中古空母は“届いた後が大変!”かつてブラジルの海軍象徴がたどった「あんまり」な運命とは 最後は押しつけ合い!?
- 乗りものニュース |

かなり不遇だった中古空母がある⁉
インドネシア海軍は2026年9月24日、イタリア海軍で運用されていた「ジュゼッペ・ガリバルディ」を取得し、「シュリーヴィジャヤ」として就役させたと発表しました。同艦はイタリア海軍から0円で譲渡された空母です。当初、イタリア側は同艦の資産価値を約5400万ユーロ(約100億円)と評価していましたが、友好国との関係強化の一環として、無償で譲渡することになりました。
空母「サンパウロ(画像:ブラジル海軍)。
当然、イタリアには年間の維持費などを考えれば、無償で譲渡した方が得という思惑もあったわけですが、過去には、きちんと資金を支払って購入した中古空母だったにもかかわらず、大失敗に終わった例も存在します。それが、ブラジル海軍の空母だった「サンパウロ」です。2023年2月3日、解体をめぐる問題からブラジル沖を長期間漂流した末、自沈処分という不遇な運命をたどった艦でした。
同艦はもともと、フランスでクレマンソー級航空母艦「フォッシュ」として1963年7月に就役しました。1980年代のレバノンや1990年代のユーゴスラビア内戦などに派遣された後、2000年11月15日に退役しました。
この頃、ブラジル海軍は老朽化した空母「ミナス・ジェライス」の後継艦を探していました。そこで白羽の矢が立ったのが「フォッシュ」で、1200万ドルという空母としては格安の価格で、2000年11月にブラジル海軍が購入し、「サンパウロ」として再就役させることになりました。
当時、アルゼンチン海軍はすでに空母「ベインティシンコ・デ・マヨ」を退役させており、「サンパウロ」はブラジル海軍唯一にして、南米でもただ1隻のジェット機が発着艦できる空母でした。そうした貴重な戦力だった「サンパウロ」は、なぜ自沈することになったのでしょうか。
元々老朽化が深刻で数年しか動かなかった…
実は、引き渡した側のフランスでは、すでに艦齢が40年以上に達していたことから、当時から「今後、満足に運用するには約8000万ドルの修理費が必要だ」とする報道もあったそうです。ブラジルに引き渡される以前から、かなり老朽化していたことがうかがえます。そして、この指摘が事実だったことも、すぐに判明することになります。
「サンパウロ」に駐機されるAF-1「ファルカン」(画像:ブラジル海軍)
「サンパウロ」は最初の3年間こそさまざまな任務をこなしたものの、その後は問題が頻発します。まず、2005年5月に同艦で火災が発生しました。原因は蒸気パイプラインの破損で、修理のため約4年間、艦隊を離れることになります。この後も同艦は、事故による損傷の修理や近代化改修のため、2010年まで断続的にオーバーホールを繰り返すこととなります。
その後もトラブルは収まらず、エンジンや推進シャフト、カタパルトなどで不具合が頻発します。古い艦であるため、パーツの確保も困難になっていたそうです。酷使したパーツを交換できず、その影響で別の場所でも故障が発生するといった状態だったようです。
そして2012年2月、「サンパウロ」は再び大規模な火災事故を起こします。この火災によって再び任務を行えなくなりますが、ブラジル海軍は4年間のアップグレードプログラムを実施し、修理と並行して艦の寿命延長や近代化改修を行おうとします。
当初の予定では、このアップグレードによって「サンパウロ」を2039年まで運用する計画でした。しかし、修理や改修に莫大なコストがかかることが判明。2017年2月14日、海軍は近代化計画を打ち切り、運用終了を発表し、同艦を解体することとなりました。
退役後も大問題となる!
しかし、同艦の受難は退役後も終わりません。
完成間近だった「サンパウロ」の艦載機となる予定だったKC-2(画像:ブラジル海軍)
同艦は廃棄が決まり、2019年9月に解体業務を請け負うトルコの会社が買い取り、トルコのイズミルへ向かうことになりました。しかし、断熱材として健康被害をもたらすとされるアスベストが数トン使用されていたため、同艦の曳航中にトルコの野党や環境団体が、同艦の受け入れ拒否運動を展開。これを受け、2022年8月、トルコ政府は、同艦が2回目の含有物検査を受けなかったことを理由に「トルコ領海への進入は認められない」として、受け入れを拒否する事態となってしまいます。
「サンパウロ」は仕方なくブラジルへ引き返すも、ブラジル側も同艦の受け入れを拒否。2022年10月以来、同艦はペルナンブコ州沖をさまよい、翌2023年2月3日、浮力などが失われつつあることを理由に、環境省や環境団体の反対を押し切る形で、海軍が水深5000mの海底に自沈処分しました。
しかし、同艦の艦載機であるAF-1「ファルカン」に関しては、1998年にようやく空軍との政治的な対立を乗り越えて手に入れた固定翼機ということもあり、そう簡単に手放すわけにもいきません。そのため、将来的な空母の再導入に期待し、半ば意地ともいえる形で運用されています。
同じく「サンパウロ」に艦載する予定で、ターボプロップエンジンを搭載した早期警戒機であるKC-2も開発中でしたが、こちらは「サンパウロ」の自沈から数日後に計画が破棄されました。
なお、同艦の姉妹艦であった「クレマンソー」も、1997年10月に退役したにもかかわらず、アスベスト問題によって各国をたらい回しにされ、2009年になってようやく解体されています。
インドネシア海軍で「シュリーヴィジャヤ」となった「ジュゼッペ・ガリバルディ」は、「サンパウロ」よりも小型で、アスベストの危険性が本格的に認知され始めた1980年代に建造された空母であるため、同艦のような事態になることは考えにくいでしょう。
一方、艦載機については、「ジュゼッペ・ガリバルディ」が運用していた垂直/短距離離着陸機であるAV-8B「ハリアーII」を、インドネシア海軍は保有していません。そのため、今後は無人機を運用するための改修などを行うと報じられています。こうした改修が成功するかどうかに、今後この空母がどのような運命をたどるのかがかかっているといえるでしょう。
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