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ドイツ生まれ130歳、元“九州の鉄道橋”がなぜ会津の山奥に!? 路面は「木製」もまだ現役 空前の“大転勤”の理由

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道路橋の正体は九州の鉄道橋

 福島県会津若松市と喜多方市の境を流れる日橋川に、弓なりの鉄骨が特徴的な「切立橋(きったてばし)」が架かっています。橋のたもとには「6.0t」という重量制限標識が立ち、路面に目をやると、アスファルトではなく木の板が敷き詰められています。一見、地方の古い橋といった佇まいですが、実はこの橋、130年以上も前に遠くドイツで生まれ、九州で働いた後、はるばる会津へやってきたという数奇な経歴の持ち主なのです。

Large figure1 gallery2近代化産業遺産にもなっている切立橋(志田 裕撮影)。

 切立橋は橋長約48m、幅は車1台がようやく通れるほどです。両側からせり上がった鋼材が頭上でつながる構造で、現在の道路橋としての姿からは想像しにくいですが、元々は列車を通すための「鉄道橋」でした。

 この橋が造られたのは1890(明治23)年、ドイツでのことです。日本へ輸入された後、最初の仕事場は九州でした。九州鉄道(現在のJR鹿児島本線)で、福岡県の矢部川を渡る橋として活躍しました。

 しかし、時代とともに鉄道で使われる機関車や列車は大型化していきます。それに伴い、明治期の初期に架けられた橋は次第に本線での役目を終えることになりました。この切立橋も、鉄道橋としては引退を迎えることに。それでも、橋そのものが使えなくなったわけではありませんでした。この橋を次に必要としたのが、九州から遠く離れた会津の地だったのです。

 なぜ、九州で役目を終えた橋が会津へ移されたのでしょうか。その背景には、猪苗代第四発電所の建設がありました。

九州と会津を繋いだ“縁” 今も現役の近代化産業遺産

 この発電所を造るためには、大量の建設資材を現場へ運ぶ必要がありました。そこで、国鉄磐越西線の広田駅から現場まで資材輸送用の専用軌道が敷設されることになり、その途中で日橋川を渡るための橋が必要になったのです。

 会津若松の公式観光案内によれば、九州から運ばれた橋が現在の場所に架けられたのは1921(大正10)年のこと。九州の本線では“お役御免”となった橋が、会津の地で発電所建設を支える重要な輸送路として、新たな任務を与えられたのでした。

 この大規模な「転勤」には、九州と会津の意外な人のつながりもありました。橋梁設計会社の東和設計によると、九州鉄道の社長を務めた仙谷貢は、その後、猪苗代水力電気の社長にも就任しています。この縁によって、切立橋の移設が実現したと説明されています。

 当時、古い鉄道橋を別の場所で再利用することは、決して特別な例ではありませんでした。土木史研究においても、明治期に輸入されたドイツ製鉄道橋の多くが、本線での使用を終えた後に別の路線や道路橋へ転用されたことが報告されています。切立橋もまた、九州で不要になった橋と、会津で新たに必要となった橋という需要が結びついた好例といえるでしょう。

 発電所の建設資材を運ぶという役目を終えた後も、切立橋は日橋川に架かり続けました。現在は、路面を木張りにした道路橋として地域の人々の生活を支えています。近代化産業遺産にもなっており、近づけばリベットで留められた鋼材の接合部などを間近に見ることもできます。

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