ドローンを撃ち落す「弾なし銃」って? ウクライナ侵攻で戦い方一変 もはや“いたちごっこ”の開発競争
- 乗りものニュース |
ロシア・ウクライナの軍事対立で脚光を浴びたのが、小型の無人攻撃機「軍用ドローン」です。小型のドローン、その反撃策の開発とも、世界のメーカーにとって商機となっています。
ハイエースもアイテムに
2022年から始まったロシアのウクライナ侵攻で、兵器としての有用性が大いに証明されたアイテムといえば、なんといっても小型の無人攻撃機「軍用ドローン」でしょう。こうしたドローンは戦場以外でも、市街地のテロや一般の犯罪で使われれば脅威になることから、対抗策となる「ドローン銃」の開発も盛んになっています。近い将来、このふたつの武器は、いたちごっこの状態になるかもしれません。
ウクライナ兵とドローン(画像:ウクライナ国防省)。
小型ドローンは、遠隔操縦か自律プログラムをあらかじめ設定して飛び、一定レベルの技術があれば安価に、そして短時間で製造できるとされています。それゆえ市街地でのテロや犯罪で使われる懸念も高まっていますが、市街地で実弾を発砲して撃ち落すのは周辺への被害も心配され危険です。
そうした小型ドローンや、その対抗策の開発はメーカーにとって商機にもなっています。有人の航空機が主役の海外の航空見本市でも、「飛ぶもの」として小型ドローンの展示が多くなっています。
一方、対抗策として脚光を浴びつつあるのが、対ドローン銃です。
筆者は2023年11月のドバイ航空ショーで対ドローン銃を見てきました。これは既存のライフル銃をSFっぽくした形をしており、肩を当てる銃床部分にバッテリーを仕込み、ドローンをめがけて“銃身”から妨害電波を照射し、ドローンを無力化させるとのことでした。
そして、2024年2月のシンガポール航空ショーで展示された、同国に拠点を置くTRDシステムズが開発したものは、対ドローン銃に加えて探知用車両などで捜索・迎撃チームを組んでいるのが特徴です。
これはトヨタ・ハイエースを探知用車両とし、展張する支柱にドローン操縦電波の発信源探査装置を載せ、周囲3~4km四方をカメラとともに監視します。個人携帯用もあるようで、こちらでは周囲1kmを捜索できるとのことです。
「対ドローン銃」なにがポイント?
こうした対ドローン銃の射程は約2kmで、約30度の角度で円錐状に無力化させる妨害電波を照射します。
この時に大事なのは、ドローンが搭載した爆弾が落下の衝撃で爆発しないように「ソフトランディングさせること」だと、TRDシステムズの社員は話します。同社は既に、車両も含めた捜索・迎撃システム一式を10台以上、タイへ販売したとしており、海外セールスにも強みを持つ会社ともいえるでしょう。
小型ドローンは2024年7月に英国で行われた「ファンボロー航空ショー」でも展示されていました。小型ドローンの開発メーカーはいわゆる、スタートアップのような新興系の企業が多い印象です。それゆえ対ドローン銃の開発側も、TRDシステムズの設立が2011年のように新興企業が多いようです。
一般的に注目を浴びることはまだ少ないのですが、今後、小型ドローンによるテロや犯罪の防止に、対ドローン銃が増える可能性は高いでしょう。そうなれば、今度は小型ドローンが回避策を向上させる可能性もあります。空をめぐる各国の争いは、新たな「いたちごっこ」の段階に入ったのかもしれません。
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