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戦闘ヘリは本当にもう不要なのか 陸自「アパッチ」廃止でドローン一辺倒に? その危うさ

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  • 乗りものニュース
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2022年12月に出た新たな「防衛力整備計画」でAH-1対戦車ヘリとAH-64D戦闘ヘリの用途廃止が明記されました。その代替はドローンとのことですが、安易にAH-64Dの運用ノウハウはなくすべきではないと筆者が警鐘を鳴らします。

AH-1Sの退役は止む無し、でもAH-64Dは残すべき

 2022年12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」から成る安全保障関連3文書、通称「安保3文書」が発表されました。このうちのひとつ「防衛力整備計画」では、陸上自衛隊が陳腐化したOH-1観測ヘリコプターとともに対戦車・戦闘ヘリコプターを用途廃止し、代わりにこれらの役割にドローンを充てるということが記載されています。

 陸上自衛隊が保有する対戦車ヘリコプターとはAH-1S「コブラ」のことで、戦闘ヘリコプターとはAH-64D「アパッチ・ロングボウ」のことを指します。しかし、このような防衛省の発表を目にしたとき、旧式化した前者の用途廃止はまだしも、後者までなくしてしまってよいのかという疑問を、筆者(白石 光:戦史研究家)は抱きました。

Large 230130 ah64d 01海上自衛隊のひゅうが型護衛艦に展開した陸上自衛隊のAH-64D戦闘ヘリコプター(画像:陸上自衛隊)。

 というのも、軍備というのは「たったひとりの達人」を養成するのではなく、質の高いノウハウを擁する「集団」を作り上げ、維持することが重要であり、しかもそれを継承することこそ肝要だと考えるからです。ただ、そのノウハウは一度失われてしまうと、再構築する場合には相応に時間をかけなければなりません。筆者はまず、このことを懸念しました。さらにもうひとつが、昨今の南西諸島をめぐる問題です。そこで、これについて筆者なりの考えを示してみようと思います。

 そもそも、日本がこれからも海外派兵などは行わず専守防衛の立場を貫き通すなら、陸上自衛隊の攻撃ヘリが戦闘に参加するのは、「敵が日本の国土に上陸してから」となります。そして、上陸を狙った大規模な敵兵力が領空と領海を侵犯して日本本土に向ってくるならば、当然ながら日本は自衛隊を使って国民の生命と財産を守るべく戦うことでしょう。

40年ほど前には「シー・アパッチ」なる提案も

 とはいえ、空・海の自衛隊の防衛線を突き破って敵が日本本土に上陸したという事態は、自衛隊がかなり“押されている” 状況といえます。そのような「強大な敵」は、当然ながら上陸した地上部隊に各種の対空兵器を配備し、戦闘機による上陸地点周辺の制空権確保も行うでしょうから、低空を低速で飛行する攻撃ヘリには、きわめて危険な環境といえます。

 このような状況は、ウクライナ紛争での戦訓に酷似しています。ロシア軍は、ウクライナ軍が装備する各種の対空兵器による攻撃、特に西側から供与された高性能な携行式地対空ミサイルによって、多数の攻撃ヘリを失っています。

Large 230130 ah64d 02イギリス海軍のイラストリアス級軽空母(当時)で運用される同国陸軍のWAH-64D攻撃ヘリコプター(画像:イギリス国防省)。

 他方でアメリカは、対空兵器が貧弱なテロリストとの戦いでは、AH-64D「アパッチ・ロングボウ(以下ロングボウ)」の精密な射撃能力を活用して、対人戦闘で大きな戦果を得た経験から、攻撃ヘリが戦闘条件によってはやられやすいという現実も理解したうえで、性能向上型のAH-64E「アパッチ・ガーディアン(以下ガーディアン)」を開発・配備しています。

 このタイプは当初、AH-64DブロックIIIとして開発が進められていたもので、その後採用に伴い改名されたものです。そのため、一見すると「ロングボウ」と大きな違いはありません。しかし「ガ―ディアン」は防御力が1割ほど強化されており、エンジンも、より高出力で耐久性が向上したものに換装されています。

 加えて無人機制御能力も付与されていることから、ドローン(UAV)をコントロールしてそれと連携した戦いを行うことも可能になります。つまり、ドローンを「手下」または「僚機」として使えるわけで、しかもドローンで取得した情報は、別のドローンや「ガーディアン」、地上部隊などとも共有できます。

 特に日本にとって有効なのは、AH-64E「ガーディアン」は海上運用の適合性が高められており、加えてロングボウ・レーダーに海洋目標対応能力の追加と探知距離の延伸が施されるだけでなく、リンク16 戦術データ・リンクへの接続も可能とされる点です。1984年頃、開発メーカーのマクドネル・ダグラス社が海軍向けとして「シー・アパッチ」なる派生型を提案したことがありましたが、その「スーパー発展型」といえなくもありません。

「アパッチ」を洋上の打撃手段として活用

 当のアメリカは、新規生産のAH-64E「ガーディアン」だけでなく、既存のAH-64D「ロングボウ」も「ガーディアン」へとアップグレードする計画です。そのため現在、陸上自衛隊が保有する「ロングボウ」もこの改修計画でアップグレードを施し、“ガーディアン化” することは可能だといえるでしょう。そして、改修後の機体は海上自衛隊との統合運用に充て、洋上での打撃手段として用いるのです。

Large 230130 ah64d 03アメリカ海軍の強襲揚陸艦「ペリリュー」に着艦するアメリカ陸軍のAH-64E「ガーディアン」(アメリカ陸軍)。

 前出したように、アメリカは対テロ戦争において、ロングボウの精密射撃能力を高く評価しています。ひるがえって現在、日本の南西諸島方面を見てみると、中国は「真正面からの武力侵攻」ではなく、「漁船団を送り込んで実行支配権を得る」という手法を用いる可能性が高いといわれています。

 多数の小さな漁船で編成された船団との交戦に際して、1隻ごとに「ハープーン」対艦ミサイルを1発ずつ撃ち込むのは威力もコストも過剰です。しかしAH-64「アパッチ」系が装備する30mm機関砲は、優れた命中精度と状況によっては戦車も撃破可能な高威力、それでいて1発あたりの単価は安いというメリットを有しています。それに加えてAH-64E「ガーディアン」が運用可能な「ヘルファイア」ミサイルの対艦仕様も「ハープーン」ミサイルより廉価であり、AH-64系への搭載数も最大16発なので、多勢で進んでくる漁船団へ対処するには好適なのではないでしょうか。

 このように、陸上自衛隊のAH-64D「ロングボウ」を、従来の対戦車中心の地上戦任務から、洋上の監視と制圧の任務へとシフトさせるのです。

 もちろん、洋上でも携行式対空ミサイルや艦対空ミサイル、各種対空火器、さらには戦闘機などの脅威に晒されるのは、敵が上陸した後の日本本土の上空と類似するでしょう。しかし陸地とは異なり、携行式対空ミサイルや各種対空火器はすべて艦艇上から発射されるので、陸地上空の飛行時に比べて、思わぬ方位からの不意打ちは受けにくくなると思われます。

AH-64戦闘ヘリとドローンの組み合わせは?

 加えて、たとえば海上自衛隊が艦載ヘリコプターとして多用するSH-60「シーホーク」系の機体に武装を施すよりも、最初から攻撃ヘリとして設計・開発されているAH-64「アパッチ」系のほうが、洋上の制圧能力、万一に備えた防御力などがはるかに高いのは当然です。

 さらに最も重要なのは、搭乗員と整備部隊です。すでに訓練を受けた熟練の「アパッチ」乗りと整備士たちがいるので、彼らのノウハウを無駄にせずとも陸上自衛隊と海上自衛隊が統合運用すれば伝承は可能です。

Large 230130 ah64d 04イギリス海軍の揚陸ヘリコプター母艦「オーシャン」(当時)のそばを飛ぶ同国陸軍のWAH-64D「アパッチ・ロングボウ」(画像:イギリス国防省)。

 ほかにも、海・空の自衛隊にはない「ヘリコプター野整備隊」という野外整備に秀でた専門部隊が陸上自衛隊にはあります。この部隊の整備能力はきわめて高いといわれていますが、こちらも統合部隊に組み込み、必要に応じて海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦に随時、派遣するようにすると部隊運用の柔軟性は出るのではないでしょうか。

 2023年現在、陸上自衛隊はAH-64D「ロングボウ」を12機保有しています。これに加えて、新規でAH-64E「ガーディアン」を12機程度アメリカから輸入調達するとともに、既存のAH-64D「ロングボウ」を“ガーディアン化” します。そしてこれら24機を自衛隊の統合ヘリコプター部隊で一括運用すればどうでしょうか。

 これが「戦闘ヘリの運用ノウハウ」をわが国に残す最も実効性のある案であり、またこのような配備ならば、地上と洋上の両方の戦いに対応することが可能です。

 目指すべきはイギリスのようなAH-64「アパッチ」の洋上運用です(イギリスでは小改良しライセンス生産しているのでWAH-64)。ドローンのほうが将来性はありますが、まだ万能とはいえないでしょう。有人機(AH-64)と無人機(ドローン)の両方を併用でき、かつ連携もとれる「ガーディアン」を運用することでノウハウを残しつつ将来戦にも備える、それが現時点ではベターだと筆者(白石 光:戦史研究家)は考えます。

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