お値段「2億円のベンツ」が走った! 90年前の“巨大はしご車”が奇跡の復活 10年かけた「執念のレストア」で名古屋に再び咆哮
- 乗りものニュース |

戦前のはしご車が見事な走行を披露!
2026年1月11日、名古屋市消防局は「令和8年消防出初式」を名古屋港ガーデンふ頭(名古屋市港区)で開催しました。
往年の姿を見せるはしご車(2026年1月11日、鈴木伊玖馬撮影)
イベントでは市内の消防署に所属する消防職員と消防団員が集結。大迫力の一斉放水や、多数の消防車も参加した消防訓練、消防ヘリコプターの展示飛行など、さまざまな催し物が行われました。
そのイベントの中でも、大きな注目を集めたのが「メルセデス・ベンツ 機械式はしご車」です。この車両は今から90年前に使われていたはしご車であり、昭和40年代に第一線を退いた後は長らく“忘れられた存在”となっていましたが、このたび久方ぶりに市民の前に登場し、走行まで披露しました。
そもそも、このはしご車は1935(昭和10年)製で、名前の通りベンツ製(ぎ装はカールメッツ)になります。値段は当時で7万2500円、いまの金額にすると約2億9000万円相当になるそうです。
導入後は33年間にわたって名古屋の街を守り続けてきましたが、1968(昭和43)年に老朽化などを理由に出動車両から外れ、その後は市内の守山区にある消防学校で教材として保管されていました。
ボディサイズは全長9520mm、全幅2260mm、全高2840mm。消防車らしく非常に大きな車体をしています。車体総重量は10t超えだといいます。
特に目立つのはフロント部分の大きさ。グリルやボンネット、それにタイヤフェンダーなど全てが大きなサイズです。また、フロントグリルの上には現在と変わらぬベンツのエンブレムを装備。その偉容を漂わせています。
側面には大型のサイドステップを設置。上側には緊急走行時に鳴らしていたのであろうサイレンや鐘も備えています。こちらも稼働状態にあり、特にサイレンはエンジン音に負けないほどの音を響かせます。
そして、車体後方で大きな存在感を示すのが巨大なはしごです。最大伸長で30m。今よりずっと高層建築物の少ない1930年代ですから、さまざまな災害現場で重宝されたであろうことが想像できます。
はしごの下には消火のためのポンプが置かれています。タービン2段式のポンプで、規格放水量は660ガロン(約2500リットル)、最高圧力は180psi(ポンド)(約1.24MPa)となっています。
エンジンは最大95馬力を出力するM68型直列6気筒ガソリン・エンジンをフロントに装備。戦前の物というのもあって、出力の割にはかなり大きなサイズをしていました。また、運転席後方にはポンプ室を設置。ここで放水出力などを操作していたそうです。
10年越しでレストアが終了
退役後、消防学校の教材として備品扱いになっていたはしご車。その後イベントなどで展示され、最低限の整備もされていたようです。しかし2010(平成22)年に職員有志が走行を試みた際には、ブレーキやミッション等に問題が発生していました。
10tの巨体が動いた!(2026年1月11日、鈴木伊玖馬撮影)
そこで名古屋市消防局は2016(平成28)年に中日本自動車短期大学(岐阜県坂祝町)と協定を締結。大学の教育研究なども兼ねて、本格的なレストアを実施することになりました。
レストアに際しては、エンジンやトランスミッション、サスペンションに加え、フレームやボディ、燃料タンク、電装品といった細部まで徹底的なレストアが行われています。
関係者いわく、特に苦労したのがクラッチとのこと。今の自動車とは全く異なるタイプだったため、代わりの部品も見つかりませんでした。そこでクラッチを専門会社に送り、素材などを細かく分析。新しくパーツを自作しています。
レストア作業に際してはドイツ本国にあるメルセデス・ベンツの博物館に協力を依頼。当時の部品はほとんどなかったようですが、それならと、必要なパーツは再度1つ1つ作り直しています。また、トヨタ博物館がほぼ同年代に作られたベンツ車を保有していたので、実際に行って観察し、参考にしたそうです。
苦労の甲斐もあって、出初式では見事な走行を披露していました。古いエンジンなのもあってか、走行する30分前から長めに暖機運転をしていましたが、エンジン音は好調そのもの。90年前の車両ではありますが、その動く姿は往年の活躍を思い出させるに十分なものでした。
名古屋市消防局いわく、ここまで古いはしご車は国内で唯一とのこと。今後は関係施設などで展示するとともに、、市民の防火思想の普及高揚に寄与するよう活用していく予定だそうです。
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