大阪を沸かせたブルーインパルスの原型機が、2つの面で「取替え待ったなし」に危うい理由
- 乗りものニュース |

「ブルーインパルス」の機体の原型である航空自衛隊のT-4中等練習機が墜落事故を起こし、37年の運用で経年劣化による問題が顕在化。もはや教育の目的にも合わなくなってきているT-4、後継機の議論も待ったなしです。
“課題を抱えたまま”大阪を沸かせたブルーインパルス
2025年7月12日と13日の両日、関西地方のランドマーク上空の航過飛行と、大阪・関西万博の夢洲会場上空の展示飛行で話題を集めた「ブルーインパルス」(航空自衛隊第4航空団飛行群第11飛行隊)。本来であれば4月に飛行予定でしたが天候不順で中止となり、ようやく再飛行を果たしました。
大阪・関西万博会場の上空を飛んだブルーインパルス(航空自衛隊の動画より)
ただ、この時期までずれ込んだのは、5月に起きた墜落事故の影響も言われています。
ブルーインパルスが使用している航空機の原型であるT-4中等練習機は5月14日に愛知県で、乗員2名が殉職する墜落事故を起こしています。T-4には事故原因の特定を容易にする飛行記録装置が装備されていないこともあって、2025年7月26日現在、墜落事故の原因は特定されていません。なお、ブルーインパルスの使用機はT-4の戦技技術研究仕様機です。
防衛省・航空自衛隊は事故発生後、いったん全てのT-4の飛行を停止して緊急点検を行い、6月13日から順次飛行を再開しています。
墜落事故の原因が特定できていない状況でのT-4の飛行再開には賛否両論があると思いますが、パイロットの教育訓練を長期に渡って中断することは望ましいことではありませんし、ブルーインパルスの関西での飛行も、大阪・関西万博が国家的行事であることを鑑みれば、やむを得ないことなのではないかとも筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
中谷 元防衛大臣はT-4の墜落事故から2日後、5月16日に行われた記者会見で、T-4に飛行記録装置を追加することは改修作業の複雑さや可動機確保の観点から容易ではないが、その代わりとしてボイスレコーダー(音声記録装置)の搭載について予算措置を検討する考えを示しています。
飛行記録装置やボイスレコーダーの搭載は行うべきだと筆者は思いますが、それと並行してT-4の後継機の選定も早急に進めていくべきだと考えます。
老朽化が目立つT-4
T-4は2019年4月にも、搭載しているF3-30ターボファン・エンジンの「バッフル」と呼ばれる部品の機能不足が原因でエンジン内部を損傷する事故を起こしています。幸いこの事故で人的被害はなく、防衛省・航空自衛隊はバッフルを交換した機体から飛行を再開させました。しかし、原因究明までのあいだT-4は飛行停止を余儀なくされ、パイロットの教育訓練やブルーインパルスの活動などに支障が生じました。
航空自衛隊のT-4練習機(画像:航空自衛隊)
「バッフルの機能不足」の詳細は明らかにされていませんが、同様の事故は2019年まで発生していません。このため、F3-30エンジンの経年劣化に伴い、設計時には十分な機能を持つと考えられていたバッフルが適合しなくなったという見方もあります。
T-4は1988(昭和63)年に運用が開始されており、運用開始から今年で37年目となります。
防衛省はT-4を含めたすべての航空機の運用コストを発表していないため、T-4の維持運用コストがどの程度なのかは筆者にもわかりませんが、アメリカ空軍は運用開始から15年を経過したあたりから、運用している航空機の維持運用コストが毎年3%から7%ほど上昇しているとの統計を発表しており、おそらくT-4の運用コストも2000年代中盤頃から上昇曲線を描いているものと考えられます。
ただ、経年劣化に伴うトラブルの頻発や維持運用コスト以上に筆者が問題だと考えることもあります。もはやT-4が、今後の航空自衛隊のパイロット、とりわけ戦闘機パイロットの教育訓練に適合しなくなりつつある点です。
ただの「飛行士」はもう合わない?
月刊航空雑誌「JWings」(イカロス出版)の2022年11月号には、F-35Aを運用する航空自衛隊第301飛行隊長を務めておられた井田好彦2等空佐(当時)の談話が掲載されています。そこにおいて井田2佐は、「従来の機種(戦闘機)は、飛行機をサポートする形でコンピュータが付いていましたが、F-35はコンピュータに飛ぶ機能が付いているというイメージ」だと解説しました。
さらに「従来機の操縦者が“フライヤー”(飛行士)とするならば、F-35の操縦者は“システムオペレーター”と“フライヤー”と、ふたつの能力が必要になる」と指摘しています。
筆者がこれまでお話をうかがった、T-4で教育訓練を受けた航空自衛隊パイロットの多くは「T-4は操縦性や安定性などの飛行特性に優れた航空機」だと述べています。この感想は事実だと筆者は思いますし井田2佐が仰るところの“フライヤー”の教育訓練は今でも十分可能でしょう。
しかし、T-4は火器管制用レーダーや、他の航空機・地上のシミュレーターなどのデータをやり取りするデータリンク機能などを持ちません。アナログ計器が並んだT-4では“システムオペレーター”の教育訓練はできないと筆者は思います。
航空自衛隊には今後、イギリス、イタリアと「GCAP」計画で共同開発を進めている新戦闘機など、F-35と同等、またはそれ以上に”システムオペレーター”としての能力が求められるであろう航空機が増加していきます。
現在の航空自衛隊のパイロット、またこれからパイロットを志す人の持つ能力をフルに引き出していくためには、“システムオペレーター”としての教育訓練も行えるT-4後継機の早急な導入が必要だと筆者は思います。
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