「野放し」で事故多発! 鉄道も「モバイルバッテリー規制」は必要か 航空機みたいなルールは守れない?
- 乗りものニュース |

相次ぐ発火事故 航空機は規制強化へ
2025年1月に韓国の金海国際空港で、航空機が炎上する事故が発生しました。機内持ち込みのモバイルバッテリーが発火したとみられています。離陸前に火災が確認されたため死者は出ませんでしたが、飛行中に火災が発生していたら墜落も十分に考えられる危険な事態でした。
JR山手線(画像:写真AC)
現在の国際共通ルールでは、モバイルバッテリーの預け入れや、ワット時定格量160Whを超えるものの持ち込み禁止、100Whを超えるものは2個までと決められています。事故を受けて国交省は同年7月、機内持ち込みのモバイルバッテリーは棚に収納せず、手元で保管すること、使用する際は常に状態が確認できる場所で行うようルールを改定しました。
それでも同年10月にANA機内でモバイルバッテリーから発煙するトラブルが発生するなど、発煙・発火事故は続いています。事態を重大視した国際民間航空機関(ICAO)は、機内での使用(充電)を禁止する新ルールを3月中に制定する方針で、日本でも4月から新ルールが適用される見通しです。
しかし事故件数で見れば、最も多く発生しているのは鉄道業界でしょう。利用者数が桁違いなので当たり前といえば当たり前ですが、2010年代後半からリチウムイオン電池が発火する事故はたびたび発生しており、そのたびに世間を騒がせています。
モバイルバッテリーの普及により事故も増加傾向にあり、2025年は山手線、東海道線、東海道新幹線、上越新幹線、山陽新幹線など様々な路線で発生。2026年も1月21日に東京メトロ日比谷線、2月3日に都営新宿線と、早くも2件の事案が発生しています。
現時点で鉄道には、モバイルバッテリー持ち込み、使用に関する制限はありませんが、航空業界に倣ってルールを制定する必要はあるでしょうか。仮にルールを制定したとしても、問題は実効性です。航空機の手荷物・預け入れ荷物は保安検査で中身を確認しており、ルールに違反した荷物を発見できます。
鉄道も、可燃物や刃物など危険物の持ち込みを法令で禁止していますが、手荷物検査は行っていません。国交省が2025年にルールを改定した際も「鉄軌道事業者各社が規定する危険品持ち込み禁止の順守にご協力いただきますようお願い申し上げます」と控えめでした。
こうしたルールは航空業界と同様、過去の事件・事故という“血で書かれた”教訓です。それでありながら検査を行わないのはなぜか。一言で言えば、検査を行うと輸送を維持できないからです。
規制できない根本的な理由
羽田空港の1日あたりの国内線旅客数は約17万人、半分が出発とすると約8.5万人が保安検査を受けている計算です。一方、JR東日本には乗車人員が8.5万人以上の駅は47もあります(2024年度)。
羽田空港第1・第2ターミナルビルの総面積が計60万平米なのに対し、約43万人が利用する東京駅は18万平米しかありません。高田馬場や五反田など、山手線のみが停車する小規模な駅ながら10万人を超えている例もあり、これでは検査などできるはずがありません。
鉄道で検査の実施例がないわけではありません。中国では高速鉄道や地下鉄で金属探知機やX線を用いた手荷物検査を実施していますが、航空ほど厳密なチェックではないようです。それでも広大な待合スペースを用意した上で実施しているため、日本が真似するのは難しいでしょう。
そこまでの規制が必要かという疑問もあります。密閉空間における発煙・発火が重大な事故につながりかねないのは鉄道も航空も同じですが、飛行中の火災が対処困難なのに対し、鉄道は速やかに停車できます。車内空間も広く、消火作業、荷物の移動、避難が容易なので、仮に発火しても航空ほど深刻ではないという見方もあります。
モバイルバッテリーに限れば、この指摘は正しいかもしれませんが、問題を危険物まで広げると話はややこしくなります。モバイルバッテリーよりはるかに危険なガソリンや凶器は秘密裡に持ち込まれ、多数の人を殺傷します。それは1995年の地下鉄サリン事件や、2015年の東海道新幹線放火事件、2021年の京王線刺傷事件などの実例が示しています。
「鉄道に手荷物検査は不可能、事件は想定外」で済ませてよいのか、それこそがモバイルバッテリー規制問題の本質的な問いなのかもしれません。
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