ハデさには欠けるかもしれない多用途ヘリUH-1Jが陸自のヘリで最も多く配備されるワケ
- 乗りものニュース |

兵器、あるいは装備品には、ひとつの性能に特化したものが見られる一方、「多用途」をうたうものも見られます。そのひとつ、陸上自衛隊のUH-1Jは、その数の多さと使い勝手の良さから、災害派遣の現場でもよく見られるヘリコプターです。
「多用途」をうたう陸自のヘリ 実際どう使うの?
陸海空3つの自衛隊のなかで、最も多くのヘリコプターを持つのは陸上自衛隊です。攻撃ヘリコプターAH-64D「アパッチ」や大型輸送ヘリコプターCH-47J/JA「チヌーク」といった多様な機種を揃えており、それぞれに明確な役割が割り振られていて、各々、得意な分野や不得意な分野があります。
そうした数あるヘリコプターのなかに、「多用途」とうたうヘリコプターがあります。それがUH-1J「ハンター」とUH-60JA「ブラックホーク」です。
横浜みなとみらいを背景に編隊飛行するUH-1J。首都防衛を担当する第1師団の翼(武若雅哉撮影)。
UH-1Jは1959(昭和34)年にアメリカ陸軍で採用された「HU-1」が原型で、ベトナム戦争から実戦投入された歴史あるヘリコプターです。一方のUH-60JAは、1979(昭和54)年にアメリカ陸軍で運用が開始された「UH-60A」というヘリコプターの派生形で、日本独自の改良が加えられています。
UH-1Jよりも高性能なUH-60JA。高性能故に調達価格が高く全国への配備が進まない(武若雅哉撮影)。
両者ともに、上述のように「多用途ヘリコプター」という位置づけですが、UH-60JAは機体の調達価格が1機約36億円となっていて、UH-1Jの調達価格、約12億円と比較すると、その差は約3倍にもなります。そのため陸上自衛隊では、高い費用対効果が見込める「ハイローミックス(High-Low Mix)」という手法で、高性能機であるUH-60JAと、低価格でそこそこの性能であるUH-1Jを合わせて配備しています。
そして「多用途ヘリ」の名のとおり、多様な用途に使われることからも、UH-1Jは陸上自衛隊で最も多く配備されています。
「大は小を兼ねる」が通用しない現場で光るUH-1J
「そこそこの性能」と前述したUH-1Jですが、潜在的な実力はキラリと光るものがあります。
離島防衛(訓練)のため水陸機動団の隊員たちを運ぶUH-1J(武若雅哉撮影)。
操縦において一部の機能が自動化されているUH-60JAと比較すると、全てが手動のUH-1Jは、その機動においてパイロットの技量に左右される要素が多く、一部ではUH-60JAを上回る操縦が可能であるともいわれています。そのせいか、全手動のUH-1Jを操縦したいというパイロットも数多くいるそうです。
さらにUH-1Jは、そのコンパクトさも強みになっています。
大量の物資や人員を一度に輸送することができる大型輸送ヘリコプターCH-47JA(手前)とCH--47J(奥)(武若雅哉撮影)。
災害派遣時に物資を輸送するためCH-47J/JAを着陸させようとした場合、着陸する場所には約100m四方の、サッカー場くらいのスペースが必要になります。あわせて、大きなローターから吹き下ろされる強烈な風(ダウンウォッシュ)で周辺にあるものが飛散しないように処置する必要もあります。
その点、UH-1Jは約30m四方のスペースがあれば着陸することができます。UH-60JAも同じくらいのスペースがあれば着陸できますが、配備されている駐屯地は千葉県にある木更津駐屯地を筆頭に全国で6か所と少なく、目的地が遠く迅速に現場進出のできないケースも見られます。一方でUH-1Jは全国の師団飛行隊にあまねく配備されているため、ほぼ全国をカバーしています。この「全国をカバーしている」ということは、いざという時、すぐに現場に駆け付けられることを意味します。
こうしたUH-1Jの特徴は、任務にも大いに生かされています。その事例のひとつが「令和元年台風19号災害派遣」にて見られました。
災害派遣の現場で「多用途ヘリ」UH-1Jは…?
2019年10月12日、猛烈な勢いを保ったまま関東に上陸した台風19号は、各地に甚大な被害をもたらしました。
2019年10月、台風19号の影響で道路が寸断された奥多摩町の道路(画像:陸上自衛隊)。
その3日後の10月15日、東京都から、道路の崩壊によって孤立してしまった集落に対する救援物資空輸の要請を受けた陸上自衛隊第1師団第1飛行隊は、預かった都の救援物資をUH-1Jに搭載し、東京都立川市の立川駐屯地から同奥多摩町に向けて飛び立ちます。このとき、第1飛行隊で写真陸曹として勤務(任期付自衛官)していた筆者(武若雅哉:軍事フォトライター)も、この一連の災害派遣を記録するべく、同任務に従事することとなりました。
立川駐屯地を飛び立ち、しばらくすると、谷の合間に目的地となる空き地が目に入りました。長辺が30mほどの、小さな三角形の駐車場です。UH-1Jが降りるには十分な広さでしたが、北側は切り立った斜面、東側と南側には電線が張られており、少しの操縦ミスで機体と障害物が接触する恐れのある場所でした。そのため、機長はホイストによる荷降ろしを選択、先に要員をホイストで降下させ、次いで救援物資を降ろしました。
UH-1Jが降りられない場所では、ホイスト(吊り下げ装置)を使い物資を降ろすこともある(画像:陸上自衛隊)。
この日は1往復のみでしたが、その2日後には総勢4機のUH-1Jが計8往復する大規模空輸が行われることになります。
15日の教訓から、UH-1Jを安全に着陸させるスペースが必要とのことで、自治体と自衛隊が協議を行い、前回の目的地から直線距離で200mほど離れた採石場が、新たな着陸地点として選定されました。
奥多摩町の採石場にて。現地は切り立った崖が多く、コンパクトなUH-1Jだからこそ降り立つことができる(画像:陸上自衛隊)。
UH-1Jが着陸し側面のドアが開かれると、東京都の職員や消防団員などによって、大量に積まれた物資がドンドン降ろされて行きます。
奥多摩町の採石場でUH-1Jから救援物資を卸す第1飛行隊、第1施設大隊の隊員たちと東京都の職員や消防隊員たち(画像:陸上自衛隊)。
こうして多くの物資を届けたUH-1Jですが、これがCH-47J/JAであれば一度の空輸で済んだかもしれません。しかし、この場所は元採石場ということもあり、平らな場所は小さく、周囲は崖に囲まれていたため、大型のCH-47J/JAの着陸には不向きでもありました。
「多用途」の名に恥じないUH-1Jの多用途ぶりは地震の際にも
そのコンパクトさから、たとえば病院の屋上に設置されている小さなヘリパッドに降りることもでき、迅速な輸送が必要となる急患搬送任務にもUH-1Jの出番はあります。
水嚢と呼ばれる空中消火器材から放水するUH-1J(武若雅哉撮影)。
またコンパクトな機体であることはすなわち機体重量も軽く、よって飛行中に生じるUH-1Jのダウンウォッシュは、CH-47J/JAと比べるとかなりマイルドです。そのため山林火災などでは、そのダウンウォッシュで火の粉を散らすことなく、狭い谷間にも入っていき、ピンポイントで火元に水を撒くこともできます。
24時間体制で待機している映像伝送装置を搭載した東部方面航空隊のUH-1J(武若雅哉撮影)。
さらに、各方面航空隊には映像伝送装置を搭載したUH-1Jも24時間体制で待機しており、災害発生時には真っ先に飛び立ち、被災地の様子を上空から撮影し駐屯地などへ伝送することもできます。東日本大震災の際には、迫りくる津波の映像をとらえたこともありました。また、2021年2月13日23時8分に発生した福島県沖地震では、地震発生の約30分後となる23時40分に映像伝送装置を取り付けたUH-1Jが飛び立ち、現地の様子を伝えています。
一見すると地味でハデさのないUH-1Jですが、1機あたり約12億円とUH-60JAに比べ3分の1程度の調達価格の安さ、そして、様々な任務に投入することができるマルチな性能を持っていることから、全国各地に多数配備され、今日も国防の最前線で飛び続けているのです。
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