「ガンダム」の巨大ホバークラフト兵器はなぜエアクッションもなく浮くのか Z以降に廃れた理由とは?
- 乗りものニュース |

最大のものは陸上戦艦クラスの創作物のホバー兵器
ホバークラフト。圧縮空気を下向きに噴き出すことで、浮上航行を可能とする船舶です。浮上状態では時速100km/hを超えるものがあり、地上と海上の双方で移動できる水陸両用船舶のことです。アニメ「機動戦士ガンダム」では、ホバークラフト兵器が多数運用されています。
海上自衛隊が運用するエアクッション艇1号型。製造しているアメリカではLCAC-1級エアクッション型揚陸艇と呼ばれ海軍で使用されている(画像:海上自衛隊)
最大のものは、陸戦艇「ビッグトレー」級です。全長215m、全高85m、全幅134mは、かつての戦艦を上回るサイズ。重量は不明ですが、数万トンはあると考えられます。さらに口径数mはありそうな大型砲のほか、戦艦の主砲塔を思わせる3連装大型砲塔も装備され、小型航空機やヘリコプター運用能力まで有するバケモノ兵器です。
現在の形でのホバークラフトは、1952年にイギリスの技術者コッカレルによって発明されたものを最初とし、陸上でも移動できる船舶として注目されました。しかし、燃料費が高いこと、エアクッションのメンテナンス負担などのコストパフォーマンスの悪さや、大きな騒音が出るので使用できる場所が限られることや、悪天候に弱いといった使い勝手の悪さで、民間ではそれほど普及していません。
軍用兵器としては一般艦艇では侵入困難な浅瀬や海岸で自由に行動できることから、高速揚陸艇として進化し、アメリカ海軍が保有するLCAC-1級エアクッション型揚陸艇は、50トンを超える主力戦車を運搬できるなど、かなりの搭載能力を持つようになっています。
ロシア軍も60ノット(111.1km/h)の速度で戦車なら3両、歩兵戦闘車なら8両、歩兵最大500名を輸送できるポモルニク型エアクッション揚陸艦を保有しており、強力な高速輸送手段となっています。ただ、最大のポモルニク型でも基準排水量415トン、全長57.6m、最大幅25.6m、航続距離300浬(540km)と、それほど大きくなく、前述のビッグトレーのような動く要塞のような陸上戦艦は存在しません。実はそもそもの浮遊方法も、現実のホバークラフトとはことなります。
浮くための力はジェット推進?
ガンダムシリーズのホバー兵器は、巨体を熱核ジェットエンジンで浮上航行させています。
アメリカ海軍がベトナム戦争で哨戒艇(PACV)として投入したベル SK-5(画像:アメリカ海軍)
ジオン軍も全長48m、全幅44.7m、最高速度232km/hでモビルスーツ3機を搭載可能な大型陸戦艇「ギャロップ」や、一人乗りの歩兵用ホバークラフト「ワッパ」、高速艇「シーランス」などが存在しますが、最大の存在感を占めるのが重モビルスーツ「ドム」でしょう。
「ドム」は全備重量90トンの巨体ながら、360mmジャイアント・バズを主兵装として、最高速度380km/h(諸説あり)の高速を発揮可能で、巡航速度90km/hで5時間ホバー走行が可能という、驚くべき性能を持っています。
ガンダムの世界で、このようなホバークラフト兵器が実用化されているのは、架空の粒子であるミノフスキー粒子の存在が大きいでしょう。この粒子により、レーダーによる遠距離精密誘導は不可能となり、小型核融合炉も実現したことは、ホバークラフトの弱点である「脆弱性」「航続力が短い」を解決し得るからです。
核融合炉の開発により、高出力ファンを常時回せることによって、燃費の悪さを解決できたということです。また、ドムの脚部のようにゴムスカートを使わない空気噴射ノズルでの浮上航行は、装甲化可能な利点があり、脆弱性も解消したわけです。
また、宇宙開発が長く続いたガンダム世界では、姿勢制御スラスターを活用した姿勢制御も発達しており、弱点が解消されていると考えられます。
その一方で陸戦用の主力戦車である61式戦車、ガンタンク、マゼラアタックなどは履帯(キャタピラ)式ですが、これは射撃精度に必要な安定性でキャタピラが勝ったのでしょう。このように異常発達したガンダムシリーズのホバー兵器ですが、続編『機動戦士Zガンダム』以降では、なぜかほとんど登場しません。
これは主戦場が宇宙に移行したこともありますが、それ以上に技術の進歩により駆逐された側面が大きいのでしょう。大型浮遊兵器はより進歩した反重力システムと言うべき「ミノフスキー・クラフト」で置き換えられ、モビルスーツはスラスター総推力の向上や、変形機構の導入により、より高機動化を実現したため、不要な技術になったものと思います。
安易に前作を踏襲するのではなく、SF的見地で兵器の進歩も描写している「ガンダム」シリーズ。SFロボットアニメの先駆けらしい部分と感じられる次第です。
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