東京五輪開幕で民放各局が二分　通常放送か？　特番シフトか？

　コロナ禍に加えて、開会式直前まで辞任騒動が続くなど、逆風続きの東京五輪がついにスタートしました。

　いまだ開催反対派も少なくない中、「はたして、どれくらいの人が競技中継を見るのか」と懸念されていたものの、開会式前にスタートした男女サッカーやソフトボールから日本人選手の活躍が続く柔道、競泳、卓球など、盛り上がりは上々の様子。「日本人の多くはコロナ禍においても、懸命に戦う日本代表選手たちを応援したくなる」ことが明らかになりつつあります。

　民放各局は持ち回りで競技中継することになっていますが、問題はそれ以外の日。「五輪の裏番組として、何を放送するのか」に頭を悩ませているのです。

　各局の番組表を見ると苦労のあとが見えますが、特徴的なのは「通常放送にこだわる局」と「特番にシフトする局」に二分されていること。ゴールデン・プライム帯の番組編成にどんな差があり、どんな理由が考えられるのでしょうか。

日テレとフジ、TBSとテレ朝に二分

　開会式から1週間のゴールデン・プライム帯で放送される番組を見ていきましょう。

　日本テレビの五輪中継は7月27日のみ。通常放送は「クイズ！あなたは小学5年生より賢いの？」「沸騰ワード10」「金曜ロードショー」「I LOVEみんなのどうぶつ園」「世界一受けたい授業」「1億3000万人のSHOWチャンネル」「ザ！鉄腕！DASH！！」「世界の果てまでイッテQ！」「行列のできる法律相談所」「おしゃれイズム」「ボクの殺意が恋をした」「人生が変わる1分間の深イイ話」「しゃべくり007」「今夜くらべてみました」「ハコヅメ」「秘密のケンミンSHOW極！」「ダウンタウンDX」の17番組で、特番は「有吉ゼミ」（2時間）、「有吉の壁」（2時間）、「ぐるぐるナインティナイン」（2時間）の3番組のみにとどめています。

　次にフジテレビの五輪中継は、24日、26日、28日。通常放送は「坂上どうぶつ王国」「人志松本の酒のツマミになる話」「ジャンクSPORTS」「今夜はナゾトレ」「潜在能力テスト」「彼女はキレイだった」「火曜は全力！華大さんと千鳥くん」「世界の何だコレ！？ミステリー」「突然ですが占ってもいいですか？」「VS魂」「奇跡体験！アンビリバボー」「千鳥のクセがスゴいネタSP」「推しの王子様」の13番組で、特番は「ウワサのお客さま」（2時間）、「超ド級！世界のありえない最強映像」（2時間）の2番組のみです。

　一方、TBSの五輪中継は28日のみ。通常放送は「世界ふしぎ発見！」「TOKYO MER」「日曜日の初耳学」「CDTVライブ！ライブ！」「教えてもらう前と後」「マツコの知らない世界」「プロミス・シンデレラ』の7番組で、特番は「ザ・ベストワン」（4時間）、「ジョブチューン」（2時間）、「坂上&指原のつぶれない店」（2時間）、「クイズ！THE違和感」（2時間）、「最前線！密着警察24時」（2時間）、「動物スクープ100連発」（2時間）、「映画 かぐや様は告らせたい」（2時間）の7番組。つまり、放送時間の長さは、特番がレギュラー番組の倍以上あることになります。

　テレビ朝日の五輪中継は24日、25日、26日、27日、29日で、この1週間では民放最多。通常放送の番組は何とゼロで、特番は「列島警察捜査網THE追跡」（3時間）、「くりぃむクイズ ミラクル9」（3時間）の2番組であり、しかも3時間の長時間です。

開催反対派の声とスポンサーの希望

　開幕から1週間以降も、五輪期間は、日本テレビとフジテレビが通常通りの放送を優先させ、TBSとテレビ朝日が特番中心で通常放送はごくわずか。前者が「五輪期間中でも普段の番組を楽しんでほしい」、後者が「お祭りムードにふさわしい特番で乗り切ろう」と考えている様子がうかがえます。

　さらに各局の思惑を掘り下げると、日本テレビは「ウチは通常通りの放送で十分勝負できる」という自信、フジテレビは「何とかレギュラー番組を定着させたい」という期待、TBSは「中途半端に通常放送しても分が悪い」というシビアさ、テレビ朝日は「ウチはもともと特番の多い編成をしている」という割り切りを感じさせます。

　ただ、今回はコロナ禍や辞任トラブルが続いたことで開催反対派が多いことから、ネット上には「五輪に影響されず通常放送してくれる方がいい」という声が目立つのも事実。さらに民放各局はコロナ禍の減収でダメージを受け、より、スポンサーが望む番組内容が求められているところもあり、これまで以上に編成と営業の調整が必要になるなど、難しい選択を迫られているようです。

　高視聴率ランキングは五輪中継が独占するでしょうが、その陰でレギュラー番組や特番がどんな結果を出すのか。そして五輪が終わったとき、日本テレビとフジテレビ、TBSとテレビ朝日の「どちらが適切な戦略だったのか」が分かるでしょう。

コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志

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