「全国旅行支援」使う？　使わない？　20代～50代の声を聞いてみた

　観光需要を喚起する狙いで、「全国旅行支援」が10月11日にスタートしました（東京都は10月20日から）。同様の狙いのキャンペーンは2020年からの「Go To トラベル」（一時停止中）があり、今回の全国旅行支援との主な違いは、割引率や感染症対策の条件です。

　いっときに比べて落ち着いてきたコロナ禍ではありますが、まだまだ予断は許さない状況です。そんな中行われる全国旅行支援を皆さんはどのように感じているのでしょうか。楽しみにしている人や、あえて利用しない人などの意見を紹介したいと思います。

「流れに乗らないと損」？

「家族でちょうど『どこかに旅行しようか』という話をしていたところだったので、うれしいです。割引で浮くお金にもう少し上乗せして、追加で1カ所別の場所に旅行するか、今行く予定のところの内容をゴージャスにするかで迷っています」（30代男性）

　元々旅行を計画していた人にとって、全国旅行支援はこの上ない追い風となります。割引やクーポンで浮いたお金をそのまま財布にしまうか、別の用途に充てるか、考えるだけでも楽しい気分になれそうです。

「全国旅行支援に触発されて旅行する人」に触発されて、旅行を考える人もいるようです。

「普段はあまり旅行しないのですが、旅行の計画を話している知人を別々のところで数人見かけて、なんというか、『この流れに乗っておかないと損をしてしまう』というような焦りが生まれました（笑）。それで旅行すると決心したら、一気にワクワクした気分になりました。決まっているのは『旅行する』ことだけで、どこに行くかはまだ決めていません」（20代男性）

　2020年に始まったGo To トラベルでは、実施された約5カ月での「利用人泊数」は「約8781万人泊」と観光庁が発表しています。1人で何泊もしている人もいるので「Go To トラベルを利用した人数」はこれより少なくなりますが、かなり多くの人が利用したことがうかがえます。

　全国旅行支援を利用する人がどの程度になるかは分かりませんが、Go To トラベルの実績を参考にするなら、「自分も行かなくては損」と感じる人が多数出てきても不思議ではなさそうです。

興味あるも「よく分からず不安」

　興味がありつつも、利用に踏み切れない人たちもいます。

「ワクチン3回目接種のハードルが高すぎて…。1回目、2回目は受けたのですが、どちらも副反応がかなりきつかったので、またあのつらい思いをするのかと考えるとなかなか。旅行したい気持ちはありますが…」（40代女性）

　全国旅行支援の利用には、ワクチン3回接種済み、あるいはPCR検査等の陰性証明が必要となります（県内旅行では、知事の判断によって「ワクチン2回接種」で可能となる場合も）。ワクチン3回目接種以外の方法もあるわけですが、全員がルールを正確に把握できてはいない現状があるようです。

「割引は分かるのですが、『クーポンってなんだろう？』というのがずっと分かっていないままです。Go To トラベル、県民割ときて、今回の全国旅行支援ですが、『名前以外に何が違うのかな？』とも思っています。

しかも、『Go To トラベル事業と全国旅行支援は別の事業』とのことで、ますますわけが分からないです。いろいろ分からないことがあるので、全国旅行支援の利用に不安があります」（50代女性）

　システムをよく理解していない人にとって、全国旅行支援はハードルが極めて高いものに思えるようです。旅行代理店の窓口で相談を受けるか、あるいはネットでツアーを予約する際に、自動的に最もお得な組み合わせを表示してくれるサイトもあるので、それらを頼ると楽に済ませられるかもしれません。

「やはり感染が不安」の声も

　コロナ禍での全国旅行支援に対し、懐疑的な人ももちろんいます。

「どれだけ気を付けていようと、感染リスクが大なり小なり拡大することは間違いないので、政府が行っている旅行支援事業にはGo To トラベルの時から賛成できません。

　人間だから息抜きは必要だと思いますが、このご時世に何もその手段として『旅行』を選ばなくていいのでは、と思います」（50代男性）

「感染拡大防止の観点から、旅行すべきではないと思っています。他の人たちが行くのはいいと思います。考え方は人それぞれなので。

　ただ一つ、気分が重くなることがあります。旅行の計画や思い出を話す人との会話です。彼らの楽しい気持ちに水を差したくないので、笑って話を聞くのですが、心の中では『旅行には行かない方がいい』と考えているので、笑顔を取り繕って話を合わせるのが、かなり苦痛です」（30代女性）

　利用者の負担額の面で見ればメリットしかない全国旅行支援ですが、さまざまな見方・捉え方があるようです。実施期間は12月下旬までとされているので、しばらくは各所で旅行話が聞かれる一方、それを複雑な気持ちで聞く人がいる、という日常になりそうです。

フリーライター 武藤弘樹

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