「結局どこを走ればいいんですか?自転車は」 26年度から「青切符」導入でどう変わる? 「自覚を」と弁護士
- 乗りものニュース |

2026年4月から自転車も「青切符」を切られます
2026年4月1日より、自転車の交通違反に対していわゆる青切符を交付する「交通反則通告制度」が施行されます。今後は自転車であっても、交通違反をすれば罰則を受けることになります。
結局のところ、自転車は車道と歩道、どちらを走るべきなのか(画像:写真AC)
しかし、結局のところ自転車はどこを走るべきで、制度改正によって違反行為の取り締まりはどのように変わるのでしょうか。道路交通法に詳しい、弁護士法人小杉法律事務所 福岡オフィス(福岡県福岡市)の前田和基弁護士に聞きました。
前田弁護士はまず「道路交通法上、自転車は何に位置付けられるか」を、改めて認識すべきだと言います。
「道路交通法上の『自転車』とは、『ペダルやハンド・クランクを用いて、人力で運転する二輪以上の車であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のもの』を指します。そして、この定義で自転車に該当するものは『軽車両』という扱いで、自動車などと同じ『車両』に分類されているのです」(前田弁護士)
道路交通法では「自転車=軽車両」というわけですが、ではその「軽車両」は、どこを走行すべきなのでしょう。
前田弁護士は、「道路交通法第17条及び第18条の条文を要約すると、自転車は歩車道の区別がある場合、原則として『車道の左側』『車道の左端』を通行しなければならない、とされています」と解説します。つまりどれだけ往来が激しい幹線道路であっても、自転車が車道を走るのは、道路交通法上定められた走行方法であるといえます。
他方、前田弁護士は「例外はある」とも言います。「例えば、歩道に『普通自転車通行可』の標識がある場合や、児童(6歳以上13歳未満)や幼児(6歳未満)が運転する場合などは、一般的な普通自転車に限り『歩道の車道寄り』を通行することができます。
また、著しく歩行者の通行を妨げる場合を除き、『道路左側の路側帯』を通行することもできます。そのほか、自転車道が設置されている場合には、自転車道内を走行しなければなりません。このように、自転車は例外的に歩道や路側帯などを走行できる場合もありますが、基本的には車道を走行しなければなりません」(前田弁護士)
「交通反則通告制度」で何が変わるのか?
道路交通法における「自転車」「軽車両」の位置付けは、このように細かく複雑です。「自転車はどこを走るべきなのか」が正しく一般へと広まっていなかった理由は、道路交通法における「自転車」の位置付けが、細かく複雑であることが原因のひとつであるように感じます。
今こそ自転車にまつわる道路交通法を多くの人が再認識すべき(画像:写真AC)
では、2026年4月1日から導入される「交通反則通告制度」とは、どのような制度なのでしょうか。また、この制度の導入により、自転車が走るべき場所や道路交通法に違反した場合の罰則が変わるのでしょうか。
「日々自転車を利用する方にとっては、交通反則通告制度の導入で『何が変わるのか』が最も重要でしょう。まず大前提となるのは、この制度によって変わるのは『交通反則の基準』ではなく、『交通反則とされた後の処理』だということです」(前田弁護士)
つまり、「交通反則通告制度」により、道路交通法上の「自転車がどこを走るべきなのか」という点に変更があったわけではないようです。では、「交通違反とされた後の処理」はどのように変わったのでしょうか。前田弁護士さらに細かく解説します。
「これまで自転車の運転者の交通違反は、『悪質・危険な違反行為』に該当するものか否かで分けられていました。これに該当しない違反については指導警告となる一方、該当し検挙された場合は、内容によって自転車運転者講習の受講が義務付けられたり、さらに重大な場合は赤切符を交付され、刑事処分の対象となったりします」(前田弁護士)
前田弁護士によると「『交通反則通告制度』は、この検挙後の手続きを変えるもの」なのだそう。
「『悪質・危険な違反行為』に該当し、これまで講習の受講などが義務付けられていた行為に対して、制度導入後は『青切符』が切られることになります。なお、赤切符の対象となる基準や、その後の手続についての変更はありません。
青切符が切られると、反則金の納付が必要となります。この納付をしなかった場合には、刑事裁判(家庭裁判所の審判)など、刑事手続に進むことになります」(前田弁護士)
“青切符”となるような違反の例とは?
まとめると、交通反則通告制度の導入後でも、これまでは違反とされていなかった行為が違反とされることや、指導警告に留まっていた違反行為に反則金が発生することはないようです。
自転車を運転中の「ながらスマホ」は現時点でも赤切符対象(画像:写真AC)
一方で「『悪質・危険な違反行為』に該当するとされた場合には、刑事処分の対象とならなくとも、反則金の納付が必要となります。そういった行為は、より注意して控えるべきでしょう」(前田弁護士)とも強調します。
そして、肝心の「悪質・危険な違反行為」の具体例には、以下のようなものが挙げられるといいます。
・遮断機が下りている踏切への立ち入った
・ブレーキが無いなどの制動装置不良
・信号無視で交差点に進入し、青信号で走行している車両に急ブレーキをかけさせた
・傘を差しながらの一時不停止
・スピードを出して歩道を通行したことで、歩行者を立ち止まらせた
・2人乗りをしながらの信号無視
・警察官の指導警告に従わず違反を継続した
なお、「運転中のながらスマホ」「酒気帯び運転やその幇助(ほうじょ)」については、現行の道路交通法でも赤切符の対象です。
前田弁護士は、交通反則通告制度の導入には「交通事故における自転車関連の事故の割合が、年々増え続けている」ことも背景にあると言います。
「近年、交通事故事態の全体件数は減少傾向にありますが、自転車に関連する交通事故の割合は増え続けています。2024年度の全交通事故に占める自転車関連事故の割合は23.2%です。交通反則通告制度は、事故につながるような自転車の交通違反に対して、実効性のある違反処理を行うためのものです」(前田弁護士)
前田弁護士は最後に「自転車を運転する人には、自転車も『車両』であることを自覚することが必要です。青切符を切られるとはどういった行為なのか、それがなぜ違反なのか、1人1人が考えるべきだと思います」とコメントしました。
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