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「自衛隊コレ買わないか」イギリスから売り込まれた「謎の新型ミサイル」の正体 F-35を想定 空自の将来に“欠けた視点”を埋めるか

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  • 乗りものニュース
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次期戦闘機の開発が進むなか、イギリスから「あるミサイル」の購入が打診されたと報じられました。物理的な攻撃能力を持たないミサイルで、本国でもまだ実用化されていないもの。これが空自の将来に付きまとう課題の解決策になる可能性があります。

イギリスでも実用化されていないが「自衛隊どう?」

 共同通信は2024年11月24日、ヨーロッパのMBDAが日本に対して、同社が開発を進めている新兵器「スピアEW」の購入を打診していると報じました。日英伊の3国共同で次期戦闘機の開発に向けた動きが進められるなか売り込まれたのは、どのような兵器なのでしょうか。

Large 241202 spear 01航空自衛隊のF-35A戦闘機。「新型ミサイル」の搭載が可能(画像:航空自衛隊)。

 MBDAは2001年にフランスのアエロスパシエル・ミサイル(現エアバス)、イタリアのアレニア・マルコーニ・システム(現レオナルド)のミサイル部門、フランスとイギリスの合弁企業マトラBAeダイナミクスなどの合併により誕生したミサイルメーカーです。拠点はイギリスに置かれています。

 来日したイギリス空軍とドイツ空軍のユーロファイター(タイフーン)に搭載されていた短射程空対空ミサイル「ASRAAM」や、日本とイギリスが共同研究を行っていた長射程空対空ミサイル「JNAAM」(Joint New Air to Air Missile)のベースとなった長射程空対空ミサイル「ミーティア」なども、MBDAが開発と製造を行っています。

 スピアEWは、同社とレオナルドが開発したイギリス空軍の戦闘機向け対戦車ミサイル「スピア」をベースに開発された“電子戦兵器”です。

 スピアは胴体内部に、敵の戦車などを破壊するための炸薬を搭載していますが、スピアEWは炸薬の代わりに、レオナルドから提供されたデジタル無線周波数メモリー技術を活用して敵の防空レーダーを妨害する電子戦装置を搭載しています。

 敵の防空レーダーに多数の“存在しない戦闘機やミサイル”を感知させて、防空レーダーを用いた地対空ミサイルによる攻撃を難しくすることで、味方の戦闘機の生存性を高めます。同時に、味方の戦闘機から発射する巡航ミサイルなどの命中率を高める効果も期待されており、イギリス国防省は2019年9月にMBDAとの間で、試作実証契約を締結しています。

 MBDAがイギリス空軍でもまだ実用化されていないスピアEWの購入を日本に打診してきた理由は、2010年代後半から日本国内で自衛隊も「策源地攻撃」攻撃能力を持つべきではないかという議論が急浮上してきたことと関係しています。

 策源地とは敵の出撃や発進拠点などを示しており、日本の場合は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の弾道ミサイル発射基地などがこれにあたります。

北朝鮮対策の切り札に?

 弾道ミサイルなどによる攻撃を受ける前や受けた後に、策源地を日本側から攻撃して被害を最小限にするという発想は合理的なのですが、策源地攻撃の主力となるのは戦闘機です。その戦闘機を、策源地の周辺に置かれた敵の防空レーダーや、防空レーダーによって収集された情報を使用する地対空ミサイルによる攻撃から、どのようにして護るかという問題が付きまとっています。

 そこで誕生したのが防空レーダーと地対空ミサイルを無力化するSEAD(敵防空網制圧)という戦術で、策源地攻撃を行うのであれば、必ずといって良いほどSEAD能力も必要となります。

 日本でも策源地攻撃能力を持つのであれば、SEAD能力も持つ必要があるとの議論がなされており、一時期はアメリカ海軍とオーストラリア空軍が運用しているSEAD専用機EA-18G「グラウラー」や、アメリカ空軍などが運用している空中発射型電子妨害装置「MALD」の導入などが取りざたされていました。

 しかしEA-18Gの導入は、航空自衛隊の運用機の種類を増やすことは合理的ではないことなどから沙汰やみとなります。MALDは航空自衛隊のすべての戦闘機に搭載できるものの、策源地攻撃の主力となることが見込まれるF-35戦闘機のウェポンベイ(胴体内兵器倉)には収容できず、主翼下に搭載した場合、F-35の特長の一つである、敵のレーダーに探知されにくいステルス性能を損ねてしまうという問題を抱えていました。

 スピアEWはF-35への搭載を想定して開発されたスピアをベースとするため、F-35のウェポンベイに最大4発まで搭載できます。このため航空自衛隊の運用機の種類の増加や、F-35のステルス性能を損なう心配がありません。

Large 241202 spear 02スピアEWの原型となる巡航ミサイルのスピアを搭載したユーロファイター・タイフーン。スピアもF-35への搭載が想定されている(画像:イギリス空軍)。

 日本政府は2022年に策定した国家安全保障戦略に、自衛目的で他国領域のミサイル基地などを破壊する「反撃能力」の保有を明記しています。これは策源地攻撃を言い換えたものと見て良いでしょう。

 また防衛省は、C-2輸送機に電子戦装置を搭載して、遠方から敵のレーダーを妨害する「スタンド・オフ電子戦機」の開発を進めていますが、実際に策源地攻撃を行うのであれば、攻撃の主力となる戦闘機に随伴するSEAD機の導入か、戦闘機にSEAD能力を与えるための戦力整備も並行して進める必要があると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 防衛省がスピアEWの購入に踏み切るのかを予想するのは困難ですが、前に述べた理由でSEAD機の導入や戦闘機へのSEAD能力の付与を断念してきた防衛省・航空自衛隊にとって、スピアEWは一つの福音となるのかもしれません。

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