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「死んだふりは効果的?」クマ、イノシシ、シカ……野生動物と遭遇したらどうすればいいの?専門家に聞いてみた

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  • マイナビウーマン
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ハイキングにぴったりのシーズンがやってきました!子どもを連れてのアウトドアの計画を考えるとき、昨今増えている、クマの目撃例やトラブルなどのニュースが気になりますね。実際に野生動物に出くわしたらどうすればいいのでしょうか?野生動物への対処方法に詳しい、株式会社うぃるこ代表取締役の山本麻希さんに聞きました。

クマが増えたのはなぜ?

――クマの目撃やケガをさせられた話をよくニュースで見かけます。実際にクマの頭数は増えているんでしょうか?

山本麻希さん(以下、山本) 最近の傾向を見ていると、クマの出没数は増えてきている印象です。ただ、クマの頭数調査は都道府県が行っていて、環境省が東北全域と新潟県北部の調査を始めたところなので、全国的なデータはまだありません。

――クマの多い地域や少ない地域、クマのいない地域ってあるんですか?

山本 クマの生息数は東日本の方に多く、特に北陸や東北はクマの生息が過密になってきました。なお本州にいるのはツキノワグマ、北海道にいるのはヒグマです。その一方で、西日本には少ない傾向があります。

――ツキノワグマとヒグマってどう違うんでしょうか?

山本 ツキノワグマは、ヒグマに比べて体が小さめです。また、ツキノワグマもヒグマもおもに植物食中心の雑食性ですが、ツキノワグマの方がより植物食傾向が強く、ヒグマの方がやや肉食傾向が強めです。
最近、北海道ではエゾシカが増え過ぎていて、自然環境のバランスを守るために毎年14万頭以上をハンターさんが撃っています。その狙撃後に残された肉をヒグマが食べて、ますます肉食に慣れた個体が増えている可能性があります。
クマにより家畜の牛や犬が襲われて食べられることが相次ぎ、人が襲われることも起こっています。

――そもそも、クマが山から出てくるようになった原因はなんでしょうか?

山本 クマが山から下りてくるようになったことには、複合的な理由があります。そのひとつとして、里山の手入れがされなくなったことがあげられます。
里山は、人間が木の手入れをして、木材やキノコなどの食材を採る生活の場でした。ところがだんだん里山に人が出入りしなくなり、茂みが増えました。
その結果、クマが里山にも生息するようになり、里山のそばの人里にも来るようになりました。

――里山の状態が、クマの生息場所に影響しているんですね。

山本 そうですね。それに、山や里山のドングリの実りも影響しています。
たとえば、新潟県のツキノワグマは、山の奥のブナに実るドングリを食べ、それがなくなったら里山のナラの木のドングリを食べていました。ところが、平成14年以降、木の病気でナラがたくさん枯れました。さらに4年後の平成18年、ブナが大凶作になりました。
それで、ブナもナラも食べられなくなったクマが食べ物を探して人里に出てくるようになったのです。

シカも全国で増加中!実は昔絶滅した地域も

標高2000メートル近い山梨県の大菩薩嶺付近にいたシカ(撮影:ライター大崎)。

――シカも増えていると聞きます。地域によって頭数は違うんですか?

山本 ニホンジカはクマとは逆に、どちらかといえば北陸や日本海側には少なく、西日本や四国、九州に多い傾向があります。また、北海道にはエゾシカが増えています。環境省のデータによると、本州には約230万頭、北海道には約70万頭のシカがいると言われています(2026年4月)。

――シカがここまで増えたのはなぜですか?

山本 戦後に拡大造林政策で、山にたくさんスギの稚樹(数センチの小さな木)を植えられると、それをシカが食べて個体数が増えました。その後、稚樹が成長し、スギ林内の餌がなくなったことで、多くのシカは餓死しました。しかし、生き残ったシカは杉林よりさらに標高の高い天然林にある餌を目指して、分布を拡大させたといわれています。
本来のシカは平地に暮らす動物ですが、今では中央アルプスや南アルプスなどの標高2000メートル以上のところにも生息しています。

どんな野生動物が危険?身を守る方法は?

茨城県の筑波山の登山道にいたイノシシ。人気のハイキングコースでも野生動物に出くわすことがあります(撮影:ライター大崎)。

――危険な野生動物というとクマが最初にあがりますね。

山本 クマは2025年に大量に出没しました。目撃数はもちろん、人身被害や死亡数も過去最多となっています。特に東北での被害が多かったですね。

――その他にも危険な動物はありますか?

山本 逃げ場を失ったりパニック状態になったイノシシはめちゃくちゃ危険です。
イノシシは人を見ても逃げることが多いんですが、市街地や建物に迷い込むと人に突っ込んできます。その牙が人の太ももの内側にある太い血管に刺さると、失血死することがあるんです。

――クマやイノシシに出くわした時にはどうしたらいいんですか?

山本 クマまで10~20メートルくらい離れていて、こちらにまだ襲い掛かってこない場合は、クマを見ながらゆっくり後ずさって遠ざかりましょう。背中を見せて走ると追いかけてくるのでやめましょう。
イノシシの場合は、1メートル以上高いものがあればそこに登りましょう。イノシシから見えない木の陰に隠れるのもいいですね。透明じゃない傘があれば、広げて後ろに隠れるのもありです。

――クマやイノシシが襲いかかってきたら、どうすればいいですか?

山本 クマやイノシシに襲われたら防御姿勢を取ってください。
クマの場合は体を転がされないように、足を開いてうつぶせになり、後頭部に手を回してカバーします。リュックがあれば、そのまま背負って背中を守りましょう。
イノシシの場合は、膝を丸めて体全体を丸めます。足の血管を守るために足は閉じましょう。両手を後頭部で組んでカバーするのは、クマと同じです。リュックも背負うといいですね。

クマとイノシシに会った時の防御姿勢。クマの場合は足を開いて平たく、イノシシの場合は足を閉じ体を丸めてうつぶせになります。両手は後頭部で組んでガードを。

――最近、クマよけの商品としてクマスプレーも売っていますが、効果はどうですか?

山本 クマスプレーは適切に使えれば効果的ですが、クマが5メートルくらいまで近づいてからクマの鼻や眼に噴きつける必要があります。すぐに取り出せるように腰などに専用ホルダーで装着しましょう。
アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)の認可を受けたクマスプレーならカプサイシン濃度が高く、ガス圧もあってしっかりスプレーできます。
ただし、クマの事故では後ろから襲われることも多く、スプレーをするタイミングは難しいです。後ろから襲われるケースでは、気付いたときにはすでにクマにやられていることが多いため、山に入るときはヘルメットの着用をすすめています。

――最近は、クマよけの鈴や笛、ブザーもよく売られていますね。

山本 あれはクマに人間の存在を気づかせるためのものなんです。たいていのクマは、人に気づいたら遠ざかっていきます。
ただ、渓流のそばや雨降りの時など、匂いがわかりにくく音もかき消される時もあるので、野山では、ホイッスルや爆竹のように、大きな音が出るものを鳴らすことを勧めています。

――イノシシやクマの子どもに出くわしたとしても、危険なんでしょうか?つい、かわいい!ってかまいたくなりますが。

山本 どんな動物も子がいたら親がいると思って、ちょっかいをかけないようにした方がいいですね。
その他、意外に危ないのがイノシシやシカなどの死骸のそばです。クマは死骸を何回かに分けて食べる習性があります。死骸をいじると、その死骸を自分のエサだと思っているクマに襲われることがあります。

――シカにケガさせられることはないんですか?

山本 クマほど多くはありませんが、オスのシカの角に刺される事故は起きています。
9~11月の発情・繁殖期には、オスのシカ同士が角を使って戦います。何かのタイミングで人も敵と認定すると、角に刺されてケガをすることになります。
カモシカが角で人の腹を刺す事件もありました。イノシシやシカ、カモシカなどの大型動物には注意して、刺激しないように距離を取ってください。

――そもそも、どうやって動物の出没状況は調べたらいいんでしょうか?

山本 最近のデータは、各都道府県のクマ出没マップや、各都道府県のホームページの野生動物の出没情報を見るといいと思います。
野山に行くならそのエリアのビジターセンターのホームページに載っていることもあります。

うっかり触ると病気の原因となる生き物も!

――直接ケガをさせられなくても、注意した方がいい生き物はいますか?

山本 アライグマやハクビシンは町中にもいて、屋根裏に棲みつくこともあり、マダニを落とすので注意が必要です。
近年、マダニに刺された人が日本紅斑熱やSFTS(重症熱性血小板減少症候群)という病気に感染するケースが増えています。どちらも命に関わることがある深刻な病気です。
コウモリも町中にいますが、色々な病原菌を持っていると言われています。
どの生き物も、基本的に触らないようにしましょう。

――病原菌を媒介されるのも危険ですね。

山本 渡り鳥も高病原性鳥インフルエンザを媒介するので、落ちている羽や死骸を見つけても基本的に触らないのが鉄則です。野鳥とその羽はいじらないようにしましょう。

――最後に、野生動物のことでメッセージをお願いします。

山本 日本の国土の66%は森林です。私たちはその森林を切り過ぎてから、急にスギをたくさん植えました。そして最近は森林の手入れをしていません。
こんな風に人間が森に手を加えたり放置したりした影響で、森の動物たちが人里に出てきました。
この先、人間と動物が共存できるように、色んな方に山や森林について知っていってほしいですね。

(取材・文 大崎典子)

プロフィール

山本麻希(取材)
行政や自治体と協力し獣害対策の支援を行う株式会社うぃるこ代表取締役。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了、総合研究大学院大学大学院数物科学研究科博士課程修了。博士(理学)。長岡科学技術大学准教授を経て現職に。専門は野生生物管理、獣害対策。

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