「猫の肥満」は“ダラダラ食べ”が原因！？　ペット栄養管理士に聞く“ぽっちゃり体形”改善のコツ

　猫を飼っていて、以前よりも愛猫の体形がぽっちゃりしてきたと感じることはありませんか。人間と同様、猫も肥満が原因でさまざまな病気にかかりやすくなるといわれています。そこで、猫が肥満になる原因や、肥満を改善する方法などについて、ペット栄養管理士の岩井ゆかりさんに聞きました。

「置き餌」に注意

Q.そもそも、猫が肥満になるケースは多いのでしょうか。また、人間と同様、猫にも肥満かどうかを判断する際の基準はありますか。

岩井さん「米国のペット肥満予防協会（APOP）によると、約6割の猫が過体重または肥満の傾向にあるそうです。猫は一般的に、1歳時の体重がその猫の理想体重といわれているため、飼い主は1歳時の体重を参考に、太ってきたかどうかを判断すると良いでしょう。

猫の肥満を判定する際は、犬と同様に『ボディ・コンディション・スコア（BCS）』という指標が用いられます。これは見た目と触れた状態から体形、特に脂肪の付き具合を5段階で評価するものです。スコアの主な内容は次の通りです」

■猫のボディ・コンディション・スコア
【BCS1：痩せ】
肋骨や腰の骨に容易に触ることができる。腰に深いくびれがある。

【BCS2：やや痩せ】
肋骨や腰の骨に触れることができる。腰にくびれがある。

【BCS3：理想体重】
肋骨や腰の骨がわずかな脂肪に覆われているが、触ることができる。腰には適度なくびれがある。

【BCS4：やや肥満】
肋骨や腰の骨は脂肪に覆われ、触ることが難しい。腰のくびれはほとんどない。

【BCS5：肥満】
肋骨や腰の骨は厚い脂肪に覆われ、触ることが非常に難しい。腰のくびれはない。

ボディ・コンディション・スコアが4以上と判断された場合は、これ以上太らないように、食事量を減らすか低カロリーの食事に切り替えるなどの対策が必要です。

Q.猫が肥満になる原因について、教えてください。

岩井さん「人と同様、猫の場合も体内に脂肪がたまり過ぎると肥満になります。消費カロリーよりも摂取カロリーの方が多い場合、余ったエネルギーはまず肝臓や筋肉の中に『グリコーゲン』という形で貯蔵されます。それでもなお余ったエネルギーは『中性脂肪』となり、それが肥満という状態になります。飼い主は日頃から餌やおやつを与え過ぎないようにするとともに、適度に運動させることが重要です」

Q.猫の肥満を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。

岩井さん「まず、肥満は見た目の問題だと楽観的に考える飼い主が多いのですが、見た目以上に体に悪影響を与えることがあります。肥満は、体全体の免疫力を下げ、沈着した脂肪によって臓器が弱り、増えた体重が関節に負担をかけるなどの悪影響を及ぼします。

猫の肥満の原因の多くは、カロリーの過剰摂取が占めています。しかし中には、症例数は少ないものの、内分泌系の病気が原因で太ることもあります。また、猫のおなかが出てきたので肥満だと思っていたら、『実は病気によって腹水がたまっていた』『内臓が腫大していた』などといったケースもあります。

猫の肥満は、人と同じように糖尿病や呼吸器不全、関節炎などの病気につながります。肥満が直接的に病気の起因とならない場合でも、さまざまな病気を悪化させるリスクが高まります。

例えば、肥満の猫は自身で『毛づくろい』がしにくくなる体形になることで『皮膚病』を発症するリスクが高まるといわれています。このように、単純な肥満と、病気による肥満は実はつながっているということも飼い主は知っておいた方が良いでしょう」

Q.猫の肥満を改善するためにはどのような取り組みが有効なのでしょうか。例えば、食事量を減らすコツはありますか。

岩井さん「例えば犬の場合、飼い主は1食当たりのカロリーをしっかり計算して餌を出す必要があります。しかし、猫は犬と違い、『置き餌』という、少しずつ餌を食べる習慣があると思います。これは猫の習性の一つなので仕方のないことですが、餌を継ぎ足す行為を繰り返している間に、猫がダラダラと餌を食べ続けてしまい、結果として1日の摂取カロリーがオーバーしているケースがあります。

ですから、犬のように『1食当たりのカロリー』ではなく、『1日のトータルカロリー』というように、1日のトータル量を把握しておくのが良いでしょう。

また、健康な成猫は、主に上下運動を行います。キャットタワーや階段を使って、1日15～20分を目安に遊んであげると良い運動になります。

猫の健康は、飼い主である私たちが担っているといっても過言ではありません。食事量と運動量の調整や、おやつのあげ過ぎに注意し、さまざまな病気から猫を守ってあげたいですね」

オトナンサー編集部

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