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もはや特急以上!? 西武の新車両「トキイロ」に座ってみた 進化が止まらない“デュアルシート”の世界

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デュアルシートの進化を実感

 西武鉄道は2027年春、新宿線の特急「小江戸」を、新車両「トキイロ」を使った「トキイロエクスプレス」に置き換えます。トキイロの特徴は、ロングシートとクロスシートを切り替えられる「デュアルシート」です。

Large figure1 gallery97西武の新車両「トキイロ」の座席(安藤昌季撮影)

 特急「小江戸」は、特急形の10000系電車「ニューレッドアロー」で運行。座席間隔1070mm、回転式リクライニングシート装備で、各社有料特急の中でも比較的快適な車両です。こうした特急列車を、通勤列車と兼用の4扉デュアルシート車に置き換えることは、全国でも初めての試みといえます。

 このデュアルシートですが、近年、大きな進化を遂げています。現在のようなデュアルシートは、1996(平成8)年に近鉄が2610系電車を改造したことが始まりです。「L/Cカー」と名付けられた座席は、背もたれの高いクロスシートがラッシュ時には回転してロングシートになるというものでした。有料特急と比較すると座席は硬めで、リクライニングなどの付帯機能もありませんが、それでも長時間乗車時の快適性はかなり向上し、5800系電車、5820系電車にも採用されました。

 なお、近鉄は2024年からデュアルシート車の8A系電車を投入。さらにこれと同様の設計で1A系電車、6A系電車なども投入しています。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は座席好きな「座席鉄」として、6A系のデュアルシートには座っていますが、やや硬めの座面。背もたれは手堅い形状で、枕があることは進歩と感じます。ただ、基本的には有料列車用ではないため、リクライニングやドリンクホルダーといった付帯設備のない構成です。

 その後、JR東日本が2002(平成14)年に、仙石線用205系電車の一部に「2WAYシート」と称するデュアルシートを採用しました。これも付帯設備などはありませんが、座席はクッション性が高く、座り心地は悪くありませんでした。

 有料列車用となったのは、2008(平成20)年の東武50090系電車です。「マルチシート」と呼ばれていました。通勤時間帯にクロスシートで有料列車として走っています。これも手堅い座り心地でしたが、付帯設備はありませんでした。

 2017(平成29)年の西武40000系電車で、デュアルシートは変化を始めます。コンセントやドリンクホルダーが付きました。この水準は東急・京急のデュアルシートも踏襲しています。西武40000系には車いす対応トイレや空気清浄機、フリースペースも設けられています。同年導入の京王5000系電車は、有料の「京王ライナー」で音楽を流すサービスも行われました。

 2020年登場のしなの鉄道SR1系100番台は有料快速列車で、初めてデュアルシートにテーブルを設置しました。デュアルシートは通常、ロングとクロスを自動転換する関係で、座席背面にテーブルが設置できません。肘掛けも細いためインアームテーブルの設置も難しいのですが、しなの鉄道では座席を向かい合わせのボックス席状にして、2席に大型テーブルをはめ込んで使えるようにしています。

 2022年登場の京王5000系増備車両では、デュアルシートにリクライニング機能が初めて備わりました。リクライニング角度は東海道新幹線の普通車に匹敵し、かなり快適な座席に進化しました。

「トキイロ」の座り心地は?

 そして2027年春、二つのデュアルシート車が登場します。阪神電鉄の3000系「らくやんシート」と、冒頭で紹介した西武トキイロです。

 らくやんシートはコンセント、リクライニング機能、ドリンクホルダーを装備し、座席幅470mm。特筆すべきは3扉車であることもあり、景色が見えない座席がないということです。京王5000系は窓位置との配慮が見られたものの、扉に近い進行方向の座席はほぼ景色が見えない設計だったため、これは進歩といえるでしょう。

 最後にトキイロについて。座席間隔1010mm、座席幅460mm、車端部のロングシートは465mmという仕様です。デュアルシートは座席を回転する都合上、座席間隔1000mm程度が多いため、寸法は標準的です。リクライニング機能とドリンクホルダー、コンセントが設置された最新仕様です。

 トキイロの座席は、2026年8月に開催された鉄道イベント「鉄道博覧会2026」で、実際に座りましたが、歴代のデュアルシートとしては最高の座り心地と感じました(個人的には西武001系電車「ラビュー」の座席より好みです)。特に背もたれの設計に無理がなく、座面もしっかりとしたものでした。クッション性も比較的柔らかめで好感が持てました。肘掛幅も心持ち、既存のデュアルシートより広く感じられました。

 帰路に、置き換え対象の10000系「ニューレッドアロー」で帰りました。リクライニング角度は10000系の方が大きいですが、座席形状はトキイロが勝り、総合的に快適性では上でした。もちろんトキイロには、10000系のような大きな窓や背面テーブルはありませんが、コンセントはあります。最大1時間程度の乗車なら問題がない範囲と感じられました。

 トキイロの座り心地は、有料特急車両の水準に完全に到達したと感じられます。

 ちなみに今後ですが、コイト電工が2023年の第8回鉄道技術展に出品したデュアルシートには、背面テーブルやB6サイズのインアームテーブルが備わっていました。背面テーブルは自動収納できないと座席回転時に干渉する問題がありますが、小田急ロマンスカーの60000形電車「MSE」は座席間隔983mmながら、インアームテーブルを出したままで、座席回転が可能です。今後のデュアルシートの改善点といえるでしょう。

 デュアルシートは、座り心地ではすでに特急車両に迫りました。今後はテーブルや車窓といった弱点まで解消されれば、「通勤車両と特急車両の両立」が本当に実現するのかもしれません。

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