マジで「砲弾」がものの数十分で「包丁」になった…! 世界で愛好される「戦いの島の名産品」づくりを実見! 「砲弾は空からの贈り物」と匠
- 乗りものニュース |

戦争が生んだ逆転の発想 砲弾から生まれた「金門包丁」
台湾と同じく中華民国が統治し、中国大陸から最短2kmという位置にある金門の島々は、1949年から1979年にかけて激しい戦いが繰り広げられ、中国大陸側から数百万発もの砲弾を受けました。
中華民国統治下の島・金門では、中国大陸から打ち込まれた砲弾を材料にした包丁が名産品(2026年、松田義人撮影)
その激しい歴史のなかで、金門では「金門包丁」と呼ばれる“名産品”が生まれました。無数の砲弾の薬莢を溶かし、手作業で包丁に仕上げたものです。
かつては金門内に複数の業者が存在したようですが、現在残っているのは草分けである「金合利鋼刀」のみです。そのルーツは、初代の呉宗山さんが清朝時代に福建省廈門で鍛治技術を習得し、金門へ戻り1937年に立ち上げた刃物工場にあります。
その後、「古寧頭戦役」(1949年)や「金門砲戦」(1958〜1979年)で資材不足と鉄鋼輸入価格の高騰に見舞われ、金門の工場は経営難に陥ります。しかし、この災いを転機に、二代目の呉宗派さんはあることに気づきました。「撃ち込まれた砲弾の薬莢は高密度で、包丁作りに適している」と。
三代目が世界へ広げた「平和の道具」
以降、呉宗派さんは砲弾の薬莢を集めて包丁作りを始め、「金門包丁」の草分けとして知られるだけでなく、結果的に「金門の名産」を世に広めました。
そして、祖父と父の技術を受け継ぎ、さらに「金門包丁」の素晴らしさを世界中に知らしめることになったのが、三代目の呉増棟さんです。彼は技術を継承するだけでなく、自身の金属工学の知識を加え、さらに高品質な「金門包丁」を誕生させました。
悲しい戦いの産物でもある砲弾の薬莢を、人々の食を支える「包丁」に転換する試みと、その驚異的な切れ味は、世界中から評価されることとなりました。評価は地元・金門や台湾はもちろん、かつての敵地であった中国大陸側の福建省、さらに欧米にも及んでいます。
わずか数十分で完成 伝統の“神業”
現在の「金合利鋼刀」では約300種の「金門包丁」をラインナップしていますが、今も昔ながらの製法を守り、1品ずつ手作りで製造しています。
取材時、呉増棟氏は「試しに1本作って見せましょうか」と、無造作に置かれた砲弾の薬莢を手に取り、炉の中へ入れました。炉内の温度は1000〜1200度に保たれ、鋼材が溶けない程度に柔らかくなったところで叩き出し、焼き入れと冷却を繰り返しながら、少しずつ包丁の形に近づけていきます。
この一連の様子を見学すると、驚くべきはそのスピードです。砲弾の薬莢が完全な「金門包丁」に仕上がるまでの時間はわずか数十分。その神業のような技術には、ただ感動するばかりです。
「砲弾は空からの贈り物」職人が語る平和への願い
呉増棟氏に話を聞くと、「1歳から20歳まで砲弾の音を聞いて育ち、砲弾と一緒に成長してきたようなものです」「砲弾は、私にとって空からの贈り物です」と語りました。
「金門包丁」の草分けであり、代表するブランド「金合利鋼刀」のオーナー、「マエストロ・ウー」こと呉増棟さん(2026年、松田義人撮影)
この言葉には、さまざまな意味が込められています。例えば、無数の砲弾を原材料に転換できたことで、祖父や父の技術と思いを継承できたこと。そして、砲弾から生まれた「金門包丁」が、ある意味で「平和の象徴」となり得ることなどです。
呉増棟氏は、笑顔で次のように言葉を結びました。
「海向こうの中国大陸の人たちも、私たち金門人も、台湾人も元々は同じ中華民族。お互いに連携し平和的、友好的に過ごせるのが一番良い。砲弾を再利用して、新たな砲弾を作るのではなく、平和のために、人々に役立つものに再利用することに意義があると思っています」
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