「日本の造船このままじゃヤバい」国内1位と2位が合体したワケ “巨大ドック=規模の力”と業界に残る“異なる声”
- 乗りものニュース |

中韓に押される「日の丸造船」
2026年1月、日本の造船業界で大きな再編がありました。国内トップの今治造船が、同2位のJMU(ジャパンマリンユナイテッド)への議決権比率を30%から60%へ引き上げ、子会社としたのです。
JMUの呉事業所(画像:PIXTA)
両社は2021年から資本業務提携し、共同の営業・設計会社「日本シップヤード」を設立していました。その後、2025年6月には追加取得で合意し、関係当局の審査を経て2026年1月5日に取引を実行。これにより両社は連携を深め、中韓勢に対する競争力の強化を図るとしています。
かつて日本の造船は世界トップでした。しかし国土交通省の資料によると、世界の船舶受注量に占める日本のシェアは従来15~16%で推移していたものが、2024年には8%まで下落しています。
国土交通省の2024年建造実績では、今治造船が国内36%、JMUが16%で、合わせて52%を占めます。海事プレスが2026年1月7日に報じた両社トップ会見では、生産協力による建造量の拡大や共同購買に取り組む方針が示されました。
では、なぜ規模をそこまで重視するのでしょうか。カギは、船を造る巨大な「ドック」にありました。
ドックとは、地面を掘り下げた巨大なプールのような設備です。船体を組み立て、完成すると水を入れて浮かべます。大型のドックなら超大型船にも対応でき、設備や建造方法を工夫することで生産性向上にもつながります。
その象徴ともいえるのが、今治造船の丸亀事業本部(香川県丸亀市)のドックでしょう。2017年完成の新ドックは長さ610m、幅80m、深さ11.7mあります。ここには、1330トン吊りのクレーン3基が備えられており、世界最大級のコンテナ船を建造できます。
国内造船所での大型ドック新設は17年ぶりとなるもので、ブロック工場などを含む設備投資額は約400億円。2万個積みメガコンテナ船などの超大型船を建造するための整備でした。
なぜ「大きさ」がものをいう? 巨大ドックと国の後押し
中国との差は、個々のドックの大きさだけではありません。国土交通省は日本の造船所について、中国・韓国と比べ人数、敷地面積、生産量ともに事業所の規模が小さいことを課題に挙げています。中国は2024年、世界の建造量の約半分、受注量では7割超を占めました。
今治造船のドック(画像:PIXTA)
日本は上位5社で国内建造量の約8割を占める一方、世界の上位10社に入る日本勢は2社だけ。国土交通省は、こうした状況から企業間の垂直・水平連携や再編を進める必要があるとしています。
国土交通省と内閣府は2025年12月26日、「造船業再生ロードマップ」を策定しました。現在約900万総トンの年間建造量を、2035年に「1800万総トン」へ引き上げる目標です。造る力(建造能力)を10年で2倍に引き上げる壮大な計画です。
背景には大きな理由があります。四方を海に囲まれ、エネルギーや食料の自給率が低い日本にとって、貿易量の99.6%(重量ベース)を担う海上輸送は欠かせないインフラだからです。船を安定して造れる力は、経済安全保障にも関わります。
そのため国は、2035年までに官民で1兆円規模の投資実現を目指しています。「造船業再生基金」は、成果目標の達成状況を見ながら、10年間で合計3500億円規模を目指す方針です。
注目すべき点もあります。ロードマップは、業界の垂直・水平連携と再編で「1〜3グループ体制」に集約し、複数の事業者が一体で動いて生産能力を最大化する方針です。
ただ、ロードマップ公表以前から、業界内では別の連携の形も語られていました。日本海事新聞が2025年9月18日に報じた尾道造船・中部隆社長へのインタビューでは、個社の取り組みに加え、国内造船会社の間で船型・船種ごとの「すみ分け」も必要かもしれないとの見方が示されています。
ロードマップも集約の様態や連携内容には、さまざまな形を想定しています。企業統合だけでなく、共同営業・設計・調達・建造など、各社の強みを生かしながら建造能力をどう高めるかが今後の焦点です。
日本の造船を再び世界へ押し上げる挑戦は、始まったばかり。1位と2位の合流は、その第一歩なのかもしれません。
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