そのままじゃ使えない!? 大型船の燃料は「黒くてねっとり」なぜ手間のかかる重油なのか 利点は?
- 乗りものニュース |

サラサラの油とは大違い 黒くてドロドロの“重い油”
海の上を進む巨大なタンカーやコンテナ船では、自動車のガソリンや軽油とはまるで違う、独特の燃料を用いているケースが多々あります。
海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」。基準排水量は約1万2650トン、満載排水量は約2万2000トンで、ディーゼルエンジンと発電機を組み合わせた統合電気推進方式を採用している(画像:海上自衛隊)
貨物船やタンカーなど多くの大型船では、「C重油」と呼ばれる燃料が使われています。そもそも重油は粘度の違いによりA重油、B重油、C重油の3種類に分類されます。A重油は重油の中では最も動粘度が低く、茶褐色をしています。用途は、工場の小型ボイラ類をはじめ、ビル暖房、農耕用ハウス加温器、陶器窯焼き用の他に、漁船など船舶用燃料などです。
一方、C重油はA重油と比べて粘度が高く、色も黒褐色です。用途は、火力発電や工場の大型ボイラ、大型船舶のディーゼルエンジン用の燃料などです。ちなみに、B重油はA重油とC重油の中間の動粘度の製品ですが、現在はほとんど生産されていません。
ただ、このC重油は、原油からガソリンや灯油、軽油といった軽い成分を取り出したあとに残る油を中心につくられています。その粘り気は相当なもので、常温ではドロドロと重く、温度が下がるとさらに流れにくくなります。チョコレートやはちみつが、寒い場所で硬くなってしまう様子を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。
ところが、こんなドロドロの燃料のままでは、エンジンへうまく送り込むことができません。では、大型船はどうやってこの“扱いにくい油”を燃料として使いこなしているのでしょうか。
船の中に巨大な“湯せん装置” 温めてサラサラに
その答えが、「加熱」です。船はC重油を温めることで、ドロドロだった粘度を下げ、エンジンへ送り込みやすい状態にしています。
ディーゼルエンジンを搭載する大型船ではC重油を使うものが多い(画像:写真AC)
ちょうど、固まったはちみつを湯せんで温めると、とろりと流れるようになるのと同じ理屈です。船の中には、この燃料を温めるための仕組みが組み込まれており、燃料タンクや配管を温めながら、エンジンへ届けています。まさに船内に、巨大な“湯せん装置”のような仕組みがあるといえるでしょう。
どのくらいまで温めるかは、燃料の種類や粘度によって異なります。C重油は、流体として扱うために40度から70度ほどに加熱する必要があるとされ、さらにエンジンへ送り込む際には、適切な粘度になるよう、より高い温度まで加熱して使われます。常温のままでは扱いにくい燃料を、温めることでようやく使える状態にしているのです。
さらに、船を長い時間停めるときにも注意が必要です。エンジンを止めて配管やタンクが冷えると、C重油の粘度が上がって流れにくくなり、ポンプや配管に負担がかかるおそれがあります。そのため、停泊中も燃料が冷えすぎないように温度の管理を続けたり、必要に応じてA重油など流れやすい燃料へ切り替えたりする対策がとられます。
では、なぜ大型船は、こんなに手間のかかる燃料をわざわざ使うのでしょうか。
その大きな理由のひとつがコストです。C重油は、軽油やA重油などに比べて安価に調達しやすい燃料です。
大型船は大量の燃料を消費するため、燃料費は経営を左右する大きな要素です。手間をかけて加熱や管理を行ってでも、C重油を使いこなすことには、コスト面で大きなメリットがあります。
普段目にすることのない船の燃料には、扱いにくさを乗り越えて巨大な船を動かすための、こうした地道な工夫が詰まっているのです。
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