を設けた理由は、汎用性が高くなることと、高速バスの法令で「寝台」は想定されていないため、「座席」状態にできないと、むしろ法律を満たせない懸念があったからです。
当初、高知駅前観光は大手座席メーカーに模型を持ち込みますが、小ロットで特殊な構造が求められるとして断念。高知県内で多様な立体物を手掛けるサーマル工房に製作を依頼しました。
座席は上下段の寝台へ可変
高速バスのメーカーは日野自動車と三菱ふそうが多くを占めており、この両社の座席を「ソメイユ・プロフォン」ユニットに交換しようとしました。寝台のために設計されたバスはなく、現用車両に合わせる必要があるわけです。どちらもエンジンのある後部の床が高く、車両前部に向けて傾斜がある点は同じですが、傾斜角度や棚の高さなどは異なり、両方に対応できる設計が求められました。
「ソメイユ・プロフォン」の当初の試作模型(提供:高知駅前観光)
ただ、軸重に余裕がなく、バスの後部になるほど装備が配置しにくかったり、エンジンのある後部の方が気温が上がりやすかったりと配慮すべき点は多く、何度も設計変更したそうです。
「ソメイユ・プロフォン」は1+1+1列、上下二段式の寝台です。座席への変換は2人がかりでなければできないため、営業運転中の座席⇔寝台変換は行われません。
筆者(安藤昌季:乗りものライター)は座席状態のユニットに着座。座席幅48cmです。肘掛けがなく、背もたれがやや直線的ですが、なかなかの座り心地でした。
寝台状態の座席幅は46~48cm。座席長さは180cm、上下空間は下段が51cm、上段が51~73cmです。上段の高さに差があるのは、後部になるにつれ天井が低いことによります。
寝台間の通路は法令上認められる範囲で最も狭くなっています。つまり、広くはありません。区画内に荷物置場もないため、大きな荷物はトランクに預けるのが前提です。なお本運行までには、上段に荷物置場を設置できるようにしたいとのこと。ただし前後方向の強度を考えると、ユニット間隔を空けて荷物置場を設けるのは難しく、ユニットを後ろに寄せて、前方に荷物置場が置けないか検討しているそうです。
高身長の人は寝台に収まるの…?
下段寝台は「区画内に転がり込む」サイズ感ですが、寝てみると快適で、足も伸ばせます。ただし外はほとんど見えません。枕は備え付けで、なかなかよいつくり。毛布は本運行時に設置されるそうです。社内からは「クッション性の改善が必要」という声もあり、さらなる改良を模索しているとのこと。寝台下にレールがあるため、収納スペースとしてはあまり適さず、辛うじて靴をしまえる程度でした。
座席を寝台状態にした車内(安藤昌季撮影)
筆者は寝台からの出方がわからず、苦労しました。運行中は揺れますから、走行中にトイレに行く場合などは慎重な動きが必要でしょう。
ところで、寝台の長さが180cmでは、高身長の乗客は横になれないのではないでしょうか。
担当者によると、高身長の社内モニターには、足を曲げて横向きに寝てもらったとのこと。身長173cm、体重70kg程度と標準体型の筆者が試すと、ぎりぎり収まる感じでした。カギは「横向きに寝る」ことです。
ちなみに寝台区画内に小物置場やコンセントはありませんでしたが、これは試作のため。どちらも本運行では装備する予定だそうです。
上段寝台へはハシゴで上がります。寸法上は下段より余裕がありますが、天井にクッションがある下段と違い、上段は構造物に頭をぶつけやすいので注意が必要です。なお、社内モニターからは、「上段の方が小刻みに揺れ、バスにはあまりない乗り心地だった。上段と下段は好みが別れた。酔ってダメというモニターは1人だけだったが、熟練運転士による運転操作が必要と感じた」との意見が出ました。
上段・下段ともカーテンは備わりません。構造上付けられないわけではなく、マグネットで付けられる試作品もテストされたそうですが、乗車人数を確認する必要上、仮に設置するにしても区画の半分になるとのことです。ただし、これは寝台にカメラを設置し、運転席からモニターで確認をすれば解決するので、この場合は完全なカーテン設置も可能という返答でした。
そのほか、「更衣室が欲しい」という意見も出ており、こちらも本運行までに検討しているそうです。
高知駅前観光としては、「モニター運行で様々なご意見を頂戴し、育てていきたい」とのことで、業界初のフルフラットシート、今から本運行が楽しみとなる車庫見学でした。
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