ますますJRとバチバチに!? つくばエクスプレスの延伸構想開業後の競合関係を考える

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乗りものニュース
2025年3月17日18時8分

茨城県より示された「つくばエクスプレス（TX）延伸構想事業計画素案」。案には、両端の終点からそれぞれ延伸する構想がありますが、仮に土浦～羽田空港間を結ぶ路線となると、全線にわたってJR線と競合関係になりそうです。

つくばエクスプレスvsJR常磐線

　2025年2月25日、茨城県より「つくばエクスプレス（TX）延伸構想事業計画素案」が公表されました。つくばエクスプレスは、秋葉原駅と研究学園都市であるつくば駅（茨城県つくば市）とを結ぶ路線ですが、延伸案では、つくば～土浦間のほか、東京～秋葉原間も合わせて検討されました。

Large figure1 gallery2 つくばエクスプレス線とJR常磐線（画像：写真AC）

　路線の性格上、つくばエクスプレスはJR東日本の常磐線とも並行していますが、仮につくばエクスプレスの延伸が実現した場合、どのような競合関係が予想されるでしょうか。

　そもそもつくばエクスプレスが建設されたのは、常磐線の混雑緩和を目指したことが理由のひとつでした。現状では秋葉原駅、南千住駅、北千住駅でJR線に接続している程度ですが、つくばエクスプレスが東京駅と土浦駅（茨城県土浦市）の双方に延伸された場合は、東京～土浦間の全線で常磐線と完全な競合関係になります。

　2025年3月のダイヤ改正後の時刻では、東京～土浦間の所要時間は常磐線の特急「ときわ」で約48分、普通列車（快速）で約74分です。一方、つくばエクスプレス（秋葉原～つくば）では快速で約45分です。

　前出の事業計画素案によると、秋葉原～東京間は約3分、つくば～土浦間は約9分で結ぶものとされ、東京～土浦間の所要時間は約57分と見込まれています。常磐線の普通列車（快速）と比べると、約17分の短縮効果が見込まれているのです。

　つくばエクスプレスの延伸構想のうち、東京方面への延伸は、国の交通政策審議会答申第198号にも記載があります。この答申は2016（平成28）年4月に公表されたもので、「常磐新線の延伸」と表現されています。建設が進められていた頃のつくばエクスプレスが、「常磐新線」と呼ばれた名残です。

羽田空港～土浦間でも競合？

　さらに、「都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備」というプロジェクトもあります。つくばエクスプレスの東京駅から東京臨海部までを結ぶもので、こちらは東京都の都心部・臨海地域地下鉄構想事業計画検討会による事業計画案として2022年11月に公表されています。

Large figure2 gallery3 つくばエクスプレスの、南側の延伸構想（画像：茨城県）

　都心部・臨海地域地下鉄構想では、東京から勝どきを経由して有明・東京ビッグサイトに至るルートを想定していますが、りんかい線と接続して羽田空港への接続も今後の検討課題とされています。また、りんかい線から羽田空港を結ぶ路線は、羽田空港アクセス線（仮称）の臨海部ルートとして計画されています。

　仮に、これらの路線がすべて開業すると、羽田空港からつくばエクスプレス経由で土浦まで結ばれるのです。

　一方のJR東日本は、2023年から羽田空港アクセス線（仮称）の東山手ルートの建設に着手しています。田町～羽田空港新駅（仮称）間を結ぶもので、2031年度の開業を目指していますが、開業すると東京～羽田空港間は約18分で結ばれる計画です。

　羽田空港アクセス線開業後の運行計画は明らかではありませんが、理論上は常磐線方面から羽田空港までの直通列車を運行することが可能です。2025年現在、常磐線方面から品川駅までの上野東京ラインが田町駅を経由していますが、この上野東京ラインが走行している線路に、羽田空港アクセス線の東山手ルートの線路が接続される計画があるためです。

　こうなれば東京～土浦間のみならず、羽田空港～土浦間でもつくばエクスプレスとJR常磐線が競合関係になりうるのです。

茨城空港ほか、複数検討された延伸構想

　ちなみに、羽田空港～土浦間の所要時間は、特急「ときわ」を延伸した場合で約66分、普通列車（快速）では約92分と想定できます。また、つくばエクスプレス経由での所要時間は明らかではありませんが、臨海部を経由すると遠回りになります。このため、東京～羽田空港間で臨海部を経由した所要時間は30分程度と想定され、羽田空港～土浦間では87分程度と予想できます。

Large figure3 gallery4 東京駅を発車する茨城空港行き高速バス（2020年1月、中島洋平撮影）

　つくばエクスプレスの延伸構想では、土浦方面への延伸と決定される前段階として、茨城県内4方面の延伸で評価の比較が行われました。茨城県による「つくばエクスプレス（TX）県内延伸調査の結果について」によれば、4方面の案として土浦のほか、茨城空港、水戸、筑波山がありました。

　このうちの茨城空港方面への延伸では、つくばエクスプレス経由で東京～茨城空港間を約80分で結ぶものと試算され、途中の高浜駅（茨城県石岡市）で常磐線と乗り換え可能とされていました。2025年現在、東京～茨城空港間では高速バスが運行され、所要時間は100分。仮に、つくばエクスプレスの茨城空港延伸が実現していれば、所要時間が20分程短縮されることになります。

　さらに、先の都心部・臨海地域地下鉄構想と組み合わせると、羽田空港～茨城空港間が1本の路線で結ばれることになり、茨城空港へのアクセスが劇的に改善される可能性がありました。しかし、茨城空港への延伸は「実現可能性が十分とは言えない」と判断されています。

　つくばエクスプレスの土浦、東京方面への延伸は構想の段階で、仮に実現するとしても建設までには相当な段階を踏む必要があります。今後、どのような形で延伸構想が具体化されるのか、筆者（柴田東吾：鉄道趣味ライター）は注目したいと思います。