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米で起きた「航空法革命」効果は絶大か!? 航空業界にとどまらぬ多数のメリット…そのポイントは?

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  • 乗りものニュース
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アメリカでは小型機をめぐる操縦士免許と軽量スポーツ航空機の要件を中心に大規模な規制緩和が行われました。「MOSAIC」と呼ばれるこの新ルールの採用で、どのように変わるのでしょうか。

2025年7月22日に発表

 自家用機が普及している航空先進国では「ジェネラル・アビエーション(General Aviation、以下GA)」という言葉があります。日本ではなじみのない言葉ですが、航空会社を除いたすべての民間航空を指しています。諸外国ではこのGAこそ航空宇宙産業全体の基礎であると認識されています。理由は、GAに携わる人やGAを利用する人が多ければ多いほど航空会社や航空宇宙産業を目指す人材が増えるからです。当然、それを支える多くの関連企業や職種も増えることは間違いありません。

Large figure1 gallery2 南アフリカのスリング・エアクラフト社製「スリング2」。ロングビーチ空港でパイロット養成を行っているスカイクリエーション社の所有機である(細谷泰正撮影)。

 アメリカではこのGAの成長を下支えするためには大規模な規制緩和が必要と認識されるようになりました。従来の航空法ではいろいろな規制が障害となり、次々に登場する新しい技術の恩恵をGAが享受することを妨げていると考えられるようになったのです。それと同時に、飛行コストの高騰によりパイロット免許を取得するための費用が高くなり過ぎていることも問題とされてきました。パイロットの数を増やすには免許取得費用は何としても低廉化させる必要があるからです。こうした問題を克服するための議論と検討が10年以上前から行われてきました。

 そして、辿り着いた結論が「MOSAIC(Modernization of Special Airworthiness Certification)」と呼ばれる連邦航空法の大規模な改訂です。

 MOSAICでは小型機をめぐる操縦士免許と軽量スポーツ航空機の要件を中心に大規模な規制緩和を行い、GA市場の成長と活性化を目指しています。MOSAICの内容は2023年に公表され、2024年から2025年にかけてパブリックコメントの募集が行われました。そして最終的なMOSAICの詳細が2025年7月22日に発表されています。

 この新ルールは、どのようなポイントがあるのでしょうか。今回はその主な内容を見ていきたいと思います。

新ルール「MOSAIC」ポイントは?

 今回の改訂の大きなポイントのひとつ目が、「スポーツパイロット」免許の内容の変更です。スポーツパイロットに求められる主な要件として、17歳以上、英語能力、学科試験、飛行時間20時間以上の4項目については従来どおり維持されますが、この免許で操縦できる航空機の範囲が大きく拡大されるのです。

 従来は最大2座席、最大離陸重量600kg(水上機の場合は660kg)レシプロエンジン、最大速度120ノットなどの制限がありましたが、座席数に関しては最大4座(ただし搭乗者数は2名まで)とし、さらに最大重量制限は撤廃。ただし機体の失速速度はフラップを使用しない状態で59ノット以下と設定されます。

 この新しい条件を適用すると機数が最も多い4人乗り単発機のほぼ全機種、現行の小型機全体のおよそ70%が該当することになります。これは、新しいスポーツパイロットを育成するために使用できる訓練機の種類と数が格段に増えることを意味します。

 さらに、「軽量スポーツ機」の定義付けも大きく変わっています。そもそも従来の航空機では、新型機の開発と生産にはFAA(アメリカ連邦航空局)の型式証明と生産証明の二つの証明を取得することが必要で、これらは航空機メーカーにとっては大きな負担になっていました。これは旅客機でも同じで、三菱航空機の「MSJ(三菱スペースジェット。旧称MRJ)」もこれが障害となってつまずいてしまったことは記憶に新しいところです。

 軽量スポーツ航空機(以下LSA)はそれら二つの証明に代わってASTM Standardと呼ばれる工業規格を遵守していることを宣言する「適合宣言書(Statement of Compliance)」だけで済むことになります。これにより、証明取得に要していた時間と労力が大幅に節約できることになりました。これがLSAの大きなメリットですが、今まではLSAの機体重量や座席数、性能に大きな制約があったわけです。

 しかし、MOSAICの施行により、LSAに該当する機体の規模と種類が大きく拡大します。

 機体重量の制限が撤廃され(ただし、フラップを使用した状態で失速速度は61kt以下であること)、座席数は2座席から4座席へ拡大。最大速度は120ktから250ktへ緩和されます。とくに新たな最大速度はアメリカ国内で高度1万フィート以下を飛行する際の速度制限に等しいので事実上の速度制限も撤廃になります。引き込み脚、可変ピッチプロペラ、自動エンジン制御なども使用が可能になります。

 また動力源においても従来はレシプロエンジンに限定されていましたが、その条件も撤廃され、電動航空機も可能になりました。さらに固定翼の飛行機に限定されていたLSAですが、改定後は回転翼機やパワードリフト(eVTOL)機にも席数の制限こそあるものの、拡大されます。

 新たな適用範囲により、小型機として一番大量に生産されてきた4座席の単発機が軽量スポーツ機として生産が可能になります。さらに、従来と比較すると格段に緩和された手続きで生産できることにもなり、最新技術を投入した新型機の製品化も従来と比較して大幅に低コストで、しかも短期間で生産できることが期待されています。

 これは航空機産業にとっては新たなビジネスチャンスとなり、航空機の生産に他業種からの新規参入や資金流入にもつながるでしょう。

 機体の条件が大きく拡大されたことに伴い、LSAで行うことができる飛行目的も広がります。

 個人的に飛行を楽しむこと以外に、航空測量や航空写真撮影、バナー曳航と広告、グライダー曳航、パイプラインや送電線の監視、農地の監視、救助と捜索など業務目的の飛行が可能になります。これによりLSAを使用した新しいビジネスモデルが成り立つことになり、LSAを使用した事業に新たな企業の参入や投資家からの資金流入が期待できるほか、雇用の創出にも寄与するものと考えられています。

規制緩和が「優秀なパイロット教育」にもつながるかも

 さらに、MOSAICの施行では自家用パイロットがほぼすべての単発機(新しい定義のLSA)を操縦する際の身体検査要件も緩和されます。

Large figure2 gallery3 アメリカ製の水陸両用軽量スポーツ機(LSA)である「Searay」(細谷泰正撮影)。

 日中の有視界飛行に限り自動車運転免許を所持することで身体検査証明が不要に。夜間飛行を行う場合はFAA(アメリカ連邦航空局)の第三種身体検査証明もしくはベーシック・メディカル証明が必要になります。

 キットを組み立てた航空機に関しては、所有者が組み立て作業の51%以上を自分で行った場合、完成した機体の整備を自分で行うことができます。これは「51%ルール」と呼ばれる制度で、これがキット機を購入する強い動機となっています。今回の改訂により、講習を受けることですでに完成しているキット機を購入しても「51%ルール」を継承できるようになります。これにより中古キット機市場が一気に活性化することが予想されています。

 飛行学校においても変化が期待されています。

 アメリカでは航空会社へパイロットとして就職する場合、定期輸送パイロット免許などの資格以外に1500時間以上の飛行経験が最低限必要とされています。そのため、航空会社志望のパイロットは飛行教官として働きながら飛行時間を稼ぐことが一般的です。しかしそうした教官は十分な飛行時間を取得すると航空会社へ転職してしまうため、経験豊富な教官が慢性的に不足するという問題がありました。

 今回の航空法改正で予想されていることは、本業を引退した自家用操縦士の多くがスポーツパイロット・インストラクターとしてスポーツパイロットの育成という新たな副業に就くことです。

 当然、そのための資格、スポーツパイロット・インストラクター免許を取得する必要がありますが、経験を積んだ自家用操縦士にとっては比較的簡便に取得できる内容になっています。飛行訓練の現場では経験豊富なパイロットが若手の育成に当たることで訓練の質が向上し、次世代への飛行経験や飛行技術の継承が可能になると期待されています。

一方日本は?

 前述のように、今回の大規模なアメリカ連邦航空法改訂MOSAIC、は2025年7月22日に正式発表されました。施行は同日から90日後です。

 改訂の内容は世界各国の航空当局にすでに大きな影響を及ぼしています。多くの国々がこのMOSAICに追従する動きを見せているほか、南アフリカやブラジルなどではアメリカに先行して同様な改訂をすでに実施しています。

 一方、日本では時代遅れの法律がいつまでも改訂されることなく存続してしまうという残念な状況があちこちで見られ、航空法も例外ではありません。これが日本のGAの発展を妨げていることは航空関係者の間では周知の事実です。その結果、主要国の中では日本だけが唯一GAの恩恵を受けることができない経済構造になっています。これがMRJの失敗や日本の国際競争力が落ち続けている原因と無関係ではないと筆者は考えています。

 島国で海洋国家の日本だからこそGAによるメリットは計り知れないと考えられます。離島や地方の経済活性化にGAが重要な役割を果たしていることは多くの航空先進国で実証済みです。

 世界の航空当局はMOSAICへの対応をすでに始めていますが、日本の状況はさらにその前の段階です。キット機やLSAは実用機としての運航が不可能であるほか、スポーツパイロット免許にいたってはその資格すら存在しません。

 国土交通省は航空行政を司る手腕を、海外の航空業界から“見られている”という現実に気づく必要があるでしょう。

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