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小泉大臣「中国から演習の事前通告なかった」←ナゼ問題? 紐解くカギは“海のルール”にアリ

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  • 乗りものニュース
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小泉防衛大臣が臨時会見で明かした「新事実」

 小泉防衛大臣は2025年12月10日、防衛省において臨時会見を行いました。主題はもちろん、12月6日に発生した、中国海軍の空母「遼寧」所属の艦載戦闘機J-15による、航空自衛隊のF-15戦闘機に対するレーダー照射事案です。しかし、その中で小泉大臣は次のような発言をしています。

Large figure1 gallery4 12月6日、防衛省内で臨時記者会見を行う小泉防衛大臣(小泉防衛大臣のXより)。

「空母『遼寧』の艦載機がどのような規模でどのような区域において訓練を行うのかという具体的な情報は自衛隊にもたらされておらず、また、訓練を行う時間や場所の緯度・経度を示すノータム(航空情報)もなく、船舶等に示す航行警報も事前に通報されておりません」

 これは、中国軍が日本側に訓練海域を事前に通告していたにもかかわらず、自衛隊機が訓練エリア内に進入してきたという中国側の主張に対する、小泉大臣からの反論と考えられます。

 レーダー照射事案が発生した12月6日当時、「遼寧」は沖縄本島と沖大東島の間の海域を航行しており、ここは日本のEEZ(排他的経済水域)にあたります。小泉大臣の説明が事実であれば、中国軍は事前通告なしに日本のEEZ内で軍事演習を実施したことになりますが、これは問題となり得るのでしょうか。

 そこで、ここでは国際社会における共通の法規範である国際法に照らして、問題の有無を考えてみることにしましょう。

 そもそもEEZとは、領海などの幅を測る際の基準線である基線から200海里(約370km)の範囲で設定できる海域のことです。海洋に関するさまざまなルールについて定める「国連海洋法条約(UNCLOS)」によると、沿岸国の主権が及ぶ領海とは異なり、EEZにおいて沿岸国(この場合は日本)に認められるのは、魚介類や鉱物などを含む天然資源の探査、開発、保存および管理などに関する主権的権利と、人工島、施設および構築物の設置や利用、海洋環境の保護および保全、海洋の科学的調査などに関する管轄権に限られています。

 このEEZにおいては、沿岸国以外の国にも航行の自由や上空飛行の自由が認められており(UNCLOS 58条1項)、一般的に他国軍による軍艦の航行や軍用機の飛行、さらに軍事演習の実施も許されると解されています。

よって、中国海軍の艦艇が日本のEEZ内で演習をすること自体は、国際法上なんら問題ないことになります。

他国のEEZ内で演習はOK! でも“ある条件”が

 ただし、いくら演習の実施が許されているといっても、好き勝手に何でもできるというわけではありません。というのも、他国のEEZ内における活動に関して、UNCLOSの58条3項に次のような規定があるためです。

Large figure2 gallery5 防衛省・統合幕僚監部が発表した「遼寧」ほかの12月6日から7日にかけての行動概要(画像:防衛省・統合幕僚監部)。

「いずれの国も、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この部の規定に反しない限り、この条約及び国際法の他の規則に従って沿岸国が制定する法令を遵守する」

 この沿岸国の権利及び義務に関する「妥当な考慮」とは、EEZの法的性質を考えると、たとえば漁船を含む船舶の航行や航空機による上空通過を妨げたり、あるいは海上の財産や人命を危険にさらしたりすることがないよう、当該国が沿岸国(およびEEZを利用するその他の国)に対して一定の配慮を行うことを指すと考えられます。そして、軍事演習の場合には、たとえば演習実施区域を事前に沿岸国などへ通報することが、この妥当な考慮の一例にあたり得ると考えられます。

 そのうえで、最初に触れた小泉大臣の発言を見てみると、中国側は演習実施に先立ち航空機への警戒を促す「Notice to Airmen (NOTAM:ノータム)」や、船舶に対する航行警報を発出していなかったわけですから、これは「妥当な考慮」を払うという条約上の義務に違反している可能性を指摘できます。

 この点に関して、実弾射撃を伴わない、艦載機の発着艦のみの演習ならば船舶の航行や航空機の飛行に影響を及ぼさないため、事前通告は不要との反論も考えられます。しかし、演習海域が沿岸から相当距離のある場所ならばいざ知らず、防衛省が明らかにしているところでは、12月6日から7日にかけて、「遼寧」は沖縄本島と沖大東島の間の海域を抜け、鹿児島県喜界島の東約190kmの海域まで進出しています。とすれば、船舶の航行や民間航空機の飛行に影響が及ぶ可能性もあるため、やはり事前通告は必要だと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。

 そうしたことを鑑みると、中国海軍による演習実施そのものは問題ないものの、それを行う際に必要とされる措置をとらなかったことは、問題であると言えるでしょう。

過去には事前通告したけど「それダメ」な例も

 ちなみに、中国軍による軍事演習と日本のEEZを巡っては、3年前の2022年にも大きな問題が起こっていました。2022年8月4日、アメリカのペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問したことを受けて、かねてから台湾に対して軍事的威圧を行っていた中国が、台湾を包囲するような形で周辺海域に弾道ミサイルを発射・着弾させたのです。

Large figure3 gallery6 防衛省が発表した2022年8月4日に中国軍が発射した弾道ミサイルの弾着海域図(画像:防衛省)。

 このとき、中国は事前に軍事演習を実施する海域を図示して、船舶や航空機の進入を禁じる旨の公示を行ったのですが、そのなかに日本の排他的経済水域も含まれていたのです。そして、中国軍が発射した弾道ミサイル9発のうち、5発が実際に与那国島南方沖に広がる日本のEEZ内に弾着したことが、防衛省により確認されています。

 これを受けて、当時の岸防衛大臣は臨時会見を実施し、中国の行為を次のように非難しました。

「わが国EEZを含む、わが国の近海に設定された訓練海域に弾道ミサイルが落下しており、わが国の安全保障及び国民の安全に関わる重大な問題であります。強く非難いたします。また、中国に対して外交ルートを通じ抗議をいたしました」

 このように、日本政府は中国側の演習実施を強く非難したわけです。なお、このとき中国は事前に訓練実施海域を公示しており、一見すると日本に対して「妥当な考慮」を払っているようにも思えます。しかし、たとえば軍艦による実弾射撃ならば、仮に誤って民間船舶が演習区域内に進入してきた場合、即座に演習を中断することができます。しかし、弾道ミサイルの場合は一度発射すればこれを呼び戻すことはできないほか、そもそも着弾海域周辺における民間船舶の有無を正確に確認することも難しいと言えます。

 事前に通告している海域に入ってくる方が悪い、という意見もありそうですが、そもそもEEZ内の航行は自由であり、演習海域を他国の船舶が航行することを止めることはできません。こうした理由が重なって、日本政府としては中国による「妥当な考慮」が払われなかったとして、抗議に踏み切ったと考えられます。

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