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「たしかに危険」サッカー三笘選手が事故した現場に行ってみた 表示なき「隠れ歩車分離式信号」のワナ

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三笘選手と自転車の女性、双方「信号無視」のナゼ

 サッカーの三笘薫選手が2026年7月8日(水)、自転車と衝突事故を起こしたことが報じられました。幸いにも、自転車を運転していた女性は全治2週間の軽傷とのことです。この報道では、三笘選手と女性ともに信号無視をしていたことが伝えられています。しかしその文面だけでは、「いったい何が原因で事故が起こったのか」がわからないという人も多いかもしれません。

Large figure1 gallery7事故の発生した交差点。写真手前方向が国道17号中山道、奥に進むと「味の素ナショナルトレーニングセンター」がある(植村祐介撮影)

 ここでは、この事故の遠因になったとも思われる、この交差点特有の信号制御と、こうした事故が“誰にでも起こりうること”をご案内します。

 事故の現場となったのは、国道17号中山道下りが、環七通り(大和町交差点)を越えてひとつ目の交差点を右折して板橋区道第1934号線に入り、すぐのところにある板橋区清水町の交差点です。

 東西方向の区道1934号線(以下、区道)は、この交差点で南北方向に通る旧中山道(区道1935号線)と交差します。旧中山道は、北行き(下り)、南行き(上り)ともにこの交差点に向かう一方通行となっていて、区道から旧中山道へのクルマでの右左折進入はできません。

 報道によると、三笘選手のクルマは国道17号中山道側から区道に入り、この交差点の赤信号でいったん止まったのち、再発進したときに右方向、つまり旧中山道を北上してきた自転車と接触したとされています。

「一部歩車分離式信号」の複雑な制御

 実はこの交差点は「一部歩車分離式信号」、つまり赤信号、青信号とも、歩行者用と車道用が同じタイミングで点灯しない制御となっています。

 実際の運用はやや複雑です。車道用の信号がすべて赤、歩行者用の信号がすべて青の状態から、旧中山道の歩行者用信号が点滅から赤に変わります。そのつぎに区道側の歩行者用信号が青のまま、車道用が青になります。その後、区道側の歩行者用が点滅から赤になり、車道用の信号も続いて赤になります。

 こうして区道側の信号がどちらも赤になってから、旧中山道の車道用信号が青になります。このとき、歩行者用の信号はすべて赤です。そしてその旧中山道の車道用信号が赤になってから、旧中山道の歩行者用信号、そして区道側の歩行者用信号がともに青になるという流れです。

 ただここでポイントとなるのは、この交差点の歩行者用信号には「歩行者自転車専用」の標示がないことです。つまり、区道を走る自転車も、旧中山道を走る自転車も、ともに車道用の信号を守って進行する必要があるのです。

歩行者信号「青」で自転車が進むのが常態化

 しかし、「自転車は車道」を強く言うようになったのは21世紀以降のことであり、長らく実質的に「自転車は歩道」という交通政策が進められてきたのが日本です。自転車の利用者に「自転車は車道用信号を守るのが原則で、横断歩道の信号に従うのは『歩行者自転車専用』との標示がある場合のみ」という意識は希薄です。

 そのためこの交差点では、とくに旧中山道の上下線において、自転車の多くは車道用信号が赤、歩行者用信号が青のときでも区道を横断し進行するのが常態化しています。

 また区道側でも、車道用の赤信号で止まった自転車が、歩行者用信号が青になるのを見て動き出すことがしばしばです。

 三笘選手がそうした自転車につられて発進してしまったのか、それとも歩行者用信号が青になったのでついクルマを動かしてしまったのか、報道では不明です。

 ただ前述のように、旧中山道の車道用信号が赤なのに交差点に進入した女性の自転車と、区道の車道用信号が赤なのに交差点に進入した三笘選手のクルマがともに「信号無視」となり、接触したということなのでしょう。

基準バラバラ“隠れ歩者分離式”に要注意

 もし交差点の信号機に「一部歩車分離式信号」や「歩車分離式信号」という表示があれば、事故は起きなかった可能性も考えられます。

Large figure2 gallery8現場から約400m南側、旧中山道が環七通りを渡る交差点も、交通ルールと実態が乖離している。自転車が守るべき車道用信号は左矢印のみ表示されるので、自転車は歩行者用信号に従って通行している(植村祐介撮影)

 実はこうした表示の有無は、各都道府県レベルはもちろん、同じ都道府県でも統一されていないことがしばしばあります。たとえば東京都内でも「一部歩車分離式」「歩車分離式」と書かれた信号がある一方で、この交差点のように実際は歩車分離式であっても、その表示がないところが少なくないのです。

 また、自転車に「車道の信号に従う」という働きかけも、あいまいなままです。

 実はすぐ隣の交差点、国道17号中山道からこの区道に入る交差点の歩行者用信号は、2023年ごろまで「歩行者自転車専用」の表示がありました。旧中山道でも、この交差点の南で環七通りを渡る信号にも2016年ごろまで、横断歩道に並行して自転車横断帯が設置され、歩行者用信号にも「歩行者自転車専用」の表示がありました。しかしこれらの表示は何のアナウンスもなく取り外されています。

 こうした経緯から、この付近を自転車で通る人は「歩行者用信号が青で自転車は通行する」と考えている可能性が高いと思われます。もし表示を取り外すのであれば、その理由、そしてその結果、自転車の通行方法はどう変わるのかを周知すべきでしょう。

 さらに事故のあった交差点の旧中山道側には、2025年ごろから「自転車は車道の信号を守って進行してください」という垂れ幕が掲示されています。しかし、その周知が十分でなかったことは、今回の事故からも明らかではないでしょうか。

 交通規制を担当する公安委員会や警察においては、「歩車分離式信号など、重要な情報は全国どの場所でも同じ基準で表示すること」「歩道用信号を『歩行者専用』とするのか『歩行者自転車専用』とするのかについて、わかりやすい基準を設けること」を求めたいと思います。

 そしてクルマを運転する際には、こうした“隠れ歩車分離式信号”があることをしっかり理解し、また“自転車の運転者は交通ルールを知らないこと”を前提として運転することが、結果的に自衛につながることを、心に銘じておくべきでしょう。

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