アドラー心理学に学ぶ子どものやる気の引き出し方 ―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる
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中学受験の勉強をきっかけに、親子関係を悪くさせないために。中学受験専門塾の代表がお話しします。
お子さんとの親子関係、良好ですか?
こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。
先日保護者セミナーで参加者の皆さんのお悩みをうかがったときのことです。
多くの方からあがってきたのが、子どものやる気の引き出し方に関する内容でした。
たとえば
「両親が勉強を教えようとしても、ため息や態度が悪く喧嘩も絶えず、両親ともに疲れて中学受験も諦めようかといつも考えてしまいます。自主的に勉強するようになるには何から始めればよいでしょうか。」とか。
「本人もやる気がなく、何を話しても反抗するだけでうまくいきません。」とか。
「中学受験が親からやらされている勉強になっているようです。親もサポートに疲れました。幼稚な子供に中学受験のレールをひいてしまった親も、子供の特性を見抜く力がなかったなと気分が落ち込み、サポートする気力もなくなってきました。子供のやる気を引き出すにはどうしたらいいでしょうか。」とか。
そして、これらの相談の中に書かれているように、勉強が原因で喧嘩が絶えなかったり、子どもが反抗的になったり、親子関係が悪化していってしまうことも多いです。
これって中学受験をされるご家庭で本当にありがちなお悩みです。
あなたのご家庭はどうですか?
お子さんのやる気は上手に引き出せていますか?
親子関係は良好ですか?
もしあなたも同じようなお悩みを抱えていらっしゃるようでしたら、今回の記事はきっとお役に立つと思います。
私は大学時代からもうかれこれ20年以上塾講師をやって来ましたが、関わったご家庭の中には、親子で中学受験という大きな困難に立ち向かい、それを乗り越え、その過程で絆を深めて行くことができたご家庭もありました。
その一方で、中学受験を通じて親子のケンカが絶えなくなり、子供が勉強嫌いどころか親への信頼を失くしてしまって、親子関係が崩壊してしまっていて受験どころじゃないみたいなケースもありました。
果たして、親子二人三脚で絆を深めながら中学受験を乗り越えたご家庭と、親子関係が崩壊してしまったご家庭は、何が違うのでしょうか?
さまざまな要因があると思いますが、今回はその中で最近私が特に大事だと思っていることについてお伝えしようと思います。
前記の保護者セミナーの導入でお話しした内容なのですが、マイナビ子育ての読者さんにもシェアしますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
中学受験で親子関係を悪化させず良好な関係を保つには?
さて、親子関係が良好なご家庭と、悪化しやすいご家庭の違いは何か?
それはアドラー心理学で言う「課題の分離」ができているかどうかです。
その課題は「自分が解決すべき課題」なのか、それとも「他者が解決すべき課題」なのか、そこをしっかり区別して、「他者が解決すべき課題」に関してはその他者にゆだねるということが大事になってきます。
そこの線引きがしっかり出来ていなくって、他者が解決すべき課題に対して土足で入って行くみたいなことをしてしまうと、その他者との関係性が悪化していきます。
これは何ごとにおいても言えることです。
「課題の分離」とは? 他者の課題に踏み込むとは?
他者の課題に踏み込むとはどういうことか?
たとえばこんなセリフを想像してみてください。
「孫はまだなの?子どもを産むのは嫁の仕事よ?」
「子どもは1人じゃかわいそう。2人目3人目を産まなきゃ。」
「子供がたくさんいるのが夫婦の幸せなのよ」
「結婚したら仕事は辞めるか控えるかして家を守らなきゃ。家庭を守るのが女の仕事なの」
「出来合いのお惣菜を買ってくるなんて…ちゃんと料理を作らなきゃ」
私のメルマガもYouTubeも見てくださる方は8割がた女性なので、きっとこの連載の読者も女性が多いんじゃないかと思うのですが、上記のようなセリフはだいたい皆さんイラッとするものばかりじゃないでしょうか。
他者の課題に対して踏み込んでいくというのはこんなイメージだと思っていただけると良いと思います。
こんなセリフは姑はもちろん実の親から言われたってうんざりするんじゃないでしょうか。
言われ続けたら確実に親子関係が悪くなっていきそうだと想像がつくと思います。
現代社会では両親共働きが普通ですから、2人とも仕事が忙しくて家の掃除や片付けができてなかったりすることもあると思います。
そんな時に姑が勝手に家にやってきて、
「あなたがちゃんとできないんだったら私がやる」
とか言い出して掃除・片付けを始めたらどう思いますか?
最悪!ですよね。
ありがとう!助かる!って喜ぶ方はそうそういらっしゃらないと思います。
「ちゃんとやってなかった自分が悪いんだ」と反省しますか?やる気が出ますか?
そんなことありませんよね。
自分の課題に対して他者が踏み込んでくることは、不快なだけでプラスの影響はないものだとイメージできたのではないかと思います。
そして、この「課題の分離」が重要なのは、子どもの受験勉強においても同じです。
勉強は親の課題ではなく子どもの課題である
勉強というのは子どもの課題です。
そこに親が勝手に踏み込んでいけば、不快に思われるのが当然です。
「いつになったら勉強するの」は「いつになったら孫の顔が見られるの?」と言われるようなものだと思ってください。
こっちにはこっちのタイミングがあるんだよ!と言いたくなりますよね。
「ちゃんと勉強して、良い中学校に入り良い大学に入るのが、お前の将来の幸せのためなんだ」みたいなセリフも、「子供がいるのが夫婦の幸せだ」とか「家を守るのが女のつとめだ」と言われてるようなものです。
こうした「勉強するのか子どもの仕事だ」とか、「良い成績を取ることがお前の幸せにつながるんだ」みたいな押し付けというのは、相手が我が子であったとしても、一人の人間として個人として尊重するのであればしてはいけないことなんですね。
ぜひ「課題の分離」をしていくようにしましょう。
「課題の分離」をするために必要なこと
じゃあどうすれば「課題の分離」ができるようになるかというと、私は「責任とコントロールが表裏一体なんだ」ということを理解するのが最初の一歩になると思います。
自分の価値観を押し付けて子どもをコントロールしたくなってしまうのは、子どもに対して悪い意味で責任を感じてしまっているからです。
子どものことに責任感を感じるのはとても尊い親心ではあるのですが、ただ間違った認識です。
人はコントロールできることだからこそ責任を負うことができます。
自分がコントロールできないことには責任は負わなくていい。
この線引きをしっかりすることが大切です。
たとえば遅刻をしたときに、「朝寝坊をしたから遅刻をしました」だったらそれは自分の責任です。
でも「事故で公共交通機関が大きく遅延をしたから」だったら自分の責任ではないですよね。
だってその原因を自分はコントロールできないわけですから。
ただ、もし交通機関の遅延がほんの5分で、もっと早めに出ておけば大丈夫だったということならば、責任ゼロとは言えないですよね。
自分でコントロールできた部分があるのですから、その範囲で責任が発生します。
責任とコントロールが表裏一体ということのイメージができたでしょうか。
「中学受験は親の受験」ではない!
そして、「他者の課題」は「自分はコントロールできない・してはいけない」ことです。
ですから、「自分はコントロールできない=責任は負わなくていい」と、自分の心の重荷を取り去りましょう。
中学受験界では、「中学受験は親の受験だ」といったことを言う人がいて、親に責任を負わせよう、プレッシャーを与えようという空気があります。
私の知る限りまともな教育者でそんなことを言っている人はいないのですが、世間の雰囲気やママ友同士の話の中でそんな空気ができていたりもします。
そのせいで、責任を負わなきゃ!となり、コントロールしなきゃ!ってなっていってしまいがちです。
その結果、子どものやる気を奪い、親子関係が悪化するというまずい状況につながっていきます。
責任とコントロールをセットで考えて、本当にそれは自分がコントロールできることなのか、コントロールして良いことなのか、よく考えてみましょう。
そして、コントロールと責任をあわせて手放して、楽になってください。
そうすれば、先ほどいくつか例に挙げたような、他者の課題に土足で踏み込んで、相手が嫌がられるっていう事はなくなります。
必要なのはコントロールではなくサポート
なお、コントロールしようとしない、他者の課題に踏み込んでいくようなことはしてはいけないとお伝えすると、放置した方がいいのかと誤解してしまうかもしれません。
そうした極端に逆方向に行くのもまた間違いです。
子供が勉強に関して助けて欲しいって言った時に、いつでも助けられるように準備をしておくことは必要です。
つまり、コントロールではなく、サポートをしてあげるということです。
「何をするか」より「相手が求めているか」
先ほどの例で、家が片付いてない時に親が勝手にやってきて掃除をしだしたら最悪ですよねって言いましたが、こんな状況だったらどうでしょうか?
子どもが産まれて幼い子どもの世話が大変で、片付けたと思ったらすぐに子どもが部屋を散らかして、一方では仕事も忙しくて時間的にも体力的にもどうにもならない。
そんな時に「本当に大変だから助けてほしい」と言ってサポートを求めたら、それに応えて親が助けてくれたとしたら。
先ほどとは真逆で、こんなありがたいことって無いと感じるのではないでしょうか。
「買い物に行く余裕がないから買い物してきてくれないか」とか、「睡眠もなかなか取れないから、ちょっと寝たいんで子供見ててくれないか」とか、頼んだ時にサポートしてくれたら
嬉しいものですよね。
この違いは何かといったら、「何をしているか」ではなく、「相手が求めているかどうか」です。
相手が求めていないのに「勝手に」掃除をしたら嫌がられる、相手が求めてきたことに応えて掃除をしたら喜ばれる。
押しつけかサポートかの違いは正にここです。
子どもの悩み・嫌な気持ちに寄り添う姿勢で
子どもの勉強に関しても同じです。
子どもは勉強に関して困ってることがたくさんあります。
困っているからこそ、勉強が嫌いになっているのです。
勉強って本来楽しいものです。
何か新しいことを学んだりできるようになったりするのって本能的に喜びを感じますよね。
なんでそれが嫌いになるかというと、わからないからとか、他の子と比べられて成績の上下がつけらるとかで、劣等感を感じてしまうことが原因になったりします。
あるいは、まだ子どもだからスケジュール管理がうまくできず、いつ宿題やったらいいのかわからない、そして宿題をやらなかったら親や先生に怒られて、宿題なんかなければいいんだという発想になってしまったりもします。
こうした時に子どもと対話を通じて子どもの悩み・嫌な気持ちに寄り添ってあげて、その解決を一緒に手伝ってあげようという姿勢で臨むことが大事なります。
子どもが「こういうことで困ってるから助けて欲しい」って言ったときに、それに応えてサポートしてあげたり、「こうするとうまくいくよ」とアドバイスをしてあげたりすると、子どもはその悩み事を解決していくことができます。
その結果、自信もつくし、達成感も感じ、やる気が上がっていきます。
そして、サポートに感謝をして、親子関係がより一層良くなっていくんですね。
子どもの反発を招くことなく勉強の悩みを解決する方法
ここまでの話をまとめます。
他者の課題に対してこちらから勝手に踏み込んでいくのは相手から反発を招く行為です。
しかし、その課題を本人が自分で解決できなくて、助けてほしいと求められた時に応じるのは、相手に喜ばれる行為になります。
ここをしっかり区別していきましょう。
そして子どもが助けを求めやすいようにするためには、相手の悩みに寄り添っていくことが大切です。
ぜひこうしたことを意識してみてください。
そうすれば、子どもの反発を招くことなく勉強に関する困りごとを解決していくことができるようになります。
結果として、子どもは勉強に対してのやる気を高めていくことができます。
さらに、中学受験を通して親子の信頼関係を深めていくことにも繋がります。
まずは「自分(親)の課題」と「他者(お子さん)の課題」を整理することから始めましょう。
それから、お子さんが求めているサポートは何かを本人に聞いてみましょう。
親子で話し合いながら、役割分担を試行錯誤してみてくださいね。
※中学受験ナビの連載『親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる』の記事を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています。元の記事はコチラ。
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