中学受験直前の12月、発達障害の息子から突然の「麻布受験宣言」が飛び出した! 伴走するパパはそのとき…
- マイナビウーマン |
発達障害をもつ息子とともに中学受験に挑戦、たった3つのMBA戦略を使って名門麻布中学に合格させた元・テレビ東京アナウンサーが語る子育てと中学受験の話。
元・テレビ東京アナウンサーの赤平大さんが、パパとして息子さんに全力伴走!
発達障害のわが子を、「塾通いナシ」「入試2か月前に受験決断」で中学受験に成功させ、名門・麻布中学の合格に導きました。
でも、どうして? そして、どうやって?
赤平さんと息子さんが中学受験を目指した理由、そして、赤平さんがMBAで学び子育てにおいて実践した「3つの基本戦略」を、書籍『たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。』(飛鳥新社)から一部抜粋してお届けします。
第2回は、最初は親子ともにまったく考えていなかった、「麻布中学」を第1志望に決めた経緯についてです。
なぜ 「麻布が志望校」になったのか
※画像はイメージです
小学校高学年になっても、勉強内容は変えませんでした。朝の勉強やスキマ時間に10分ずつプリントをやる、年2回の四谷大塚の『全国統一小学生テスト』を受験する、というスタイルです。ただ5年生の終盤から、不定期に日能研の模擬試験を受けるようにしました。その理由は2つ。
1つ目は、中学受験の本番までに「テスト慣れ」させるため。2つ目は「過集中」による吐き気が起こらないようにするためです。
ADHDには過集中という、過剰に集中してしまう状態になることがあります。ものすごい集中力で作業を終わらせるというメリットもありますが、その反動で体調を崩してしまうなどのマイナスもあります。
1年生の初めての夏休みの時、息子は夏休みの宿題を1日目の夜にすべて終わらせてしまいました。過集中が起こり、私がやめさせようとしても止まらず、額に触れるとヒートアップしたパソコンのように高熱を発していて、恐怖を感じるほどでした。
以前、模試の最中に過集中を起こし、「気持ちが悪い」と、途中で試験が受けられなくなったことがありました。そこで、模試慣れをして過集中をコントロールし、気分が悪くなることを予防しようと思ったのです。
四谷大塚も日能研も、模試を受けるにはインターネットで申し込みをするのですが、6年生になると必ず“志望校”を入力する必要が出てくるのです。息子の第1志望は、発達障害に手厚い私立中学A校です。ところが、この学校は“いわゆる中学受験”の対象校ではなかったため、入力の際の“志望校候補リスト“の中に含まれていなかったんです。とは言っても、志望校を入力しないと申し込みが完了しません。
「とりあえず麻布にしておこう」
まったくその気はありませんでしたが、唯一知っていた対象校が、工藤校長から言われた麻布だったので、以降毎回「麻布」と入力することになりました。
当然もれなく、模試の結果には麻布の合否判定がくっ付いてきます。判定結果は毎回「再考」。「志望校を考え直してください」という意味です。でも「とりあえず書いている」だけでしたから、息子も私も気にしません。
たまに、自宅で問題集を解いていて“出題:麻布中学“と書いてあると、
「これは麻布の入試問題だったんだね」
と、ほんのり親子の話題にあがることはありましたが、だからと言ってそれ以上、盛り上がることもありませんでした。私にとっては、あくまでも模試を受けるために「書かざるを得なかった麻布」でしたが、息子は少しずつ麻布を意識するようになっていたのかもしれません。
“小学生テスト”で「まさかの偏差値70」事件
※画像はイメージです
6年生の11月、中学受験直前、そして1年生から受け続けた息子にとって今回で最後となる『小学生テスト』が行われました。
その結果に驚きました。息子の偏差値が70を超えていたからです。
小学校高学年になってからは、平均50台半ば。それがここに来て突然の70越え――。志望校に入力した麻布はA判定。いつも“再考”だったのに、です。
四谷大塚も日能研も、塾に通っていない“外部生”が模試を受ける場合、塾の教室や提携塾の教室を使って受験させてくれます。ただ、自宅近くで毎回受験できるわけではなく、受験枠が残っている教室での受験となるため、模試受験人数が増える6年生の後半は自宅近くの教室がいつも一杯で、都内から離れた千葉や神奈川、埼玉への“遠征”でした。
この息子との模試遠征の帰り道には、試験を頑張ったご褒美に美味しいものを一緒に食べたり、ゲームセンターで息抜きしたりしていました。進学校を目指す“いわゆる中学受験”ではない息子と私にとっては、模試の結果に一喜一憂する必要がなかったので、小旅行気分だったのです。
外部生の模試の結果返却時には、必ず塾に受け取りに行く必要がありました。その際、入塾の勧誘も兼ねた「塾講師と親の面談」も必ずセットになっています。
この最後の『小学生テスト』の時も、私は結果を受け取りに行きました。すると塾の方から最初にこう聞かれました。
「赤平君は、どちらの塾に通われているんですか? SAPIXですか?」
「塾は行ってなくて、家で勉強を見ているんです。息子は発達障害があるので……」
「家庭学習だけですか!? どんな方法なんですか?」
私はこれまで行ってきた生活面の支援や勉強方法を説明しました。
「いやぁ、すごいやり方ですね……。これまで、そんな風に勉強しているという話、聞いたことがありませんよ」
受験直前の11月に起こったこの「偏差値70」事件は、私にとって1つの区切りとなりました。そもそも、
「小学生テストで全国上位に入れば、学校でいじめられなくなる」
これが、模試を受け続けた理由です。でも残念ながら、息子の順位はまったくあがらず偏差値50台をウロウロ。高学年になると、いじめはほとんど無くなっていたので、テストを受ける大義は失っていましたが、それでも続けてきました。
「最後の最後でいい成績がとれて、頑張りが目に見える形になって良かった。息子の自信になった」
そう思っただけで、この時点でもまだ決して、麻布受験は考えませんでした。
受験2か月前の「麻布受験宣言」
※画像はイメージです
いよいよ6年生の12月、私立中学への願書提出期限がやってきました。
私は予定通り、第1志望である発達障害に手厚い横浜のA校と、そこがダメだった時のために都内にある第2志望のB校、神奈川県にある第3志望のC校、この3校の願書を書いて、息子に2月の受験スケジュールを伝えました。B校もC校も発達障害に配慮のある学校で“いわゆる中学受験”の学校ではありませんでした。
その時、私は何の気なく、息子に聞きました。
「麻布はどうする? 受けてみる?」
「もし受かったら、どうする?」
息子は考える間もなく、すぐにこう呟きました。
「麻布に行けるなら、行ってみたいな」
驚きました。息子は意思決定に時間がかかるタイプで「どうしようかな……やったほうが良いかな?」と、迷ったり、自分で決めきれないことが多かったからです。
「ひょっとしたら、この瞬間は息子の人生の分岐点かもしれない……!」
直感した私は、息子の覚悟を確かめるべく畳みかけました。
「お父さん、“ダメ元”みたいな考えは嫌だよ。やるんだったら勝つために徹底的にやるよ? 絶対に合格する戦略を作るよ? 勝負するぞ? それでもいいの?」
「うん、やる」
息子は、即答でした。
この時点ですでに、私にとっては“勝ち戦”だと確信しました。麻布受験の合否の話ではありません。子育てをする中で、成功、失敗は関係なく「死に物狂いの努力」「限界を突破する経験」をさせたい、とずっと考えていました。努力して限界突破することこそが、私自身が過去に感じた“成長の鍵”ブレークスルーポイントだったからです。でも、息子は日常を生きるだけでも精一杯で、すでに頑張っています。
「これ以上の負担やストレスは、果たして大丈夫なのだろうか?」
「二次障害のリスクになってしまうんじゃないか?」
そう思って、ずっと”限界突破”トリガーは控えていたのです。
でも、もしここから息子が本気で麻布受験に挑戦して、限界突破する努力を経験できれば、最後に「やり切った」と言えるなら、結果がどう転んでも、合格でも不合格でも得難い財産になるはずです。それは私にとっての勝ち戦なのです。
2022年12月、こうして息子の麻布受験は突然に、そして慌ただしくスタートしました。
ただ、その時点でまったく準備をしていません。麻布の学校説明会にも行っていませんし、麻布がどこにあるのかすら知りません。
「あ! 出願はまだ間に合うよね?」
私は、慌ててスマホで麻布のホームページを探しました。入試日は2月1日。残された時間は2か月を切っていました。
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この続きは、書籍でお楽しみください。
赤平 大さん/アナウンサー・ナレーター
元テレビ東京アナウンサー。2009年、退社しフリーアナウンサーに転身。2017年、早稲田大学大学院商学研究科を修了しMBAを取得。発達障害と高IQを持つ息子の子育てをきっかけに、発達障害学習支援シニアサポーターなどの資格を取得し、学校や企業向けの講演活動を開始。発達障害の知識を手軽にたくさん身につけるための動画メディア『インクルボックス』も運営。
動画メディア『インクルボックス』 https://incluvox.jp
※本記事は、『たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。』著:赤平 大/飛鳥新社 より抜粋・再編集して作成しました。
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