廃止される「高速道路を走る路線バス」に乗ってみた 知る人ぞ知る新幹線アクセス手段 だが鉄道に負けた?
- 乗りものニュース |

高速道路を走るレア路線
東急バスが、「溝の口駅~新横浜駅直行バス」(新横溝の口線)の運行を2026年3月31日限りで終了すると発表しました。
2026年3月末で運行が終了する東急バス溝の口駅~新横浜駅直行バス(柴田東吾撮影)
新横溝の口線は自動車専用道路の第三京浜道路を走行するため、座席にはシートベルトが付いているという、珍しい形態の路線です。同社は運行終了の理由として、「コロナ禍による利用者数減少以降、路線維持に努めるも状況の改善が見込めず、今後の路線維持が困難となっているため」としています。現状はどのようなものなのか、実際に乗車して確かめました。
新横溝の口線は2001(平成13)年12月16日に運行を開始しました。商業地区の溝の口(川崎市高津区)と、ビジネス街に加えて日産スタジアム(横浜国際総合競技場)や横浜アリーナといった大型施設を持つ新横浜(横浜市港北区)を直接結ぶことで、新たな需要を喚起することを目指していました。鉄道で移動すると乗り換えが発生する区間を直結します。
両区間の道のりは14.68kmで、バスは途中、自動車専用道路の第三京浜を経由します。区間は京浜川崎ICから港北ICまでの9km弱です。このため座席定員制で運行され、立席は認められていません。路線バスながら座席にはシートベルトがあり、通路の部分には補助席も備えています。
途中のバス停は溝の口駅と新横浜駅の周辺のみに設定され、第三京浜の区間にはバス停はありません。
乗車方法もやや特殊で、第三京浜をまたいだ利用に限られています。溝の口から新横浜へ移動する場合は溝の口方のバス停が乗車専用、日産スタジアムなどの新横浜方が降車専用に設定され、新横浜駅から溝の口駅へ移動する場合は逆の設定となります。
これにより、新横浜駅から日産スタジアムまでといった短距離利用は認められていません。こうした手法は、高速バスなどでも採用されているものです。
全区間の所要時間は30分程度で、毎時1本程度が運行されています。運賃は均一で、現金が500円、交通系ICが450円です。乗車時に支払う前払い方式を採用し、前乗り後ろ降りの乗車方式としています。
実際に乗ってみると
今回乗車したのは2026年1月の平日、新横浜駅15時50分発溝の口行きの便でした。新横浜駅の乗り場は9番で、バスは出発の数分前からバス停に待機していました。
新横浜駅からは7人の乗客を乗せて発車しました。途中のバス停からの乗車はありません。新横浜の高層ビル群を抜けると日産スタジアムがあり、車窓の進行左側には横浜線の小机駅が遠目に見えます。
さらに小机大橋で鶴見川を渡ると第三京浜の港北ICで、ここから高速道路を走ります。料金所の手前でシートベルト着用を促す放送があり、飛行機のシートベルト着脱の際に用いられるチャイムと同じ音を聴くことができました。
第三京浜では、他の車両よりも速度を落として運行されています。片側3車線のうち左側の車線を走り、他の自動車が次々と追い抜いていきます。
途中の都筑ICを通過し、南武線の線路と交差すると京浜川崎ICです。ここからは一般道に降ります。先ほど通過した南武線の線路脇に戻る形で交差点を転回、南武線脇の南武沿線道路を走ります。途中の停留所で2人が下車し、終点の溝の口駅まで下車した利用者は5人でした。
溝の口駅では東口(JR南武線の武蔵溝ノ口駅では北口)のバス乗り場にある1番のバス停に到着しました。折り返しの新横浜行きもここから発車します。終点溝の口駅までのクルマの流れはスムーズで、途中の信号待ちと途中のバス停の降車で停まった程度でした。
溝の口駅と新横浜駅の間は、鉄道だと複数のルートがあります。2023年には東急新横浜線が開業したことで、両駅の間を東急線だけで移動することが可能になりました。両駅間の移動では東急線経由が最安のルートで、運賃は360円(IC運賃では358円)と、バスよりも安くなっています。所要時間は乗り換えの時間を入れても35分程度でバスと大差がなく、運行本数も日中の新横浜発着で毎時8本程あります。
溝の口駅と新横浜駅の間は、東急大井町線・新横浜線経由でも最低1回の乗り換えが必要です。途中の自由が丘駅での乗り換えは階段の登り降りだけで、改札を出ることもなく、コンコースを長く歩く必要もありません。しかも、溝の口や新横浜は始発の列車があり、座れる機会が数多くあります。
着席でき、乗り換えがないことが有利なバスの新横溝の口線ですが、乗り換えの面倒を差し引いても、鉄道の便利さが圧倒してしまったのかもしれません。新横溝の口線の運行終了により、第三京浜を走る路線バスがなくなる見込みで、この路線で使用されていたバスの処遇も注目されるところです。
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