「食欲の秋」で体重増…放置すると“目”が悪くなる? 失明リスクと受診すべき危険な症状とは【眼科医解説】
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太ると目にも悪影響?(画像はイメージ)
10月10日は「目の愛護デー」です。10月10日の「1010」を横に倒すと眉と目に見えることから制定されました。
秋といえば「食欲の秋」。新米、サンマ、栗、サツマイモなど、おいしいものが増え、「少し体重が増えたかも」と気になる人もいるのではないでしょうか。
最近は「肥満症」という言葉を耳にする機会も増えましたが、いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんによると、「太った=肥満症」というわけではないといいます。
肥満症は、糖尿病や高血圧だけでなく、睡眠時無呼吸症候群、肝臓や腎臓、関節の病気など、全身の健康障害と関係します。そして、その影響は「目」にも及ぶといいます。肥満症と目の健康にはどのような関係があるのでしょうか。眼科医の岩見さんに聞きました。
肥満症の正しい概念とは?
Q.秋に2~3キロ太りましたが、これだけで「肥満症」に該当するのでしょうか。
岩見さん「いいえ。体重が少し増えただけで肥満症になるわけではありません。日本ではBMI25以上を『肥満』の目安としますが、『肥満』と『肥満症』は別の概念です。
肥満症とは、肥満に加えて、糖尿病や高血圧など肥満に関連する健康障害が生じている、あるいは内臓脂肪が蓄積して健康障害のリスクが高く、医学的に減量が必要と判断される状態です。
また、BMIも万能ではありません。筋肉量の多い人は脂肪が多くなくてもBMIが高くなることがありますし、反対にBMIが高くなくても内臓脂肪が多い人もいます。そのため、『秋に2キロ太った=肥満症』ではありません。大切なのは、体重の数字だけではなく、体に健康障害が起きているかどうかです」
Q.肥満症というと糖尿病のイメージがあります。他にも病気があるのでしょうか。
岩見さん「実はかなり幅広いです。肥満症に関連する健康障害には、糖尿病や高血圧、脂質異常症、高尿酸血症・痛風、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、肥満関連腎臓病、さらに変形性膝関節症や変形性股関節症などの運動器疾患も含まれます。
つまり肥満症は、血糖だけの問題ではありません。心臓や脳、肝臓、腎臓、睡眠、関節など、全身にまたがる病気なのです。
肥満症の治療目的も、『細くなること』ではありません。体重や内臓脂肪を適切に減らすことで、こうした健康障害を改善し、将来の病気を防ぐことが目的です。
また、肥満を『自己管理ができていない』『意志が弱い』と考えるのも適切ではありません。肥満には体質や睡眠、ホルモン、生活環境など、さまざまな要因が関係しています」
肥満症が「目」の障害や失明リスクにつながる理由
Q.では、なぜ肥満症が「目」に関係するのでしょうか。
岩見さん「肥満症に関係する健康障害を眼科医の立場から見ると、実は見慣れた病名が並んでいます。例えば糖尿病では、網膜の細い血管が障害されて『糖尿病網膜症』を起こすことがあります。初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると眼底出血や黄斑浮腫、硝子体出血などを起こし、注射やレーザー治療、手術が必要になることもあります。
高血圧も、目の細い血管に負担をかけます。眼底検査で血管の狭窄(きょうさく)や硬化、出血が見つかることがあり、『網膜静脈閉塞症』の危険因子にもなります。
眼底は、体の中の血管を直接観察できる非常に特殊な場所です。そのため眼科では、目を診ながら同時に、『この人の全身の血管では何が起きているのだろう』と考えることがあります」
「いびき」や「睡眠時無呼吸症候群」も目の病気に関係する?
Q.「いびき」や睡眠時無呼吸症候群も、目に関係するのですか。
岩見さん「はい。私が近年特に注目しているのが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。睡眠中に呼吸が繰り返し止まることで、血液中の酸素濃度が何度も低下します。高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などとの関係はよく知られていますが、眼科領域でも、緑内障や網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症などとの関連が報告されています。
実際の診療でも、私は眼底出血や網膜静脈閉塞症を診た際に、『大きないびきはありませんか?』『昼間に強い眠気はありませんか?』『寝ている間に呼吸が止まると言われませんか?』と尋ねることがあります。
そこから、まだ診断されていない睡眠時無呼吸症候群が疑われる人もいます。もちろん、眼科で睡眠時無呼吸症候群そのものを診断するわけではありません。しかし、目に現れた変化からその可能性を考え、睡眠医療の専門医につなぐことはできます」
すぐに眼科を受診すべき「3つの症状」
Q.結局、どのような状態の人が眼科を受診した方がよいのでしょうか。
岩見さん「『秋になって少し太ったから眼科へ』という話ではありません。特に眼底検査が重要なのは、まず糖尿病と診断されている人です。糖尿病網膜症は、症状がないまま進行することがあるため、定期的な眼底検査が必要です。
また、高血圧や脂質異常症がある人、睡眠時無呼吸症候群を指摘されている人、眼底出血や網膜静脈閉塞症を指摘されたことがある人も、自分の全身疾患と目が無関係ではないことを知っておいてほしいと思います。
そして『急に片目が見えにくくなった』『視野の一部が欠けたり、かすんだりする』『黒いものが急にたくさん見える』といった症状がある場合は、肥満症の有無にかかわらず、早めに眼科を受診してください。
一方で、食欲の秋を楽しんだからといって、必要以上に体重計の数字を怖がる必要はありません。大切なのは、『太っているか、痩せているか』ではなく、血圧や血糖、脂質、睡眠なども含めて、今の体が健康に保たれているかどうかです。
肥満症は、見た目の病気ではありません。全身の健康を守るために治療する病気です。そして、目もその『全身』の一部なのです」
オトナンサー編集部
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