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フルーツで「糖尿病」リスク軽減、「骨粗鬆症」の抑制 果実で生活する研究家・中野瑞樹が“コツ”伝授

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フルーツを1日200グラム摂取するには…
フルーツを1日200グラム摂取するには…

 2023年5月に厚生労働省が公開した「厚生労働省 健康日本21(第三次)」で、「個人の行動と健康状態の改善に関する目標」の一つとして「果物摂取量の改善」が記され、果物の1日の推奨摂取量が200グラムと明記されました。つまり、健康な生活を送るためには、1日にフルーツを200グラムは食べた方がよい、ということになります。

 しかし、2019年に厚生労働省が公開した「国民健康・栄養報告2019」では、日本人のフルーツ類(加工品を含む。ただしジャムは除く)の平均摂取量が99グラムと目標量の半分という結果でした。今年2月に発表された公益財団法人中央果実協会 の「令和五年度 果物の消費に関するアンケート調査報告書」によると、8割以上の人が目標摂取量を下回っており、中でも30代、40代の女性では、1日平均200グラム以上食べている人は、1割にも到達していませんでした。特に40代女性は1日100グラムも食べていない人が7割強と、他の世代に比べても高いという傾向にありました。

 そこで、1日平均200グラム以上の果物を摂取するには、どのような果物をどれぐらい食べるのがいいのか、2009年9月から15年以上、実験的に水もお茶もとらず、“フルーツ中心にほぼ果実だけの食生活”を続けている、一般社団法人「毎日フルーツ200g推進協会」代表の中野瑞樹さんにコツを聞きました。

1日200グラムは意外とハードルが低い 重さで考えるのが重要

 ずばり、「果物を上手に1日200グラム摂取する方法」を質問したところ、中野さんは「200グラムの目安は、普通サイズのリンゴなら半分強、Mサイズの温州ミカンなら3個といった感じです」と回答。続けて、年中、スーパーに並んでいる果物の中で、通常サイズのものだと「キウイが1個およそ90グラム、バナナが皮をむいた状態で1本100グラム」と話し、品種にもよりますが、「桃や富有柿だと1個200グラムぐらいです。旬のフルーツは値段が安くなりますし、季節も感じることができるため、おすすめです」と語ります。栄養的にヨーグルトとも相性がよく、「冷凍や完熟フルーツを入れて食べてもらうのもお勧めです」。さらに、「“1食”や“1度に”で考えてしまうと大変だと思うのですが、“1日”で考えてくださるとハードルが下がると思います」と教えてくれました。

 フルーツを毎日、食べようと思うと値段を気にする人も多いと思います。しかし、中野さんは「フルーツを嗜好(しこう)品だと思ってしまうと高く感じてしまいます。ですが、厚生労働省も指摘している通り、毎日200グラム食べると、糖尿病や心臓病や脳卒中、高血圧や肥満といった生活習慣病などのリスクが減ります。世界でも“フルーツは健康のために、毎日、食べるべきもの”というのが常識です」と力説します。

 1日2キロほどのフルーツを食べるという中野さんは「目標量が200グラムなので、重さで考えてもらうと、よいです。それと、コスパですね。私は、可食部100グラム当たり100円以下(以下、税込み)ならお買い得という判断をしています。例えば、柿1個が108円で売られていたなら、1個200グラムとして、100グラムあたりのコスパは54円と、かなりお買い得です。ミカンは可食部が80パーセントなので、1袋750グラムで537円なら、100グラムあたりのコスパは90円なのでお買い得です。ミカン10キログラムの箱で、4298円だと、100グラムあたりのコスパは54円とさらにお買い得です。一方で、イチゴは1パック約250グラムなので、537円だと、100グラムあたりのコスパは215円とやや高級です」といいます。

 さらに、スーパーやフルーツ店で買うコツとして「フルーツは生鮮食品なので必ず値引きをしている時間帯があります。半額になっていることもあります。上手に工夫をして買うようにしてください」とも教えてくれました。

フルーツは「総合栄養食品」 糖尿病のリスク軽減、骨粗鬆症の抑制にも

 中野さんによると、健康的な人が毎日、フルーツを200グラム食べていると「糖尿病や心筋梗塞、脳卒中、肥満などのリスクを抑えることができます」と話します。「フルーツ=糖質と思っている人が多いと思うのですが、大半のフルーツは83パーセント以上が水分(バナナは75パーセント)で、タンパク質は少なく、脂質や塩分はほぼゼロです。チョコレートやケーキなどのお菓子は、デンプンやショ糖といった糖質が多く、一般的に脂質や塩分が多いです」と違いを説明してくれました。

 “糖質制限”という言葉をよく耳にしたりします。中野さんは「糖質制限と聞くと、甘いからという理由で、フルーツを真っ先に制限しようとされる方がいます。でも、そもそも生鮮フルーツは水分が大半なので、パンやご飯と比べても、糖質はとても少ないんです。例えば、糖質の割合は食パンが48パーセント、ご飯が35パーセントなのに対し、メジャーフルーツの中で最も多いバナナでも、19パーセントしかありません。イチゴはわずか6パーセントです」といい、「約8万人の日本人(35~69歳)をおよそ9年間、追跡調査した医学研究では、低糖質(糖質が総エネルギーの40パーセント未満)の男性は、死亡率が中糖質(50~55パーセント)の人と比べて、死亡リスクが59パーセント高いことが分かりました。確かに糖質制限食は、糖尿病などを患っている方が、専門医の指導のもとで行われることがあります。ただし、半年~1年以内の期間で行われる、緩やかなものです。健康な人が極端な糖質制限を長期間続ければ、逆に死亡リスクを高める恐れがあります」。「フルーツは現代日本人が不足しがちな、ビタミンやミネラルや食物繊維、さらに健康効果が期待されているポリフェノールやカロテノイドや有機酸などを多く含む、総合栄養食品です。国が勧めるように毎日200グラムは食べてもらいたいです」と力を込めていました。

 フルーツを食事の最後に食べている人も多いのではないでしょうか。中野さんによると、「フルーツは病気の時や、“モグモグタイム”のようにスポーツのインターバルでよく食べられます。なぜなら、フルーツは消化負担が少ないからです。またフルーツはお酒やお酢になるように、発酵しやすいという特徴もあります。そのため、空腹時に食べればすぐに消化されるのに、食事の最後に食べてしまうと、体温37℃前後の胃腸の中で、何時間もほかの食べ物と混ざり合い、発酵してしまう恐れがあります」と話しつつ、「また2021年に中国で行われた実験では、食事の前にフルーツをとると、食後の最高血糖値が大幅に低かったことがわかっています。フルーツに含まれる栄養素の吸収率アップなどが目的でないなら、おなかの中での発酵を抑えるためにも、食事の前に食べることをお勧めします」と、教えてくれました。

 例えば、毎食、食事前にミカンを1個ずつ食べるなどすると、1日200グラムくらいは摂取できます。「静岡県浜松市で行われた医学研究から、冬場にミカンを3~4個以上食べる人は、高脂血症などの脂質代謝異常のリスクが34パーセント、肝機能低下のリスクが49パーセント、2型糖尿病の発症リスクが57パーセント低いことが分かりました。また閉経後の女性については、骨粗鬆症のリスクが92パーセントも低いことも分かりました。これは、ミカンに多く含まれるベータクリプトキサンチンという栄養素の働きによると考えられています。骨粗鬆症に悩んでいる女性はぜひミカンを、冬場は毎食食事前に食べてもらいたいです」と話します。

 15年以上、自身の体で実験を続けている中野さんの元には、フルーツを食べてやせた、アトピーや乾燥肌が改善されたといった、さまざまなエピソードが寄せられており、「人によって、体感を得られやすいフルーツがパイナップルだったり、ミカンだったりと異なります。年中スーパーに並んでいるフルーツを食べながら、旬のフルーツをいろいろと食べてみると、意外な発見ができるかもしれません。フルーツの健康研究はまだまだ進んでおらず、いろいろな可能性を秘めています」と目を輝かせていました。

 “野菜は毎日食べるべき”と思っている人は多いと思います。フルーツを手に取ると、甘い香りがして、リフレッシュすることもでき、ストレスの軽減を感じることもあります。ぜひ、“フルーツも毎日食べるべきもの”と思って、1日の推奨摂取量200グラムを目指して生活していただきたいです。

◆引用参考
・健康日本21(第三次)推進のための説明資料 令和5年5月/厚生労働省
・WHO and FAO announce global initiative to promote consumption of fruit and vegetables(2003.11.11)
・糖尿病診療ガイドライン2024/日本糖尿病学会
・J Nutr. Volume 153, Issue 8, August 2023, Pages 2352-2368
・日本食品標準成分表2020/文部科学省
・食品成分表2022/女子栄養大学出版
・日本人の食事摂取基準2020年版/第一出版
・Nutrients. 2021 Jul; 13(7): 2470
・Br J Nutr. 2015 Nov 28;114(10):1674-82
・Br J Nutr. 2016 Feb 26:1-8.
・BMJ Open Diabetes Research & Care2015; 3:e000147.
・PLoS One.2012;7(12):e52643. βcpxと骨粗鬆症

オトナンサー編集部

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